飲酒(酒気帯び)運転で逮捕されたらどうなる? 量刑や逮捕~裁判までの流れ
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大阪府警察の発表によると、令和3年の飲酒運転検挙件数は796件で、前年から69件減少しました。
飲酒(酒気帯び)運転が危険であるということはすでに広く認知されています。しかし、警察の取り締まりを受ける方はまだまだ存在するという現状は周知のとおりです。
では、飲酒運転によって取り締まりを受けたらどのような刑罰が科せられるのか、ご存じでしょうか。この記事では、飲酒運転と酒気帯び運転の違い、逮捕された場合のそれぞれの手続きや量刑について、堺オフィスの弁護士が解説します。
1、「酔っていない」と思っていても飲酒運転になる?
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(1)2種類の飲酒運転
飲酒運転は俗称で、道路交通法では次の2つに分類されます。
- 酒気帯び運転
- 酒酔い運転
酒気帯び運転は、「呼気検査で1Lあたり0.15mg以上の濃度」が検出されると該当します。
これに対して、酒酔い運転は「呼気中アルコールの濃度にかかわらず、アルコールの影響により車両などの正常な運転ができないおそれがある状態」のことです。 -
(2)「酔っていない」と思っていても危険な理由
アルコールの耐性は、個人の体質によって異なります。「お酒に強いから、これくらいの飲酒で酔わないはず」と思っていても、アルコール濃度の基準値で、酒気帯び運転として検挙される可能性があります。
また、少量のお酒で酔ってしまう体質であれば「1Lあたり0.15mg未満の濃度」だったとしても、正常な運転ができないおそれがあるとして、酒酔い運転とみなされる場合がありえます。 -
(3)身体からアルコールが抜けるまでの時間は?
体重60kgの標準的な成人男性の目安は以下と言われています。
【アルコール分解時間4時間に対する、飲酒量目安】- ビール(500ml)アルコール度数5%
- チューハイ(350ml)アルコール度数7%
- 日本酒(180ml)アルコール度数15%
- ワイン(200ml)アルコール度数12%
アルコールの分解能力には個人差がありますので、さらに時間が必要なケースもあります。自分の体質や体調を考えて適度な飲酒量を心掛けましょう。
2、厳罰化が進んだ飲酒運転
道路交通法が施行された昭和35年、飲酒運転は違反行為ではありましたが罰則は設けられていませんでした。しかし、悪質な飲酒運転による事故などをきっかけとして社会的な批判が高まり、厳罰化が進みました。
特に平成19年の飲酒運転厳罰化、平成21年の行政処分強化は、平成18年8月に幼児3人が亡くなった飲酒運転による悲惨な事故が少なからず影響していると考えられます。
3、飲酒運転の量刑はどのようなもの?
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(1)2種類の量刑
飲酒運転で逮捕されて有罪になると、刑事罰と免許関連の行政刑罰の両方が生じます。
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【刑罰】
- 酒酔い運転 5年以下の懲役または100万円以下の罰金
- 酒気帯び運転 3年以下の懲役または50万円以下の罰金
- 酒酔い運転 免許取り消し、欠格期間3年
- 酒気帯び運転 ・ 呼気中アルコール濃度0.25mg/L以上の場合は、免許取り消しと欠格期間2年
【行政刑罰】
・ 呼気中アルコール濃度0.15mg~0.25mg/Lの場合は、90日の免許停止 -
(2)飲酒運転による事故の量刑は重い
飲酒運転によって事故を起こしてしまった場合、量刑はさらに重くなります。
たとえば、人身事故の場合、自動車運転過失運転致死傷罪として罪を問われる可能性があるでしょう。自動車運転過失運転致死傷罪として有罪になったときに科せられる刑罰は、7年以下の懲役または禁錮もしくは100万円以下の罰金です。
また、悪質な運転によって事故を起こした場合は、危険運転致死傷罪として罪に問われることがあります。その際、被害者に傷害を負わせた場合は15年以下の懲役、死亡してしまったときは1年以上の有期懲役が科せられる可能性があるでしょう。
さらに、飲酒運転をして死傷者が出る事故を起こした際に、飲酒の発覚を隠そうとすると、過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪に問われることがあります。量刑は、12年以下の懲役刑です。
なお、飲酒運転の発覚をおそれ、酔いをさましてから出頭しても、隠蔽(いんぺい)しようとしたことが発覚すると、より重い刑罰が科せられます。
4、飲酒運転をしてしまった場合、後日逮捕される可能性はある?
軽い気持ちで飲酒運転をしてしまったけれど、特に何も問題は起こさずに帰宅できた場合、逮捕される可能性はあるのでしょうか。
飲酒運転は、アルコールが身体の中にある、もしくはアルコールの影響により正常な運転ができない状態という証拠が必要となるため、現行犯逮捕される場合がほとんどです。しかし、飲酒運転中に事故を起こしたなどの記録が残っているような場合は、飲酒運転をした後日逮捕されるケースもあります。
5、逮捕から裁判までの流れ
飲酒運転で逮捕された場合は、刑事事件として取り扱われます。
まず、逮捕されると警察署で取り調べを受けます。この取り調べを元に逮捕から48時間以内に検察官に送致するかどうかが判断されます。送致されると検察官による取り調べを受け、この取り調べを元に24時間以内に勾留が必要かどうか判断されるのです。なお、逮捕された直後から勾留の有無が決定するまでのあいだは、外部との連絡も取れませんし、弁護士以外との面会が認められないので注意が必要です。
勾留(こうりゅう)とは、原則10日間、延長されると最大20日ものあいだ、身体拘束を行ったまま取り調べを行う措置です。証拠隠滅の可能性や逃亡の危険があるなどと判断されれば、勾留の必要ありとして裁判官に勾留請求が出されます。請求が認められると、勾留が決定してしまいます。
検察官は、取り調べの結果を元に起訴するかどうかを決めていきます。不起訴になった場合は釈放されますし、前科もつきません。しかし、起訴された場合は裁判の結果が出るまで身体を拘束される可能性があるでしょう。
6、まとめ
飲酒運転は、酒酔い運転と酒気帯び運転の2種類に分けることができ、態様と量刑が異なります。飲酒運転を隠そうとすると罪状が重くなってしまう可能性が高いため、飲酒運転中の呼気検査は適切に受け、事故は正直に申告するようにしましょう。
飲酒運転によって逮捕されてしまうかもしれない、すでに警察の取り調べを受けているなど不安を抱えている方は、まずは弁護士に相談することをおすすめします。ベリーベスト法律事務所 堺オフィスでは、重すぎる処罰を受けないよう、適切な対応を行います。お困りの際は、まずはご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています