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退職勧奨の進め方を誤るとパワハラになることも。会社が注意すべきことは?

2023年04月24日
  • 労働問題
  • 退職勧奨
  • パワハラ
退職勧奨の進め方を誤るとパワハラになることも。会社が注意すべきことは?

辞めてほしい従業員(労働者)がいる場合、面談などで従業員みずから退職することを促す「退職勧奨」を検討する経営者や人事担当者もいらっしゃることでしょう。

しかし、会社が退職勧奨を行う際、パワハラに当たる行為がなされるケースがあります。退職勧奨がパワハラに当たる場合、会社は退職の無効や損害賠償請求などのリスクを負うため、十分な注意が必要です。

今回は、パワハラに当たる退職勧奨の例や、退職勧奨を行う際に会社が注意すべきポイントなどについて、ベリーベスト法律事務所 堺オフィスの弁護士が解説します。

1、退職勧奨に関する基礎知識

退職勧奨は、従業員に辞めてもらうための対応ですが、解雇とは全く異なるものです。
適切な形で退職勧奨を行うため、まずは退職勧奨に関する基礎知識を確認しておきましょう。

  1. (1)退職勧奨とは

    「退職勧奨」とは、従業員に対して任意の退職を促すことを意味します。

    従業員が退職に同意した場合は、退職届を提出してもらうか、または会社と従業員の間で退職合意書を締結するのが一般的です。従業員に納得したうえで辞めてもらうことで、後にトラブルが発生するリスクを抑えられるメリットがあります。

    なお、退職勧奨を受けた従業員が退職した場合、雇用保険の支給に関しては、自己都合退職ではなく会社都合退職として取り扱われます。

  2. (2)退職勧奨と解雇の違い

    従業員に辞めてもらうための対応としては、退職勧奨のほかにも「解雇」があります。

    解雇とは、無期労働契約を締結している従業員について、会社が一方的に契約を打ち切ることを意味します。

    従業員が退職するという結果は同じでも、あくまでも任意に退職する退職勧奨と、強制的に退職させる解雇は全く異なる手続きです。

    解雇には「懲戒解雇」「整理解雇」「普通解雇」の3種類があり、それぞれ対応する要件を満たさなければなりません。

    1. ① 懲戒解雇
      従業員の就業規則違反を理由に、懲戒処分の一環として行われる解雇です。
      就業規則上の懲戒事由に該当することが要件となります。
    2. ② 整理解雇
      経営不振などに伴い、人件費削減を目的として行われる解雇です。整理解雇を行う高度の必要性があることに加えて、解雇を回避する努力を尽くしたこと、解雇する従業員を適正な手続きにより選定すること、従業員側への説明を尽くすことなどが必要となります(整理解雇の4要件)。
    3. ③ 普通解雇
      懲戒解雇・整理解雇以外の解雇です。労働契約または就業規則上の解雇事由に該当することが要件となります。


    上記の各要件のほか、解雇については「解雇権濫用の法理」(労働契約法第16条)が適用されます。

    すなわち、客観的に合理的な理由がなく、社会通念上相当と認められない解雇は無効となるのです。

    なお解雇権濫用の法理は、原則として退職勧奨には適用されません。ただし、従業員に対する強制を伴う退職勧奨については、実質的に解雇と同視され、解雇権濫用の法理が適用されることがあるのでご注意ください。

2、退職勧奨の際にパワハラが問題になりやすい理由

退職勧奨の際には、会社側によるパワハラが問題になるケースがあります。退職勧奨がパワハラに当たる場合、会社は退職の無効や金銭の支払い、行政処分などのリスクを負うことになるので要注意です。

  1. (1)従業員を追い詰めようとすると、パワハラに当たりやすい

    退職勧奨に当たっては、何とかして退職に同意させようとするあまり、従業員に対して強いプレッシャーをかける対応が行われがちです。

    しかし、会社側が従業員に対する優越的な立場を利用して、退職に追い込もうと不当なプレッシャーを与えれば、パワハラとの非難を免れることはできません。退職勧奨の際に従業員を追い詰めようとする行動は、パワハラに当たる可能性が高いことを理解しておくべきです

  2. (2)パワハラに当たる退職勧奨の例

    厚生労働大臣が定めたパワハラ防止に関する指針では、パワハラに該当する行為として6つの類型を挙げています。

    ① 身体的な攻撃:従業員に対して、物理的な暴力を振るうこと。
    (例)
    • 退職勧奨に応じない従業員に対して激怒し、殴る・蹴るなどの暴力を振るう


    ② 精神的な攻撃:侮辱や罵倒などにより、従業員に精神的なダメージを与えること。
    (例)
    • 「お前なんか会社に必要ない!辞めちまえ!」などと罵倒する
    • 他の従業員の面前で叱責して自信を喪失させ、退職するように仕向ける


    ③ 人間関係からの切り離し:従業員を周囲の人間関係から不当に切り離すこと。
    (例)
    • 1人だけの「追い出し部屋」に異動させて仕事を与えず、周囲の従業員との交流を絶たせて退職するように仕向ける


    ④ 過大な要求:能力に比べて過酷すぎる業務、または明らかに不必要な業務を命じること。
    (例)
    • 無理な目標を課したうえで、達成できなかったことを厳しく叱責して自信を喪失させ、退職するように仕向ける
    • 個人的にお茶くみなどを命じて屈辱を味わわせ、退職するように仕向ける


    ⑤ 過小な要求:能力に比べて簡単すぎる業務しか与えないこと、または全く業務を与えないこと。
    (例)
    • 管理職を経験した従業員に、毎日ひたすらコピー取りだけをさせて仕事のやりがいを奪い、退職するように仕向ける


    ⑥ 個の侵害:従業員のプライベートを過度に詮索すること。
    (例)
    • 「病気の家族の面倒を見るには、退職した方がよいのではないか」など、プライベートな事柄を口実に退職を迫る


    参考:「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(厚生労働省)

  3. (3)退職勧奨がパワハラに当たる場合、会社が負うリスク

    退職勧奨がパワハラに該当する場合、会社は以下のリスクを負うことになります。

    いずれも会社にとって重大な損害をもたらし得るため、退職勧奨の際に行われるパワハラには十分にご注意ください。

    1. ① 退職の無効
      従業員による退職の意思表示が、会社の強制(強迫)によるものだった場合(=退職強要)、従業員はその意思表示を取り消すことができます(民法第96条第1項)。
      退職の意思表示が取り消された場合、退職は無効となります。その際、会社が解雇を主張したとしても、解雇権濫用の法理が適用されて無効となる可能性が高いです。

    2. ② 従業員に対する金銭の支払い
      退職が無効となった場合、会社は従業員に対して、職場を離れていた期間を含めた賃金全額を支払わなければなりません(民法第536条第2項)。
      また、パワハラに関する安全配慮義務違反(労働契約法第5条)や使用者責任(民法第715条第1項)に基づき、従業員に対する損害賠償責任を負う可能性もあります。

    3. ③ 厚生労働大臣による行政処分
      会社には、職場におけるパワハラの防止・対応につき、雇用管理上必要な措置を講ずることが義務付けられています(労働施策総合推進法第30条の2)。
      退職勧奨がパワハラに当たる場合、雇用管理上必要な措置が講じられていないものとして、厚生労働大臣による助言・指導・勧告・公表の対象となるおそれがあります(同法第33条)。

3、退職勧奨を行う際、会社が注意すべきポイント

会社が従業員に対して退職勧奨を行う場合、以下の2点を念頭に置いて対応すべきです。

  1. (1)退職勧奨はあくまでも任意|従業員に判断させる

    退職勧奨は解雇と異なり、退職するかどうかはあくまでも、従業員が任意で判断すべき事柄です

    会社がそのことをきちんと意識していないと、立場の違いを利用して、従業員に退職の圧力をかけることになりがちです。退職勧奨を行う担当者に対して、従業員に判断させる必要があるということを再三念押ししておきましょう。

  2. (2)パワハラの6類型を念頭に対応する

    パワハラに当たる退職勧奨の具体例を知っておくと、実際にパワハラを行ってしまうリスクを抑えられます。

    退職勧奨を行う担当者には、パワハラの6類型に沿って、どのような退職勧奨がパワハラに該当するのかを繰り返しシミュレーションさせることをお勧めいたします。

4、従業員が退職勧奨に応じない場合の対処法

退職勧奨に応じない従業員に対しては、退職金の増額などのメリットを提示する方法が考えられます。

それでも退職に応じない場合は、解雇処分とすることも考えられますが、事前に慎重な法的検討を行わなければなりません。

  1. (1)退職金の増額などを提案する

    退職することについてメリットを感じれば、従業員が自発的に退職に応じることが期待できます。

    従業員側のメリットとしてもっともわかりやすいのは、退職金の増額です。賃金の6か月分〜12か月分程度の退職金の増額を提示すれば、退職勧奨が成功する可能性がかなり高まるでしょう。

  2. (2)解雇処分を検討する

    退職勧奨に応じない従業員に対して解雇処分を行う場合、解雇要件を満たしているかどうかを厳密に検討しなければなりません。解雇の種類(懲戒解雇・整理解雇・普通解雇)によって、解雇要件が異なるので注意が必要です。

    軽率に解雇処分を行ってしまうと、従業員との間でトラブルになる可能性があります。トラブルを未然に防ぐためにも、従業員の解雇処分を行う際には、必ず事前に弁護士へご相談ください。

5、まとめ

退職勧奨の際には、会社によるパワハラが行われるケースがあります。会社としては、従業員とのトラブルを防ぐためにも、退職勧奨時のパワハラは徹底的に避けるべきです。

ベリーベスト法律事務所 堺オフィスでは、退職勧奨や解雇に関して、会社側からのご相談を随時受け付けております。辞めてほしい従業員がいるものの、どのように対応すべきかお困りの場合は、ベリーベスト法律事務所にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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