【後編】未払い残業代などの労働問題を解決したい! 弁護士相談する前の準備は?
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堺市にお住まいで、「労働問題を弁護士相談することをためらう」という方は多くいらっしゃるようです。しかし、労働者には適切な残業代を受け取る権利があります。そこで前編では、労働問題を相談できる窓口を紹介するとともに、弁護士に相談するメリットについて解説しました。
後半についても堺オフィスの弁護士が、労働問題を弁護士に相談する際に知っておきたいことや準備したほうがよいものについてご案内します。
3、労働問題を弁護士に相談するデメリット
弁護士に対応を依頼すると、弁護士報酬が発生しますが、ほかにデメリットはないと言ってよいでしょう。
したがって、実際に弁護士へ依頼するか否かの判断基準のひとつとして考えられるのは、未払い残業代と弁護士報酬の費用対効果次第といえます。弁護士報酬の内訳は、相談料、着手金、弁護士活動への実費、および会社から取り返した未払い残業代に対する成功報酬です。
報酬について不安なときは、弁護士費用を公開している法律事務所へ相談すると安心でしょう。ベリーベスト法律事務所では、以下のページで各分野における弁護士料を明示しています。
弁護士の費用・料金
4、弁護士相談の前に準備しておきたいこと、確認しておきたいこと
弁護士に相談できる時間は限られています。効率よく相談するためにも、以下のような準備ができているとよいでしょう。
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(1)証拠を集めてください
たとえば会社に残業代を請求するためには、残業代が適性に支払われていない客観的な証拠を事前に集めておく必要があります。代表的な証拠は、タイムカードと給与明細です。
残業代が適性に支払われていないと気づいた段階で、証拠集めや勤務時間を記録しておくことをおすすめします。
残業した事実と実際に残業した時間を証明する証拠となりえるものは以下のとおりです。- タイムカード
- パソコンのログイン記録
- 会社のパソコンから送信したEメール
- 業務日誌
- 勤務シフト表
- GPSの記録
ものによっては、退職したあとでは集めることが難しい証拠もあります。退職前に収集が可能な証拠は必ず収集しておくべきでしょう。また、どうしても労働時間の証明に関して有力な証拠を集めることができない場合は、客観性や信ぴょう性についての議論が生じる可能性はありますが、労働者自身で日々の勤務時間を記録に残しておかれるべきです。
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(2)時効になっていませんか?
労働者が会社に対して残業代の支払いを請求する権利は、労働基準法第115条の規定により給料支払日から2年で時効となり消滅してしまいます(ただし、民法改正により5年に延長される可能性が高くなっています)。
もし会社との交渉が長期化することが予想される場合は、残業代が時効となってしまうことが考えられます。まずは時効を中断させなくてはなりません。時効の中断を行うための手続きは、ぜひ弁護士にお任せください。 -
(3)管理監督者ですか?
労働基準法第41条第2号では、会社はいわゆる管理監督者に対して残業代を支払わなくてもよいと規定しています(ただし、深夜残業代は支払う義務があり、免れません)。労働基準法や厚生労働省の見解によりますと、ここでいう管理監督者には以下のような立場の社員が該当します。
- 会社の重要な意思決定に関与していること、人事権が与えられていること。
- 労働時間を従業員自身で決める権限を与えられていること
- ほかの社員と比較して、高い給料をもらっていること。
現在の労働法務をめぐる状況下では、労働者が「管理監督者」に当たるとされるケースはほとんどありません。あなたが担当部長や担当課長のような役職名だけを付けている「名ばかり管理職」であるならば、残業代が支払われる可能性が高くなります。なお、あなたが管理監督者に該当していたとしても、午後10時から午前5時までの深夜労働に対する割増賃金を受け取る権利があります。
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(4)会社は残業を禁止していますか?
企業が就業規則などで明確に残業を禁止していたり、上司の許可制を採用している場合で、労働者に与えられた業務量が残業が必要ない程度であると認められる場合は、残業しても残業代の請求が難しくなります。
しかし、建前と実態はかけ離れていることは多いものです。建前上、会社が残業を禁止していても定時では到底仕事を終わらせられないほどの業務量であれば、その実態を詳細に証拠として残しておいてください。 -
(5)会社の給与形態は?
固定残業代制、みなし残業代制、年棒制、歩合制などであることを理由に、適正な残業代を支払わない会社は多いようです。現在の労働法務をめぐる状況下では、企業が固定残業代を支払っていることを理由に労働者の残業代請求に応じないケースが多いです。
仮に、固定残業代の制度が法律に適合したものだとしても、固定残業代は「労働時間の○時間相当分」の賃金を前払いしたという性質のものですので、当該「○時間」を超えて労働した場合は、超過の残業代を支払う義務が会社にはあるのです。
また、先述した管理監督者やプロ野球選手のような個人事業主でもない限り、法定労働時間または労働契約を超えた残業時間に対して会社は残業代を当然に支払う義務を負います。これは歩合制の労働契約を結んでいる人も同様です。ただし、歩合制の場合、残業代計算の基礎となる時給単価がとても低くなり、また、残業代計算においても低額な計算方法を強いられますので、固定給制の場合と比べて大幅に未払い残業代の額は低くなります。 まず、あなたが労働者として働こうとする場合、固定給制なのか、歩合給制なのか、しっかりと確認されるべきでしょう。 -
(6)雇用されたときの書面は?
労働基準法第15条では、労働者と雇用契約を締結する際に会社は労働者に対して賃金や労働時間などの労働条件を書面で明示しなければならないと規定されています(労働基準法施行規則第5条第4項)。実態は、「労働条件通知書」や「雇用通知書」という形式での明示が多いようです。
また、労働基準法施行規則第5条では、雇用契約締結時に労働者に明示すべき最低限の労働条件について定めており、これには時間外労働についても含まれています。労働問題全般において会社と交渉する際の重要な資料となりますので、ぜひ用意しておいてください。
5、まとめ
あなたに残業代請求権が法律上認められるとしても、交渉や対応に失敗して請求できなければ元も子もありません。残業代を請求されると、企業にとっては多額の出費となり、できれば支払いを拒みたいと思う企業も少なくありません。残業代請求の交渉は、労働者と企業の利害対立が先鋭化するので、労働者個人で対応することは難しいと言えるでしょう。残業代の支払いなど労働問題の解決には弁護士のような専門家に委ねることが得策といえます。その際、上記に記載した準備などを事前にしておいていただけると、より充実した弁護士相談が行えます。
必要なものなどご質問があれば、ベリーベスト法律事務所 堺オフィスへご連絡ください。残業代未払いなど労働問題に対応した経験が豊富な弁護士が、スムーズな解決をかなえるために適切なアドバイスを行います。
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