ながらスマホ・歩きスマホの罰則は? 厳罰化の背景と全国の禁止条例
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総務省が公表している令和2年通信利用動向調査の結果によると、大阪府内におけるインターネット利用者の割合は86.2%でした。なかでもスマートフォンによるインターネットの利用率は71.5%で、パソコンの53.2%を大きく上回っています。
便利なスマホの急速な普及の一方、交通事故などの原因となる行為として、近年社会問題化しているのが「ながらスマホ」「歩きスマホ」です。「ながらスマホ」は道路交通法で禁止されるケースがあるほか、「歩きスマホ」を禁止する条例も登場しています。また、行為の悪質性などによっては、刑事罰に問われる可能性もあります。
この記事では、「ながらスマホ」「歩きスマホ」に対して科される刑事罰(罰則)などのペナルティーについて、ベリーベスト法律事務所 堺オフィスの弁護士が解説します。
1、社会問題化する「ながらスマホ」「歩きスマホ」
スマートフォンの利便性が向上し、利用率が拡大するに連れて、「ながらスマホ」や「歩きスマホ」が社会問題化しました。
地図の閲覧・メールやメッセンジャーの利用・ソーシャルゲームなどは、車や自転車を運転しながら、あるいは歩きながらでも、やろうと思えばできてしまいます。
しかし、スマートフォンの画面に注意を注ぐあまり、交通の往来に対する注意がおろそかになり、結果的に交通事故(スマホ事故)の大きな要因のひとつになってしまっているのです。これは、スマートフォンの利便性が向上したことに関する弊害のひとつといえるでしょう。
交通安全上の問題が指摘される中で、道路交通法の改正や、歩きスマホ禁止条例の制定などによって、「ながらスマホ」「歩きスマホ」に対する規制は年々強まっています。「ながらスマホ」「歩きスマホ」の危険性や法規制について正しく理解したうえで、交通ルール・マナーを順守する意識を備えておきましょう。
2、「ながらスマホ」「歩きスマホ」に当たる行為とは?
「ながらスマホ」とは、「スマートフォンを操作しながら」別の何かをすることを意味します。
特に、公共の道路などを通行している時にスマートフォンを操作することを、「ながらスマホ」と表現することが多いでしょう。たとえば車の運転中や、歩行中にスマートフォンを操作することが、「ながらスマホ」の典型例といえます。
「歩きスマホ」は上記のとおり、「ながらスマホ」のパターンのひとつです。最近では、歩行中にスマートフォンを操作する人がいっそう目立つようになり、歩行者同士・自転車と歩行者・自動車と歩行者といったあらゆるシチュエーションで、「歩きスマホ」が原因となった交通事故が発生しています。
「ながらスマホ」をしている人は、スマートフォンを使用して、主に以下のような操作を行っています。
- 地図アプリの閲覧
- メールやメッセンジャー(LINEなど)によるメッセージのやり取り
- 通話
- ソーシャルゲーム
- 仕事
こうした操作の中には、スマートフォンの画面に対して集中することを要求されるものが多く、その分交通の往来に対する注意がそがれてしまいます。
その結果、
- 前から来る人、自転車、自動車などに気づかない
- 信号が赤になっていることに気づかない
- 一方通行の道路に誤って進入してしまう
- さまざまな道路標識を見落としてしまう
- 車のハンドル操作を誤ってしまう
など、交通の危険につながる事態を引き起こす可能性が、格段にアップしてしまうのです。
車や自転車を運転する際、また道路を歩行する際には、こうした「ながらスマホ」「歩きスマホ」に伴う危険性を十分に認識しなければなりません。
3、「ながらスマホ」「歩きスマホ」に対して科されるペナルティーは?
運転者による「ながらスマホ」に対しては、状況に応じて重い刑事罰が科される可能性があります。
また、全国では「歩きスマホ」を禁止する条例の整備も進められており、歩行時のスマートフォン操作も極力控える必要があります。
さらに、運転中・歩行中を問わず、「ながらスマホ」「歩きスマホ」による注意力不足に起因して交通事故を引き起こした場合には、被害者に対して巨額の損害賠償責任を負う可能性があります。
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(1)運転中の「ながらスマホ」は、道路交通法違反等による刑事罰の対象
車の運転中にスマートフォンを操作する行為は、道路交通法その他の法律によって、刑事罰の対象となる場合があります。
まず、自動車また原動機付自転車が停止している場合を除いて、スマートフォンを利用して通話をすることは、原則として禁止されています(道路交通法第71条第5号の5。ただし、ハンズフリーのものは除く)。また、自動車等の停止中を除き、スマートフォンの画面を注視することも禁止です(同)。
これらの規定に違反して、スマートフォンを手に取って通話を行い、または手に取ったスマートフォンの画面を注視した場合、「6か月以下の懲役または10万円以下の罰金」に処される可能性があります(同法第118条第1項第3号の2)。
さらに、「ながらスマホ」によって注意を欠き、その結果交通事故を起こして他人を死傷させた場合、過失運転致死傷罪に問われるおそれがあります。
過失運転致死傷罪の法定刑は、「7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金」です(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第5条)。場合によっては、実刑判決を含むきわめて重い刑事罰が科される可能性もあるので、運転中の「ながらスマホ」は厳に控えましょう。 -
(2)「ながらスマホ」の違反点数は3点
道路交通法の規定に違反した「ながらスマホ」に対しては、3点の交通違反点数が付与されます(2019年施行の改正道路交通法により、1点から3点に引き上げ)。
前歴がない人でも、違反点数合計6点以上となった場合、30日間の免許停止になるので注意しましょう。 -
(3)「歩きスマホ」を禁止する条例も制定されている|罰則はなし
「歩きスマホ」を禁止する法律は現状存在しませんが、市区町村レベルでは「歩きスマホ」を規制する条例が制定されている地域があります。
参考:「歩きスマホは禁止です」(神奈川県大和市)
参考:「荒川区ながらスマホ防止条例」(東京都荒川区)
参考:「歩きスマホはやめましょう!」(京都府京都市)
たとえば神奈川県大和市の「大和市歩きスマホの防止に関する条例」第5条第1項では、
「何人も、公共の場所において歩きスマホ※を行ってはならない」
※スマートフォン、携帯電話、タブレット端末またはこれらに類する物の画面を注視しながら歩行すること
と定められています。
歩きスマホに対する罰則は定められていませんが、「歩きスマホの禁止」をすべての市民が順守すべき義務として規定しているのが、同条例の特徴です。
他の自治体の条例でも、歩きスマホに対する罰則が定められている例は現状ありませんが、「歩きスマホは条例違反に当たり得る」という意識をもって行動すべきでしょう。 -
(4)事故を起こした場合は損害賠償責任を負う
「ながらスマホ」「歩きスマホ」によって交通事故を引き起こした場合、加害者は被害者に対して不法行為(民法第709条)に基づく損害賠償責任を負います。
損害賠償の金額は、被害者のケガの程度のほか、被害者の収入などによっても左右されます。
たとえば、- 被害者のケガの程度が重い場合
- 被害者が死亡してしまった場合
- 被害者が要介護の状態になった場合
- 被害者に重い後遺障害が残った場合(特に、被害者の収入が高い場合)
などには、数千万円・数億円単位の損害賠償責任を負う可能性があります。
軽い気持ちで行った「ながらスマホ」「歩きスマホ」が、取り返しのつかない結果をもたらすおそれがあることを知っておきましょう。
4、「ながらスマホ」による事故への対処法は弁護士に相談を
「ながらスマホ」による交通事故の加害者は、警察や検察の捜査に協力しなければならず、さらに被害者に対して巨額の損害賠償責任を負う可能性があるなど、非常に厳しい状況に追い込まれる可能性があります。
万が一「ながらスマホ」による交通事故の加害者になってしまった場合は、速やかに弁護士へのご相談をおすすめします。
弁護士は、加害者に対して下される刑事処分をできる限り軽くするため、不起訴や執行猶予を目指した弁護活動を行います。また、被害者との示談交渉についても、弁護士に一任することが可能です。
弁護士のサポートを受けることで、精神的な負担が軽くなることもあります。ぜひお早めにご相談ください。
5、まとめ
「ながらスマホ」「歩きスマホ」は、交通事故の原因になりやすい非常に危険な行為です。
運転中の「ながらスマホ」は道路交通法で規制されており、特に実際に交通事故を引き起こした場合には、厳罰に処されるおそれがあります。
また「歩きスマホ」についても、近年規制を行う条例が各市区町村で制定されており、今後のさらなる規制強化も予想されます。
また、「ながらスマホ」「歩きスマホ」によって交通事故を引き起こしてしまうと、被害者に対する損害賠償責任が発生します。場合によっては、損害賠償がきわめて高額になるため、安易な「ながらスマホ」「歩きスマホ」は危険であると心得ておきましょう。
「ながらスマホ」「歩きスマホ」によって事故を起こしてお悩みの方は、お早めにベリーベスト法律事務所 堺オフィスへご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています