知っておきたい消費者契約法! トラブルから身を守る基礎知識

2020年11月26日
  • 個人のトラブル
  • 消費者契約法
知っておきたい消費者契約法! トラブルから身を守る基礎知識

物やサービスを購入する際のトラブルは、消費者にとって身近な法律問題であるといえるでしょう。たとえば、商品の質に比べて不相当に高額な代金を支払ってしまった、事実と異なる情報を信じて購入してまった、などです。

独立行政法人「国民生活センター」によると、不当な勧誘や契約などで全国から寄せられた相談件数は、年間76万6635件にものぼります(2018年度・架空請求および還付金詐欺を 除いた相談総件数)。堺市の管轄である大阪地方裁判所でも、消費者契約法に違反する勧誘があったとする訴訟や、消費者契約法にもとづく適格消費者団体による訴訟などが行われています。

購入した商品を返品する方法としては、一般にクーリングオフが有名ですが、消費者契約法にもとづいて売買契約を取り消す方法もあります。そこで今回は、商品購入のトラブルから消費者を守る方法として、消費者契約法の基礎知識をベリーベスト法律事務所 堺オフィスの弁護士が解説します。

1、消費者契約法の基礎知識

  1. (1)消費者契約法とは

    消費者契約法は消費者と事業者間のトラブルを防止し、トラブルにあってしまった消費者の利益を保護するための法律です。

    誰とどのような契約を締結するかは個人の自由ですが、消費者は商品を売る事業者に比べて商品知識や情報が大きく劣るのが一般的です。また、契約を締結するための交渉力も事業者の方が上回っているケースが少なくありません。

    したがって、消費者と契約者を完全に対等な立場に置くことは、かえって消費者を不利な状況に置くことになりかねません。このような情報や交渉力の格差による不利益から消費者を守るのが、消費者契約法の目的です。

    消費者契約法は、主に以下のような仕組みについて定めています。

    • 事業者の不当な勧誘によって締結してしまった契約を取り消す
    • 消費者の利益を不当に害することになる条項を無効にする
    • 適格消費者団体による差止請求権の行使の手続き


    適格消費者団体とは、消費者の利益を守るために差止請求権を有する団体で、内閣総理大臣の認定を受けた法人が全国に21団体あります(2020年11月時点)。また、差止請求権とは不当または違法行為によって消費者の権利が侵害されるおそれがある場合に、その行為をやめるよう請求できる権利です。

  2. (2)クーリングオフ期間を過ぎても適用できる?

    消費者契約法の取り消しに似た制度として、クーリングオフがあります。クーリングオフは訪問販売や通信販売などの消費者トラブルが発生しやすい取引を対象において消費者の利益を守ることを目的とした制度で、特定商取引法に規定されています。

    クーリングオフと消費者契約法はどちらも消費者を保護するためのものですが、それぞれ別の法律にもとづく制度であり、クーリングオフの期間が過ぎても消費者契約法による取り消しは認められます。

    したがって、クーリングオフができる期間は、契約書面を受け取ってから8日以内(内職商法やマルチ商法は当該書面を受け取ってから20日以内)とされていますが、消費者契約法による取り消しができる期間は、追認ができるとき(誤認・困惑の状態が終了したとき)から1年以内かつ、契約を締結してから5年以内です。

2、購入を取り消しできるさまざまなケース

  1. (1)不実告知

    消費者契約法第4条では、契約の申し込みを取り消しできるさまざまなケースが規定されています。知っておきたい主なケースについて解説していきます。

    まず不実告知とは、契約の重要事項について事実と異なる説明があった場合です。以下の項目において、事実と異なる説明があったときに適用されます。

    • 契約の対象である物やサービスの内容、品質、効果
    • 対象物の価格や支払い方法
    • 契約内容における重要な事項
    • 生命、身体、財産などの重要な利益についての損害または危険を回避するための必要性について
     など


    なお、主観的な評価の告知は取り消しのケースに該当しません。たとえば「ファミリーにも住みやすい」と不動産業者に紹介されたマンションが、実際に住んだところスーパーや学校から遠く不便に感じても、告知内容が業者の主観的な評価によるため、不実の告知にはあたりません。

  2. (2)不利益事実の不告知

    消費者の利益になる旨を告知しておきながら、重要事項について消費者の不利益となる事実を故意または重大な過失によって告げなかったケースです。

    たとえば、物件を日当たり良好と説明して販売しておきながら、実は高層マンションの建設計画があって、日当たりが損なわれることを知っていて告知しなかったような場合です。

  3. (3)過量契約

    消費者にとって通常必要とされる分量を著しく超えることを知っていながら、契約させたケースです。

    たとえば、ひとり暮らしでほとんど外出する機会のない高齢の相手に対して、その事実を知りながら何十着も衣類を売りつけるなどです。

  4. (4)断定的判断の提供

    将来においてどう変動するか不確実な事項について、確実であると告げたケースです。

    たとえば、将来値上がりするとは限らない宝石について、確実に値上がりすると説明して売りつけたような場合です。

  5. (5)不退去

    消費者が販売者に対して退去してほしいとの意志を示したにもかかわらず、販売者がその場所から退去しないケースです。

    たとえば、消費者の自宅を訪れてセールスを始めた業者に対して、消費者がもう帰ってほしいと言ったにもかかわらず、契約してくれるまでは帰らないなどと業者が告げて居座るなどです。

  6. (6)退去妨害

    事業者が勧誘をしている場所から、消費者が退去する旨の意思を示したにもかかわらず、消費者をその場から退去させないケースです。

    たとえば、事業者が主催するセミナーに参加して物品の購入を勧められた消費者が、もう帰りますと言ったにもかかわらず強引に引き止めてセールスを続けるような場合です。

  7. (7)不安をあおる告知

    消費者の社会生活上における経験が乏しいことなどから、願望の実現に過大な不安を抱いていると知りつつもその不安をあおり、正当な理由がないのに契約の目的物が願望の実現に必要である旨を告げることです。

    この場合における願望とは、以下の事項に対する願望を意味します。

    • 進学、就職、結婚、生計その他の社会生活上の重要な事項
    • 容姿、体形その他の身体の特徴または状況に関する重要な事項


    自分が結婚できるか不安を抱いている相手に対して、不安を抱いていると知りながら「このままでは結婚できませんよ」などとあおり、高額な恋愛セミナーに勧誘するようなケースです。

  8. (8)好意の感情の利用

    消費者が契約の勧誘者に対して恋愛感情その他の好意の感情を抱いている場合に、「勧誘者も同じ好意の感情を抱いている」と誤信していることを知りながら、それに乗じて当該契約を締結しなければ関係が破綻することになる旨を告げる場合です。

    たとえば、インターネットを通じて知り合った女性とデートの約束をし、ドレス売り場に誘われて一緒に赴いたところ、「このドレスを買ってくれないと関係を続けられない」と言われたようなケースです。

  9. (9)判断力の低下の不当な利用

    加齢または心身の故障によって判断力が著しく低下している消費者について、生計、健康、その他の事項に関して現在の生活の維持に過大な不安を抱いていると知りながら、その不安をあおって正当な理由がないのに契約を締結しなければ現在の生活の維持が困難になると告げることです。

    たとえば、加齢によって判断能力が著しく低下している消費者に対して、生活の維持について不安を抱いていると知りながら、「この事業に投資しなければ収入がなくなって将来生活できなくなりますよ」と告げて契約させようとするなどです。

  10. (10)霊感などによる知見を用いた告知

    霊感などの合理的な実証が困難な特別能力による知見として、消費者に重大な不利益となる事態が発生する旨を示し、消費者の不安をあおって契約の締結によって確実にその不利益を回避できると告げることです。

    たとえば、消費者に対してあなたの未来を霊視しますと告げ、「このままではあなたは大変な事故に巻き込まれるが、このお札を買えば事故を回避できる」などと勧誘するなどです。

  11. (11)契約締結前に義務の内容を実施する

    消費者が契約の申し込みや承諾の意思表示をする前に、契約を締結した場合に負うことになる義務の全部または一部を実施し、実施する前の原状回復を著しく困難にするケースです。

    たとえば、破損したガラスの修理の見積もりを依頼した消費者に対して、業者が修理の注文を受ける前にガラスを切り出して代金を請求するなどです。

  12. (12)契約締結を目指した事業活動による損失請求

    消費者が契約の申し込みや承諾の意思表示をする前に、事業者が契約の締結を目指した事業活動を実施し、正当な理由がないにもかかわらず、事業活動が消費者のために特に実施したものであると告げ、実施によって生じた損失の補償を請求する旨を告げることです。

    たとえば、「いい投資の話があるから聞いてほしい」と言われて業者を自宅に呼んだところ、「あなたのために特別に来たのだから交通費を支払ってもらう」と告げるなどです。

3、無効を訴えるには弁護士へ相談を

売買によるトラブルにあった場合、消費者センターに相談するのが手軽な方法のひとつでしょう。しかし、消費者契約法にもとづいて契約を取り消したい場合は、弁護士に相談するとさまざまなメリットがあります。

たとえば、クーリングオフ期間が過ぎている場合は消費者契約法で取り消しを求める形になりますが、取り消しができる事由に該当することを主張する必要があります。契約内容が複雑だったり事案が悪質だったりする場合、取り消し事由に該当する旨の主張が困難になることがあります。この点、弁護士に相談すると複雑な事例にも適格な主張と対応が期待できます。また、割賦販売法や景品表示法など、事案によっては他の法律の規定を主張することもできます。

4、まとめ

消費者契約法は、事業者の不当な勧誘によって結ばれた契約を取り消せることを規定している、消費者の利益を守るための法律です。クーリングオフの期間が過ぎても消費者契約法による取り消しは可能ですが、手口が巧妙な悪質な業者の場合などは、不当な勧誘にあたることを立証するのが困難な場合もあります。

不当な契約を取り消したいがどうしたらよいかお悩みの際は、ベリーベスト法律事務所 堺オフィスにご相談ください。消費者トラブルの解決実績が豊富な弁護士が親身にサポートいたします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています