【前編】もし家族が闇金で逮捕されてしまったら? 罰則と対処方法について解説
- 財産事件
- 闇金
- 逮捕
令和元年6月、貸金業の登録がないまま女性に金を貸し付け、さらに法定外の利息を取っていたとして、「出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律」(出資法)違反の容疑で堺市在住の男が逮捕されたという報道がありました。男の行為は、いわゆる「闇金」と呼ばれるものです。
多くの人にとって、本件は対岸の火事なのかもしれません。しかし、被害者だけでなく加害者側になる可能性はゼロではないでしょう。万が一、あなたの家族が闇金を理由に逮捕されてしまったとき、あなたはどのような行動をとるべきなのでしょうか。闇金という犯罪の特徴を踏まえながらベリーベスト法律事務所 堺オフィスの弁護士が解説します。
1、闇金とは?
闇金とは、一般的に以下のような特徴がみられる違法な貸金業者のことをいいます。
- 財務局や都道府県に、貸金業者としての登録を行っていない。
- 法外に高い金利を要求する。
- 無差別なダイレクトメールや電話、電柱などへの張り紙など、勧誘のための広告に違法な手口を用いる。
- 官報などで調べた自己破産者を勧誘のターゲットにする。
- 連絡先が携帯電話やスマートフォンであることが多い。
- 実在する大手企業に類似した会社名を名乗る。
- 融資実行の際に提示した条件と、実際の回収における条件が異なる。
- 融資の際に、金利や返済期限、毎月の約定弁済額などの条件を明示しない。
- 取り立てに際して、暴力的な手段をとる。
- 債務者を動揺させるため、債権回収に関する訴訟を乱発する。
- 押し貸し(一方的にお金を振り込み、貸し付けたと強弁する)。
闇金の被害者のなかには、破産や自殺、家庭崩壊などに至った人も数多くいます。このため闇金は深刻な社会問題となり、これを重く見た金融庁によって平成15年7月25日に貸金業に対する各種規制および罰則を強化する「ヤミ金対策法」(当時の貸金業規制法と出資法を改正したもの)が成立するなど、闇金に対する規制と罰則は厳しくなる傾向があるのです。
2、闇金で逮捕されるとどのような罰則を受ける?
上記のような違法行為が認められる場合に、闇金業者は以下のような罪状で逮捕されます。
-
(1)貸金業法違反
日本で貸金業を営むためには、貸金業法第3条1項の規定により内閣総理大臣あるいは都道府県知事の登録を受ける必要があり、無登録業者は同第11条1項の規定により貸金業の営業を行ってはならないとされています。
もし登録をしていないのに貸金業を営んでいた場合、あるいは不正の手段で貸金業の登録を受けた場合は、同第47条の規定により10年以下の懲役もしくは3千万円以下(法人の場合は同第50条の規定により1億円以下)の罰金または併科となります。
また、取り立てに際して闇金業者にありがちな以下の行為は貸金業法第21条1項に違反し、同第47条の3の規定により2年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金が科されます。- 正当な理由なく、午後9時から午前8時の間に、電話や訪問などの方法で取り立てを行うこと(21条1項1号)。
- 正当な理由なく、勤務先など自宅以外の場所へ取り立てを行うこと(3号)。
- 債務者などが自宅や勤務先などから退去するよう意思を示されても、それに応じないこと(4号)。
- 債務者の借金の状況や私生活に関することを、第三者に知らせること(5号)。
- 債務者に対し、第三者からの借金によって弁済することを要求すること(6号)。
- 債務者以外の人に債務弁済を要求すること、あるいは債務者の居所や連絡先を教えるなど、取り立てへの協力を求めること(7号)。
- 弁護士から受任通知(弁護士が債務者の代理人に就任した通知のこと)が届いたのにもかかわらず、債務者本人に取り立てを行うこと(9号)。
-
(2)出資法違反
業としての貸金業者は、出資法第5条2項の規定により、年20%を超える金利の契約を締結してはならないとされています。これに違反すると、5年以下の懲役もしくは1千万円以下の罰金が科されます。
さらに、年109.5%(うるう年は109.8%、1日あたり0.3%)を超える金利で契約を締結していた場合は、10年以下の懲役もしくは3千万円以下の罰金が科されます。なお、貸金業者ではない立場(業としてお金を貸した場合ではない)でお金を貸していた場合でも、年109.5%(うるう年は109.8%、1日あたり0.3%)を超える契約を行っていた場合は、5年以下の懲役もしくは1千万円以下の罰金が科されます。
なお、上記の罰金が法人に対して科される場合、最高で1億円以下の罰金となります(9条1項)。 -
(3)組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(組織犯罪処罰法)違反
闇金で得た収益は、その組織あるいは構成員と別名義の預金口座に隠されていることが多いようです。これは、犯罪収益移転防止法などの関連で、闇金という非合法組織や構成員は合法的に預金口座を持つことができないためです。
もし、闇金が非合法な手段で得た資金を名義の異なる口座に隠していた場合は、組織犯罪処罰法(組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律)第10条1項の規定により5年以下の懲役もしくは300万円以下または併科となります。
後編では、闇金容疑で逮捕された後の流れと、弁護士を依頼するメリットについて、堺オフィスの弁護士が解説します。
>後編はこちら
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています