オレオレ詐欺の受け子で逮捕!? 示談・刑罰・取り調べの流れ
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大阪府堺市で、60代の女性がオレオレ詐欺(振り込め詐欺)の被害に遭い、約200万円をだまし取られました(平成29年)。この事件では、区議会議員の銀行口座が犯罪グループによって不正利用されたことで世間に大きな衝撃を与えました。
オレオレ詐欺は、代表的な特殊詐欺として長らく社会問題となっていますが、その手口は巧妙さを増し、いまだになくならないのが現状です。また、単純なアルバイトであるかのように装ってSNSなどでオレオレ詐欺の受け子を募集し、知らずに犯罪に加担してしまう若者も後を絶ちません。
今回は、詐欺に加担してしまった方やご家族へ向けて、オレオレ詐欺がどんな罪にあたるのか、逮捕された場合どうなってしまうのか、示談の可能性はあるのか、などについてベリーベスト 堺オフィスの弁護士が解説します。
1、オレオレ詐欺とは
オレオレ詐欺とは、親族や警察官などを装った電話で連絡をとり、現金をだまし取る詐欺のことです。金融商品詐欺や架空金請求詐欺、還付金詐欺などを含めた特殊詐欺のひとつであり、令和元年の認知件数では1万6851件と、特殊詐欺の中でもっとも被害が多いことが明らかになっています。
高齢者がターゲットになることが多いオレオレ詐欺は、組織化された犯罪グループで行われることが多く、役割分担が明確に分かれていることも特徴です。
オレオレ詐欺では、一般的に以下のような役割があるとされています。
- ●かけ子……身内や警察官を装って電話をかけ、「事故に巻き込まれたので今すぐ示談金や賠償金を用意してほしい」などといって金銭の準備を要求する
- ●受け子……被害者と直接接触し、金銭を受け取る
- ●出し子……金銭の受け渡しが口座振り込みであった場合、指定口座から現金を引き出す
- ●主犯格……かけ子、受け子、出し子を使い、詐欺行為を計画的かつ組織的に行う
かけ子や受け子は、オレオレ詐欺グループの末端の立場であり、犯罪であることを詳しく知らないまま詐欺に加担してしまうケースもあります。また、インターネットのSNSや匿名の掲示板などで、いわゆる闇バイトとして募集され、10代や20代の若者が割のいいアルバイト感覚で引き受けてしまうケースが少なくありません。
2、オレオレ詐欺の刑罰
オレオレ詐欺は詐欺罪に問われます(刑法246条)。詐欺罪の刑罰は「10年以下の懲役刑」と定められており、罰金刑がないことから法定刑の中でも比較的重い罪といえるでしょう。詐欺罪は未遂であっても罰せられるので、実際に金銭を受け取らなくても何らかの加担をした場合は、罪に問われる可能性があります。
ただし、かけ子の場合は、どのように犯罪に加担したかによって量刑が変わるケースも少なくありません。初犯であるか、詐欺と知らずに金銭の授受をしてしまったかなど、状況や背景を弁護士に相談し、警察や検察に適切な主張をしていくことが重要です。
また、出し子として他人の銀行口座から金銭を引き出した場合、窃盗罪になる可能性もあります。窃盗罪は「10年以下の懲役または50万円以下の罰金」が科されます。
オレオレ詐欺は犯罪組織の資金源になっており、社会的な影響力も大きい犯罪であることから警察が取り締まりを強化しています。そのため、厳罰化の傾向にあり、初犯でも実刑になる可能性が高い犯罪です。
3、オレオレ詐欺で逮捕された後の流れ
オレオレ詐欺で逮捕されると警察による取り調べが始まります。取り調べは48時間以内と決まっており、さらに捜査が必要と判断されれば、検察に身柄が移され、24時間の間に勾留するか釈放するかを決めるため、さらに取り調べが行われます。この逮捕されてからの72時間は、家族であっても本人に面会することはできません。唯一面会できるのは、弁護士のみです。
検察が、勾留する必要があると判断した場合、裁判所に勾留請求を行います。勾留が決まると、拘置所や留置施設で、引き続き身柄を拘束されることになります。
勾留は10日、最大で20日間に及ぶ可能性があります。勾留期間中は、家族と接見することができますが、もしも証拠隠蔽などの恐れがあると判断された場合は「接見禁止」の処分が下されます。詐欺などの組織的な犯罪は、外部の人物と共謀する恐れがあると判断されやすく、接見禁止処分を受けることも十分考えられます。
勾留され取り調べを受けると、検察で起訴・不起訴の判断が下されます。起訴が決まれば裁判が始まり、判決を受けることになります。起訴されると9割以上が有罪となるのが日本の裁判の現状です。そのため、勾留期間にいかに適切な弁護活動を行えるかが重要だといえるでしょう。
もし有罪判決となってしまっても、執行猶予がつくケースがあります。ただし、その多くは初犯で、3年以下の量刑だった場合です。執行猶予の1年以上5年以下の期間に犯罪を起こさなければ、刑の執行が免除されます。
4、弁護士ができるサポート
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(1)取り調べのアドバイス
取り調べが始まってから72時間の間に、自由に面会できるのは弁護士だけです。初めての取り調べの場合、逮捕の動揺と取り調べの恐怖から、思わぬ供述をしてしまい、不利な立場に追い込まれてしまうことも少なくありません。一度供述を調書にとられると、後から変更することは大変難しく、そのため取り調べでは一貫した供述をすることが大切です。刑事事件の経験が豊富な弁護士が弁護人となれば、取り調べの心構えや供述について適切なアドバイスをもらうことができます。刑事事件は進行が早いため、迅速に弁護士に依頼することが大切です。
また、オレオレ詐欺の場合、犯罪グループから事前に供述内容を言い含められている場合もありますが、それが後から明らかになった場合、立場がより悪くなってしまう可能性があります。犯罪グループは自分たちの証拠隠蔽のための供述をさせようとしているだけで、本当に当人の助けになるアドバイスはしません。信頼できる弁護士にサポートを依頼することをおすすめします。 -
(2)被害者との示談交渉
示談とは、裁判を介さず当事者同士で和解することです。そのため、示談が成立していると警察や検察などの判断が不起訴となる可能性が高まります。起訴されて有罪判決を受けた場合でも、量刑が軽くなったり、執行猶予つきの判決になったりといったケースが考えられます。
しかし、本人や親族が交渉を行おうとしても被害者が交渉に応じてくれなかったり、交渉が決裂してしまう危険性があります。また、交渉の仕方によっては、「被害者が反省しておらず示談で何とかしようとしている」などといった誤解を受けたり、加害者が罰せられることを望む気持ちに油を注ぐ結果になることもあります。一方で、「加害者に今後逆恨みされるのではないか」という不安を抱えさせてしまう場合もあります。
弁護士という第三者が間に入ることで、被害者も冷静に交渉に応じてくれる可能性が高まります。また弁護士は、示談金の額や示談を行うタイミングなどについても適切な判断をもって進め、不必要に本人やご家族が不利にならないよう取り計らってくれるでしょう。
5、弁護士に依頼するタイミングは?
逮捕された場合は、なるべく早く弁護士に相談することをおすすめします。まず、最初の72時間の捜査後、検察で勾留するかどうかの判断が下されます。このとき、勾留を免れることができれば、職場や学校に支障がでないタイミングで復帰できることが期待できます。勾留判断までの最初の72時間以内に弁護活動を始めることができれば、検察の判断に有利な影響を与えられるかもしれません。
また、オレオレ詐欺の受け子を行ってしまったという場合も、気付いた時点で弁護士に相談しておくことが大切です。自分が受け子を行うことになった経緯から加担した内容までできる限り詳細を話しましょう。事前に弁護士に相談しておくことで、出頭するべきか、逮捕された場合どうすべきか、などのアドバイスをしてもらえます。
6、まとめ
今回は、オレオレ詐欺で逮捕された場合について解説しました。たとえ人からの誘いでやった「受け子」であっても、重い罪に問われるのがオレオレ詐欺です。深く反省し、今後立ち直るためにも、逮捕後は速やかに弁護士に相談することをおすすめします。刑事事件では初期対応がその後の処分を左右します。
詐欺に加担してしまったと不安を抱えている方は、ベリーベスト法律事務所 堺オフィスにご連絡ください。堺オフィスの担当弁護士が全力でサポートします。
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