残業代にも最低賃金は適用される! 下回っているときの対策

2025年09月25日
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残業代にも最低賃金は適用される! 下回っているときの対策

令和7年10月16日以降、大阪府の地域別最低賃金は前年より63円引き上がって1177円になります(大阪労働局)。

残業代も賃金にあたるため、最低賃金を超える金額が支払われていなければ違法となります。

本コラムでは、残業代と最低賃金の関係や適切な残業代が支払われていない場合の対策などについて、ベリーベスト法律事務所 堺オフィスの弁護士が解説します。


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1、残業代の定義と最低賃金の関係

まずは、残業代の定義と最低賃金の関係について説明します。

  1. (1)残業代とは

    労働基準法では、1日8時間・1週40時間を「法定労働時間」と定めており(労働基準法32条)、それを超えて働いた場合には、所定の割増率によって増額された残業代が支払われなければなりません(労働基準法37条)。

    また、労働者と使用者(会社)との間で定めた「所定労働時間」を超えて働いた場合にも残業代が支払われます。一方、所定労働時間を超えても、法定労働時間の範囲内の残業(法内残業)だった場合は、所定の割増率による残業代の増額は支払われません。

  2. (2)最低賃金とは

    最低賃金とは、最低賃金法によって定められた使用者が最低限支払わなければならない賃金の額をいいます。最低賃金の金額は、都道府県ごと設置されている最低賃金審議会による審議によって毎年10月ごろに改定されています。

    最低賃金には、特定の産業ごとに定められている「特定最低賃金」と都道府県ごとに定められている「地域最低賃金」の2種類あります。一般的に最低賃金というときには、地域最低賃金を指すことが多いです。

    最低賃金を下回る労働条件で契約をしたとしても、そのような賃金の定めは無効であり、最低賃金の金額で契約をしたものとみなされます(最低賃金法4条1項・2項)
    そのため、最低賃金を下回る賃金であった場合には、労働者は、その差額分を使用者に対して請求することが可能です。

  3. (3)残業代も最低賃金を上回る必要がある

    残業代も賃金であることに変わりありませんので、残業代についても最低賃金による規制が及びます。そのため、法内残業については、最低賃金を上回る必要があり、法外残業については、最低賃金に25%以上の割増率を乗じた金額を上回る必要があります。

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2、時間あたりの残業代の計算方法とシミュレーション

残業代が最低賃金を上回っているかどうかを調べるためには、1時間あたりの賃金額を計算しなければなりません。以下では、その計算方法と具体例について説明します。

  1. (1)最低賃金を計算する際に賃金から除外する手当

    最低賃金との比較対象になる賃金は、通常の労働時間に対応する賃金となります。
    具体的には、会社から実際に支払われた賃金から、以下の賃金を控除したものが最低賃金との比較対象となります。

    • 臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
    • 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
    • 所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(時間外労働手当、深夜労働手当など)
    • 所定労働日以外の日の労働に対して支払われる賃金(休日労働手当など)
    • 精皆勤手当
    • 通勤手当
    • 家族手当
  2. (2)比較対象となる賃金を1時間あたりの金額に変換する

    時給によって働いている労働者であれば、時給額がそのまま最低賃金との比較の対象となりますが、月給によって働いている場合には、上記の計算で明らかになった比較対象となる賃金をベースに1時間あたりの基礎賃金を計算しなければなりません。

    1時間あたりの賃金額は、以下の計算式によって計算します。

    • 1時間あたりの賃金額=(最低賃金との比較対象となる)月給額÷1か月平均所定労働時間
    • 1か月平均所定労働時間=(365日-1年の休日合計日数)×1日の所定労働時間÷12か月

    以下のケースを例に算出してみましょう。

    【月の月収】
    • 基本給15万円
    • 職務手当3万円
    • 通勤手当5000円
    • 時間外手当3万5000円
    ---------------------
    合計 月収22万円

    【月の平均所定労働時間】
    160時間

    【最低賃金との比較対象となる月給の算出】
    22万円(月収)-{5000円(通勤手当)+3万5000円(時間外手当)}=18万円

    【1時間あたりの賃金額の算出】
    18万円÷160時間(月の平均所定労働時間)=1125円

    大阪府の場合、最低賃金は1177円(令和7年10月16日以降)のため、1時間あたりの賃金額は最低賃金を上回っていることになります。

    なお、1か月平均所定労働時間を計算するためには、年間休日の日数を把握する必要があります。当該事業所ごとに設置されている就業規則を確認してください。

  3. (3)最低賃金との比較をする

    上記の計算によって算出された1時間あたりの賃金額と最低賃金とを比較することによって、支払われた賃金が最低賃金を上回っているかどうかを判断することができます。

    また、残業代は、「1時間あたりの賃金×残業時間×割増率」によって計算をしますので、この計算どおり残業手当が算定されているかどうかを計算すれば、残業代が最低賃金を上回っているかどうかを判断することができます。

  4. (4)固定残業制(みなし残業)は要注意

    固定残業代制度がとられている場合には、最低賃金を下回るケースもあるため特に注意が必要です。固定の残業時間が超過したら残業代を請求できます。

    たとえば、月に20時間の固定残業時間が設定されており、毎日1時間半ほど残業していた場合には、1か月あたり10時間ほど固定残業時間を超過することになります。この10時間に対して残業代を請求することができます。

    固定残業代が最低賃金を下回っていないか確認するには、「固定残業代÷(固定残業時間×1.25)」で計算することで判断できます。

3、残業代が最低賃金を下回っているときの対策検

残業代が最低賃金を下回っているなど、適切な残業代が支払われていない場合には、以下の対策を検討しましょう。

  1. (1)会社に対する未払い賃金の請求

    会社には残業時間に応じた残業代を支払う義務があるため、適切な残業代が支払われていない場合には、会社に対して未払い残業代を請求することができます。
    まずは会社との話し合いによって解決を図りましょう。会社が話し合いに応じてくれないという場合には、労働審判や訴訟なども検討する必要があります。

    なお、残業代請求には、各賃金支払日の翌日から3年という時効があります。未払いの残業代があることが判明した場合には、早めに対応することが大切です。

  2. (2)労働基準監督署への相談

    労働基準監督署は、会社が労働基準法などの法律に違反しないように監督する機関であり、労働基準法などの法律違反が認められた場合には行政指導によって是正を求めることができます。

    残業代の未払いは、明らかな労働基準法違反ですので、調査の結果、残業代の未払いが認められた場合には、労働基準監督署による是正勧告などによって状況が改善される可能性があります。ただし、是正勧告には残業代支払いの強制力はないため、解決につながるとは限りません。

  3. (3)弁護士への相談

    未払いの残業代があり、会社との交渉が難しいという場合には、弁護士に相談をすることをおすすめします。弁護士は、未払いの残業代の有無を判断して、労働者の代理人として会社と交渉をしたり具体的な対応などについてアドバイスをしたりします

    また、弁護士に依頼をすることで、労働者個人で対応するよりも、未払いの残業代を回収できる可能性が高くなるといえます。

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4、未払い残業代請求の依頼を受けた弁護士が行うこと

弁護士に未払い残業代請求を依頼することによって、以下のようなサポートを受けることができます。

  1. (1)正確な残業代計算が可能

    残業代を計算するためには、1時間あたりの賃金額を計算しなければなりません。そのためには、就業規則等を調べて1か月平均所定労働時間を計算することや、法内残業や法外残業を区別して細かく計算することなど、非常に複雑な計算が必要となります。

    法律の知識がなければ正確に残業代を計算することが難しいため、残業代計算は弁護士に任せるのが安心です。弁護士であれば、迅速かつ正確に残業代計算を行うことができるだけでなく、残業代計算に必要となる証拠収集についてもサポートすることができます。

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  3. (2)会社との対応をすべて任せることができる

    弁護士に残業代請求を依頼すれば、その後の会社との対応はすべて弁護士に任せることができます。労働者個人では、会社に比べて交渉力に圧倒的な差があり、労働者個人からの請求にはまともに応じてくれないこともあります。

    しかし、労働トラブルの実績がある弁護士が交渉の窓口になれば、会社としても適当に扱うことができないため、交渉によって解決することも期待できます。
    また、弁護士に任せることによって、1人で会社と交渉することによる精神的負担も大幅に軽減できるという点も、大きなメリットといえるでしょう。

  4. (3)労働審判や訴訟になった場合も適切な対応が期待できる

    会社との話し合いによって解決することができない場合には、交渉ではなく労働審判や訴訟といった法的手段によって解決を図ることができます。
    ただし、労働審判や訴訟となれば、専門的な知識がないと適切に対応することが難しく、解決の機会を逃してしまう事態も生じかねません。

    弁護士に依頼をすれば労働審判への同席や訴訟への対応なども任せることができるため、それによって労働者の正当な権利を主張することが可能です。

    また、労働審判や裁判は平日に行われるため、仕事などで時間が取れない場合にも弁護士に依頼することはメリットといえるでしょう。

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5、まとめ

会社から支払われる給料は、必ず最低賃金額を上回るものでなければなりません。給与明細を確認して思ったより給料が少ないと感じた場合は、最低賃金を下回っている、もしくは未払いの残業代がある可能性があります。

そのような場合には、おひとりで悩まず、まずはベリーベスト法律事務所 堺オフィスまでご相談ください。労働トラブルの実績豊富な弁護士が状況をヒアリングし、解決に向けてサポートします。

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