ストーカー規制法で受けた警告や禁止命令を取り下げ・撤回させたい!

2024年10月31日
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ストーカー規制法で受けた警告や禁止命令を取り下げ・撤回させたい!

堺市を管轄する大阪府警察が公表する「令和5年大阪府警察重点目標推進結果報告書」によると、令和5年中に大阪府警が受けたストーカー事案相談受理件数は1113件あったとのことです。

ストーカーの被害者が警察に相談・希望すると、警察からの警告が発出される可能性があります。なお、法改正がなされストーカー規制法の対象となる行為が広がっております。警告にはどのような強制力があり、もし警告を受けてしまったら、どのような不利益を被るのでしょうか?

本コラムでは、ストーカー加害者として警告や禁止命令を受けたケースについて、取り消しや撤回はできるのか、納得できない場合はどう対応すべきかについて、ベリーベスト法律事務所 堺オフィスの弁護士が解説します。


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1、ストーカー規制法に違反する行為とは

ストーカー規制法は、正しくは「ストーカー行為等の規制等に関する法律」といいます。法律の名称のとおり、ストーカー規制法は「ストーカー犯を規制し、被害者を保護するための法律」ですが、規制を受ける行為の内容はややわかりにくい点があり、正しい理解が必要です。

ストーカー規制法に違反する行為を確認していきましょう。

  1. (1)「つきまとい等」を繰り返すと「ストーカー行為」として処罰される

    ストーカー規制法では、第2条1項において「つきまとい等」を規定しています。

    特定人物に対する恋愛感情や好意の感情、またはそれが満たされなかったことに対する恨み(怨恨)の感情を充足する目的で、本人・配偶者・直系もしくは同居の親族・社会生活において密接な関係にある人につきまとったり、行動を監視しているようなことを告げたりすると、つきまとい等になります。

    つきまとい等として掲げられている行為の形態は8つで、一般的に「ストーカーだ」とされるのはつきまとい等にあたるものです。

    ストーカー規制法第2条4項に定められている「ストーカー行為」とは、同一人物に対してつきまとい等にあたる行為を反復することと定義されています。

    つまり、単につきまとい等があっただけでは処罰されませんが、つきまとい等を繰り返してストーカー行為に該当すれば厳しく処罰されます

  2. (2)「禁止命令」に違反すると処罰される

    ストーカーの被害者が警察に相談すると、警察は被害者の意向に従って次の3つのうちいずれかの対応を取ります。

    • 被害を自ら防止するための措置の教示などの必要な援助
    • 警察からの警告の発出
    • 公安委員会からの禁止命令の発出


    ストーカー規制法では、公安委員会からの禁止命令に違反した場合に処罰が下されることが規定されています。禁止命令を受けると、命令の理由になっているつきまとい等の行為を特定したうえで、同じ行為を繰り返さないように命令されます。

    (参考:ストーカーとはどこから? つきまといなどの定義から逮捕までの流れ

2、警告により禁止される具体的行為と罰則

ストーカー被害者の申し出に基づいて警察からの警告が発出されるのは、加害者の行為が「つきまとい等」、または「位置情報無承諾取得等」の行為にあたり、被害者の住居等の平穏が害され、または行動の自由が著しく害される不安を覚えさせる等の行為をして、かつ同じ行為を繰り返すおそれが認められる場合です。つきまとい等にあたる具体的な行為と罰則を確認しておきましょう。

  1. (1)つきまとい等にあたる8つの行為

    つきまとい等にあたる行為は、ストーカー規制法第2条1項に掲げられている8つです。

    • つきまとい・待ち伏せ・進路に立ちふさがる・住居、勤務先、学校等その他通常所在する場所の付近で見張る・押し掛ける・うろつく行為
      法改正によって、たとえば、被害者が実際に所在する店舗等に押し掛けたり、付近で見張ったりする行為が追加されています。

    • 行動を監視していると思わせるような事項を告げる行為
      具体例として、帰宅直後に「おかえりなさい。」等と電話をする行為が挙げられます。

    • 面会・交際・その他義務のないことを行うよう要求する行為
      具体例として、男女交際等を解消したあとに復縁をせまる行為が挙げられます。

    • 著しく粗野または乱暴な言動をする行為
      たとえば、大声で「バカヤロー」等の乱暴な言葉を浴びせる行為が挙げられます。

    • 無言電話・拒絶後の連続した電話、ファクスや電子メールを送信する行為
      最近の法改正によって、手紙を何度も投函する行為も追加されました。

    • 汚物や動物の死骸など不快や嫌悪の情を催させる物を送付する行為

    • 名誉を害する事項を告げる行為
      たとえば、被害者の名誉を傷つけるような内容をSNSに投稿し被害者に伝える行為が挙げられます。

    • 性的しゅう恥心を害する事項を告げる行為
      たとえば、わいせつな写真を送りつけたり、LINEなどで送信したりSNSに投稿したりして被害者に伝えようとする行為が挙げられます。
  2. (2)位置情報無承諾取得等の行為

    位置情報無承諾取得等の行為とは、ストーカー規制法2条3項に規定されています。

    この規定は、法改正により加わりました。科学技術の発展により、身近にGPS機器を利用することができることから、この機器を、たとえば、ひそかに被害者の使用する自動車等に取り付け、被害者の位置情報を取得するストーカー事案が発生しており、これに対応するために法改正がなされたのです

    対象となる行為は、次の2つです。

    • 被害者の承諾を得ないで、GPS機器等により位置情報を取得する行為
      たとえば、被害者のスマートフォンに無断でインストールした位置情報アプリを利用して、そのスマートフォンの位置情報を取得する行為が挙げられます。

    • 被害者の承諾を得ないで、被害者の所持する物にGPS機器等を取り付ける等の行為
      たとえば、被害者にGPS機器をひそかに取り付けた物をプレゼントする行為が挙げられます。
  3. (3)ストーカー規制法の罰則

    たとえ警察からの警告を受けたとしても、単発のつきまとい等があっただけでは処罰されません。

    ただし、つきまとい等を繰り返してストーカー行為となった場合は、ストーカー規制法第18条の規定によって1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられます。なお、すべてのつきまとい等の行為が対象となるものではありません。

    また、警察からの警告にとどまらず、加害者がつきまとい等や位置情報を無許可で取得するなどをして被害者に不安を覚えさせる行為等をさらに繰り返すおそれがあると公安委員会が認めたときで、被害者が公安委員会に禁止命令の発出を求めた場合、禁止命令が出される余地があります。なお、状況によっては、公安委員会が職権で禁止命令を出すこともあります。

    この禁止命令に違反した場合、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。そして、単に違反するだけでなく、そこから行為がエスカレートした場合には、2年以下の懲役または200万円以下の罰金が科せられます。

    罰則は、ストーカー規制法の18条、19条、20条に規定されていますが、やや複雑な条文の読み方が必要となりますので、詳しくは弁護士にご相談ください

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3、警告の取り下げ・撤回は可能か?

つきまとい等の疑いをかけられて警察に警告を受けてしまった方のなかには、仕事や私生活への影響を心配して、あるいは事実に反する届け出であるために、警告の取り下げや撤回を求めたいと考える方もいるでしょう。

警告を受けた加害者からの要求で、警告を取り下げ・撤回することは可能なのでしょうか?

  1. (1)加害者からの要求で取り下げ・撤回されることはない

    ストーカー規制法には、警告の取り下げや撤回に関する規定がありません。ひとたび発出された警告がどのような条件で取り下げ・撤回できるのかの決まりが存在しないので、加害者の申し出によって警告が取り下げ・撤回されることはありません。

    また、あくまで警察からの警告は、それ自体では法的な効果は生じない、わかりやすくいえば、「警察からのお願い」にすぎないと考えられるため、警告を受けた加害者に対して不利益を強いる処分とはいえません。

    そのため、不服を申し立てる制度の対象にもならないので、取り下げ・撤回を求める方法は現実的に存在しないのです。

  2. (2)相手に直接取り下げ・撤回を要求するのはNG!

    警告の発出を求めるのはストーカー被害者なので、被害者が警察に「トラブルが解決したので取り下げたい」と求めれば警戒が解かれる可能性はあるでしょう。

    しかし、加害者が被害者に対して直接「警告を取り下げてほしい」と求めるのは極めて危険な行為です。

    警告の取り下げ・撤回を求めるための連絡や面会そのものがつきまとい等にあたるおそれがあり、しつこく要求を繰り返せばストーカー行為が成立する危険があります。

    被害者が強い不安を感じるような言動があれば逮捕されてしまうおそれもあるので、直接の連絡・面会は控えて弁護士に相談することをおすすめします。

4、警告は前科前歴になるのか?

ストーカー事案の多くは、元交際相手との間で発生しています。

警察庁が公開している「令和5年におけるストーカー事案、配偶者からの暴力事案等、児童虐待事案等への対応状況について」によると、被害者と加害者の関係でもっとも多かったのが「交際相手(元含む)」で37.2%でした。
「配偶者(内縁・元含む)」を合わせると、約44%が恋愛関係・夫婦関係のもつれからストーカー事案に発展していることがわかります。さらには、「知人友人」が13.4%、「勤務先同僚・職場関係」の方が13.4%と続く結果となっていました。

この統計結果から、ストーカー規制法に基づく警告を受けてしまった方のなかには、素行不良者ではない一般の方が多く含まれているといえます。会社員・学生といった立場であれば、警告を受けたことによって「前科前歴がついてしまうのか?」と強い不安を感じる方もいるでしょう。

警察からの警告は前科前歴になるのでしょうか?

  1. (1)警告は前科前歴にはならない

    ストーカー規制法に基づく警察からの警告は、前科前歴になりません。

    前科とは、刑事裁判で有罪判決を受けて刑罰を下された経歴を指すため、警告の段階で止まれば前科はつきません。

    前歴とは、警察に事件の被疑者として検挙された経歴を指すものです。ストーカー規制法に基づく警告を受けたとしても、刑事事件の被疑者として検挙されたわけではないので前歴にはならないと考えられます。なお、被害者が提出した申出書は、直ちに廃棄されるわけではありませんが、保管された申出書が前歴に影響することはないと考えられます。

    このように警告を受けただけでは前科前歴にならないので、被害者が周囲に口外しない限り、仕事・学校などの社会生活に悪影響を及ぼすことはないでしょう。

  2. (2)虚偽の訴えなどでお困りなら弁護士に相談を

    ストーカー事案のなかには、被害者の虚偽や誤解などによるものも存在します。

    前出の「令和5年におけるストーカー事案及び配偶者からの暴力事案等への対応状況について」によると、令和5年中に警察に寄せられたストーカー相談の総数1万9843件のうち、883件が「動機がストーカー規制法に抵触しない」、また2729件が「動機が不明で規制法に該当しない」と判断されています。

    「動機がストーカー規制法に抵触しない」ケースにおける動機別の内訳は次のとおりです。

    • 精神障害・被害妄想……114件
    • 職場・商取引上のトラブル……24件
    • 恋愛に基づかない怨恨の感情……202件
    • 離婚トラブル・金銭貸借トラブル・親権問題など……2729件


    この結果をみれば、警察に届け出をしていてもストーカーと判断されないケースが存在することがわかります。

    もしも虚偽のストーカー被害を訴えられてしまった場合は、被害者への接触を避けたうえで直ちに弁護士に相談してサポートを求めましょう

5、まとめ

ストーカー規制法に掲げられているつきまとい等の加害者として疑いをかけられてしまうと、今後はつきまとい等を繰り返さないように警察から厳しく警告を受けることがあります。また、法改正もなされましたので、より厳しい指導がなされることも否定できません。

警告の段階では刑事裁判で罪を問われたわけではないので前科前歴がつくことはなく、会社や学校といった社会生活に悪影響を及ぼすことはないでしょう。しかし、同様の行為があればストーカー行為として逮捕され、厳しい刑罰を受ける危険もあります。もしも、つきまとい等・ストーカー行為の疑いをかけられてしまった場合は直ちに弁護士に相談してサポートを受けましょう。

ストーカー規制法に基づく警告を受けてしまい対応に困っている、今後の影響に不安を感じている方は、刑事事件の解決実績が豊富なベリーベスト法律事務所 堺オフィスにご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています