児童(未成年)にわいせつな自撮り画像を要求すると逮捕される?
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平成30年3月、わいせつな自撮り画像を販売のため送信した大阪府内の女子大生が、わいせつ電磁的記録頒布容疑で逮捕されました。
このケースでは、自分のわいせつ画像を販売した女子大生自身が逮捕されましたが、もし、わいせつな自撮り画像を未成年に要求すると、要求した側は逮捕されるのでしょうか。
昨今におけるスマートフォンの普及で、面識のない児童や未成年者とSNSなどを介してつながることは容易になっています。そのため、出来心で要求した自撮りのわいせつ画像が未成年のものだった……というケースも起こり得るでしょう。しかし、被害者が児童だった場合、厳しい罰が待ち受けています。
もしも、自分の子どもが児童にわいせつ画像を要求して逮捕されてしまったら、本人や家族は何ができるのでしょうか。本コラムでは、児童にわいせつな自撮り画像を要求した場合の罪や罰則など、家族が押さえておきたい点を解説します。
1、わいせつな自撮り画像を「要求」すると逮捕?
インターネット上などで知り合った相手に対し、自撮りしたわいせつな画像を送り悪用されることを一般に「自画撮り被害」と呼ばれます。
平成30年2月には全国に先駆け、東京都で同被害を防ぐための青少年保護条例の改正が施行されました。
これまでは、自撮り画像を要求し児童ポルノ法に該当する画像を「受け取る」などすると処罰の対象となっていました。しかし条例改正によって、自撮り画像を「要求」するだけで逮捕、処罰の対象になりました。
この東京都の動きを皮切りに、条例施行や条例改正案提出の動きは全国に広がっています。
大阪府でも平成31年4月に「青少年に児童ポルノ等の提供を求める行為の禁止(第42条の2)」に自画撮りの要求行為を禁止する規制が盛り込まれ、施行されました。
わいせつ自撮り画像の要求をおこない青少年保護条例違反に該当する場合の罰則は自治体によって異なりますが、30万円以下の罰金または科料のケースが多く、大阪府でも同様の罰金が設けられています(罰則第56号第3号)。
2、児童ポルノ禁止法に抵触するおそれ
わいせつな自撮り画像を要求することで問われる、そのほかの罪についても解説します。
被害者が児童の場合、まず挙げられるのが、児童ポルノ禁止法違反です。
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(1)児童ポルノ禁止法とは
児童ポルノ禁止法とは、「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」の略称で、児童ポルノ規制法とも呼ばれています。
同法では、児童ポルノの所持、製造、提供、児童買春などが禁止されており、判断能力が低い児童を、大人による性的虐待や性的搾取から守ることを目的としています。 -
(2)児童ポルノ禁止法の対象
児童ポルノ禁止法の対象となるのは、18歳未満の未成年です。つまり、わいせつ画像を要求した相手が18歳未満の少年・少女であれば、児童ポルノ禁止法で処罰されるおそれがあるわけです。
特に、画像を要求する方法が脅しをともなった悪質なケースや、買春行為なども併せておこなっていると、処罰の可能性はより高くなるでしょう。 -
(3)児童にわいせつ画像を要求した場合の罰則と量刑
児童に対してわいせつな画像や動画を要求する行為は、「児童ポルノの製造」にあたります。
罰則は、3年以下の懲役または300万円以下の罰金です。
また、「不特定または多数の者に提供し、または公然と陳列」すると、5年以下の懲役または500万円以下の罰金または併科で処されます。たとえば、児童から受け取った画像や動画を、インターネット上で誰でも閲覧可能な状態で公開したような場合がこれに該当します。
法定刑は上記の範囲ですが、判決で下る具体的な量刑は、複数の罪を犯しているか、前科の有無はあるか、などによって変わります。
たとえば、初犯でほかに同様の行為をしていないのであれば、略式手続による罰金刑でとどまるケースも少なくないようです。
略式手続とは、裁判をせず非公開の書類のみで処分を決定する手続きで、日常生活への復帰がスムーズになる可能性が高まります。本人が罪を認めて深く反省していること、適切な弁護活動を尽くすことが、判決を左右します。家族が罪を犯したことを相談してきたら、できる限り早い段階で、弁護士に相談された方がよいでしょう。
3、そのほか該当するおそれがある犯罪と罰則
児童にわいせつな画像を要求すると、下記の罪に該当する可能性もあります。
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(1)強要罪
脅迫や暴行を用いて、生命や身体、名誉などに害を与える旨を伝え、義務のないことをさせると、刑法223条の強要罪に問われるおそれもあります。たとえば、被害者の弱みを何らかの方法で知り、「学校に知らせるぞ」「ネット上で拡散するぞ」などと脅し、わいせつ画像を送らせたようなケースが該当します。
罰則は3年以下の懲役です。要求した行為を被害者が実際にしなかったとしても未遂罪が成立し、法定刑が適用されます。 -
(2)わいせつ物頒布等の罪
わいせつな画像や動画などを「頒布し、または公然と陳列」すると、刑法175条のわいせつ物頒布等の罪に問われることがあります。インターネット上でわいせつな画像や動画を不特定多数向けにアップしたようなケースで該当する罪です。
法定刑は、2年以下の懲役もしくは250万円以下の罰金もしくは科料、または併科です。
4、逮捕後の流れ
児童にわいせつ画像を要求して逮捕されると、以下の流れで手続きが進みます。
- 逮捕後48時間以内……警察による取り調べ、検察への送検の決定
- 送検後24時間以内……検察官による取り調べ、勾留請求
- 勾留……原則10日間、延長10日間
- 勾留期間満了まで……検察官による起訴、不起訴の決定
勾留に入る前の72時間は、たとえご家族であっても本人と面会することができません。面会できるのは弁護士のみです。刑事事件は、非常にスピーディーに手続きが進むため、直ちに弁護士へ相談することをおすすめします。
5、わいせつ自撮り画像要求の実名報道について
ご家族としては、逮捕された本人の実名が報道されてしまうかは、心配ごとのひとつでしょう。実名報道については法的な規制があるわけではなく、報道機関の判断に委ねられます。
過去の児童ポルノ法違反の逮捕報道をみると、公務員や学校関係者などが実名報道されているケースが多くあります。しかし、中にはそれ以外の職業で実名報道されているケースもあり、確実に実名報道がされない保証はありません。
一般的には、社会的な影響力が大きい事件については実名報道のおそれがあるといえるでしょう。
しかし、弁護士から捜査関係者に働きかけることによって、実名報道が避けられる可能性は残ります。実名報道されてしまうと社会復帰への影響も考えられます。可能な限り早く、弁護士から働きかけをしてもらうことが望ましいといえます。
6、わいせつ自撮り画像の要求に示談は有効か?
刑事事件では、被害者との示談成立が量刑の軽減や早期の身柄釈放につながる事例が多くあります。
しかし、児童にわいせつ自撮り画像を要求した事件の場合、児童本人はもとより児童の家族の処罰感情が強く、示談に応じてくれないケースが少なくありません。ご家族が直接被害者と連絡を取り、示談交渉を進めようとすることは控えましょう。
示談は、法的知識を要した第三者である弁護士へ依頼することが最善策です。弁護士に依頼することで、適切な示談交渉ができるほか、早期釈放に向けた具体的な働きかけや社会復帰までのアドバイスを受けることもでき、ご家族やご本人の心強い味方となるはずです。
7、まとめ
今回は、自身の子どもが児童にわいせつな自撮り画像を要求して逮捕されたケースを想定し、具体的にどのような刑罰の対象になるのか対策も含めて解説しました。
インターネットを通じて見ず知らずの相手とやり取りができる昨今、つい出来心で児童にわいせつな自撮り画像を要求してしまえば、それだけで逮捕されるおそれがあります。
しかし、逮捕後の対応をご家族だけでおこなうことは賢明ではありません。適切な対応ができず身柄拘束期間が長引けば日常生活への影響は免れません。できる限り早いタイミングで弁護士に相談しましょう。刑事事件の解決実績が豊富なベリーベスト法律事務所 堺オフィスの弁護士が、迅速な解決に向けて全力で対応します。ぜひ早期にご連絡ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています