盗撮をした際の後日逮捕の可能性は? 罪を軽くする方法はある?

2019年01月17日
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盗撮をした際の後日逮捕の可能性は? 罪を軽くする方法はある?

スマートフォンや安価な高性能小型カメラの普及により、盗撮事件の件数は年々上昇傾向にあるとされています。堺市においても、市営地下鉄御堂筋線長居駅で女性のスカート内にスマートフォンを差し入れ、盗撮しようとしたとして、大阪府堺市立小学校の男性教諭が、府迷惑防止条例違反(卑わいな言動)の疑いで平成30年2月26日に書類送検されました。

盗撮は決して許されない行為です。手元にスマートフォンという高画質カメラが付属するアイテムを常備し、階段やエスカレーターなどの段差がある状況では、魔が差してしまう方が稀にいるようです。そして、盗撮後、急に怖くなって逃げてしまったという相談があります。もし誰かに気づかれていたら、後日、逮捕されることはあるのだろうかと不安になる方は少なくありません。

そこで今回は、盗撮をしてしまい、その場から逃げた場合、後日に逮捕されることがあるのかをはじめ、警察対応、被害者対応、裁判対応を弁護士が解説します。

1、盗撮で後日逮捕の可能性はある? また事件化の可能性は?

まずは「盗撮」は、どのような罪に問われることになるのかについて解説します。さらに、後日になって逮捕されることはあるのか、逮捕の可能性についても知っておきましょう。

  1. (1)迷惑防止条例違反

    「盗撮」とは、「迷惑行為」のひとつです。各都道府県によって定められている迷惑防止条例において、刑罰を科す取り締まりの対象となっています。

    迷惑防止条例とは、「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等を防止し、もって住民生活の平穏を保持することを目的とする」条例の総称を指します。大阪府における正式名称は「大阪府公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」です。

    盗撮は、同条例の以下の行為に該当し、禁じられています。

    第6条第1項第2号
    「人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、公共の場所又は公共の乗物における衣服等で覆われている内側の人の身体又は下着を見、又は撮影すること」

    第6条第1項第3号
    「みだりに、写真機等を使用して透かして見る方法により、公共の場所又は公共の乗物における衣服等で覆われている人の身体又は下着の映像を見、又は撮影すること」

    第6条第2項第1号
    「何人も、みだりに、公衆浴場、公衆便所、公衆が利用することができる更衣室その他公衆が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいる場所における当該状態にある人の姿態を撮影してはならない」

    第6条第3項第1号
    「何人も、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、教室、事務所、タクシーその他の不特定又は多数の者が出入りし、又は利用するような場所又は乗物(公共の場所又は公共の乗物を除く。)における衣服等で覆われている内側の人の身体又は下着を見、又は撮影してはならない」

    第6条第4項第1号
    「何人も、第1項第2号若しくは第3号又は前2項の規定による撮影の目的で、人に写真機等を向け、又は設置してはならない」

    なお、第6条第4項第1号により、実際に撮影していなくても、身体や下着を撮る目的で撮影機器を向けるだけでも、犯罪行為となりえます。

    また、迷惑防止条例は、「公共の場」における盗撮を禁じています。「公共の場」ではなく、個人宅やプライベートスペースに侵入して行われた盗撮は、迷惑防止条例違反ではなく、軽犯罪法違反に問われることもあるでしょう。被写体が子どもであれば、さらに重い処罰が下される児童ポルノ法(児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律)違反に問われることもあります。

  2. (2)事件化の可能性

    盗撮しているその場で、第三者や被害者に現認され、スマートフォンなどに画像が残っていることを確認された場合は、被害者自身や目撃者など一般市民でも、犯人を逮捕できます(私人による現行犯逮捕)。

    仮に、盗撮したその場から逃れることができたとしても、被害者に気づかれて被害届が提出され、捜査が開始し、監視カメラ等に盗撮の様子が撮影されていれば、後日警察から取り調べを受ける可能性は十分ありえます。

    つまり、盗撮の現場から逃れたとしても、無事に帰宅できたから大丈夫ということはありません。後日になって逮捕されたり、警察から任意同行、取り調べを受ける可能性はあると考えておいてよいでしょう。

2、盗撮の後日逮捕、警察の動きは?

  1. (1)警察が家に来て後日逮捕(通常逮捕)される

    逮捕は、逮捕状がなければできません。逮捕状は、裁判官が発出します。警察が捜査をして特定の人物を容疑者であると疑い、逮捕しようとする際に、その捜査資料などを裁判官に提出し、裁判官が「被疑者が罪を犯したと疑うに足りる相当な理由」があり、「逮捕することが必要だと認めた場合」に発行されます。逮捕状に基づき逮捕することを「通常逮捕」といいます。

    一方、前述のとおり、被疑者が犯行中もしくは犯行直後である場合、犯行が誰の目から見ても明らかである状況では不当逮捕は起こりにくく、また、この機会を逃すといつ逮捕できるか分からないと考えられますので、警察だけでなく一般私人も逮捕することができ、これを「現行犯逮捕」といいます。

    原則として、「逮捕することが必要かどうか」は、逃亡のおそれ、罪証隠滅のおそれがあるか否かによって判断されます。逃亡のおそれの有無は、持ち家の有無、家族の有無、定職の有無などにより判断されます。罪証隠滅のおそれの有無は、集団犯罪のように、他の共犯者と口裏合わせをする可能性があるか、目撃者がいるか、証人威迫のおそれがあるか、捜査機関で保全されていない物証を隠匿するおそれがあるかなどを考慮し判断されます。

    一般的に、盗撮事件では相当悪質でない限り、後日に通常逮捕される可能性は低いといえます。しかし、いつ通常逮捕されるかは、特に定められていません。犯行から一週間後に逮捕される場合もあれば、半年から一年経過したのちに逮捕される場合もあります。これは警察の捜査状況が大きく関係しますので、一概には分かりません。

  2. (2)警察から呼び出しを受け、任意の取り調べを受ける(任意出頭・任意同行)

    「任意出頭・任意同行」とは、身体の拘束を受けていない被疑者または参考人が、捜査機関の求めに応じて捜査機関に出頭することをいいます。盗撮後に逃走した場合、警察が後日逮捕する可能性は低いと考えられますが、警察から任意の取り調べを求められることがあります。

    任意出頭・任意同行は、被疑者の自由な意思により捜査機関に出頭することですので、捜査機関が無理やり連れていくことは許されません。

3、逮捕される前に被疑者がとるべき対応は?

「出来心で盗撮してしまったものの、反省している」、「いち早く罪を償い、刑事裁判になることを避けたい」と考える方も多いでしょう。出来心で盗撮をしてしまった場合、反省している被疑者、罪を償いたいと思う被疑者はどう対応すればいいのでしょうか。

  1. (1)自首

    自首とは、犯罪事実が全く発覚していない場合や、犯罪事実は発覚していても犯人が何人か分からない時点で、犯人が自発的に捜査機関に出頭し自己の犯罪事実を申告することをいいます。 たとえば、取り調べや職務質問中に犯罪事実を告白しても自首扱いにはなりません。また任意同行を求められるなど、警察が被疑者として特定した段階では、犯人がわからないという段階ではないため、自首は成立しない、ということになります。 自首をすれば反省の態度を示すことができますし、仮に自らが犯人であると捜査機関が覚知しており、「自首」扱いにならなかったとしても、自ら犯罪事実を申し出たということで反省の態度を示すことができるでしょう。 ひとりで自首することはもちろん、任意出頭に応じることは、非常に心細く感じるのではないでしょうか。ベリーベスト法律事務所の弁護士をはじめ、多くの弁護士が、自首や任意聴取に同行することが可能です。まずは、あなた自身の状況を整理するためにも、刑事事件の経験が豊富な弁護士に相談してみることをおすすめします。

  2. (2)被害者との示談交渉

    盗撮が発覚した場合、被害者の処罰感情の程度や示談の成否は、捜査の必要性、起訴・不起訴の判断、量刑の判断など、いずれの局面においても、大きく影響します。

    そのため、被害者との間で「示談」を成立し、許しを請うことは非常に重要です。しかし、当然のことながら、被害者は犯罪者と直接示談交渉することを望みません。特に盗撮事件では、加害者と被害者の間に面識がないケースが多く、いっそう直接示談交渉したがりません。そのようなケースでは、弁護士を介してのみ示談交渉が可能となります。

    「被害届の提出」や「逮捕・勾留」に至ってしまう前に、迅速な示談交渉を行い、示談を成立させることは非常に重要です。罪を犯してしまったと反省しているのであれば、まずは弁護士に依頼し、一刻も早い被害者への対応を図ることが重要です。

4、まとめ

盗撮は許されない犯罪行為です。もし盗撮をしてしまった場合には、事件発覚や逮捕の恐怖や不安におそわれることになります。

弁護士は、職務上、守秘義務を負っているため、法律相談や顧客から得た情報を第三者に漏示することはありません。仮に、捜査機関に発覚していない犯罪事実の申告をうけても、弁護士が捜査機関に通報することは守秘義務との関係でありません。

特に、刑事事件においては、場合によっては最大23日間も身柄が拘束されてしまう可能性もあることから、逮捕前、逮捕後の迅速な弁護活動が必要不可欠です。まずは、弁護士に相談することをおすすめします。

あなた自身や家族が盗撮してしまった……、と罪の意識に苛まれているようでしたら、ひとりで抱え込まず、ベリーベスト法律事務所 堺オフィスまでご連絡ください。示談交渉を含め、逮捕に至らないための最善策を検討し、また、万が一逮捕されてしまった場合は、釈放、不起訴、執行猶予の獲得に向けて、多くのサポートを迅速に行います。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています