銃刀法違反になるのは刃渡り何センチから? 所持が認められる理由とは
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平成30年8月、トークショー会場でナイフを所持していたとして、堺市の男性が銃刀法違反の容疑で現行犯逮捕された事件が報道されました。たとえ、他者に加害する目的ではなかったとしても、銃や刀剣、その他の刃物などを許可や理由なく所持・携帯していると、銃刀法違反として逮捕される可能性があります。
本コラムでは、どのような刃物などを所持していると捕まるおそれがあるのか、また銃刀法違反で逮捕された場合どうなるのかについて、堺オフィスの弁護士が解説します。
1、銃刀法とその違反
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(1)銃刀法とは
銃刀法の正式名称は「銃砲刀剣類所持等取締法」です。銃砲や刀剣類などの所持、使用に関する危害を予防するうえで必要な規制が定められています。
類型的に危険な道具の取り扱いを制限することで人々の安全を保障するための法律であり、所持・使用だけではなく、輸入や譲り渡し・譲り受け、貸し付け・借り受けも規制されています。加えて、資格や講習会、保管、登録といった事項についても幅広く定めがあります。
銃刀法においては、まず「銃砲」と「刀剣類」の定義が置かれ、例外的に定める場合を除いてそれらの所持や使用などを原則禁ずるという仕組みになっています。そこで、銃砲・刀剣類とはそれぞれ何を指すのかを確認しておきましょう。 -
(2)銃砲の定義
銃砲とは、けん銃、小銃、機関銃、砲、猟銃、その他金属性弾丸の発射機能を持つ装薬銃砲、そして空気銃を指します(銃刀法第2条第1項)。
おもちゃのモデルガンは、火薬を用いて金属の弾丸を発射できるような改造でもしない限り、銃刀法に言う「銃砲」に当たることはありません。
また、エアガンについては「空気銃」に該当しそうですが、もう少し細かい定めがあります。空気銃とは「圧縮した気体を使用して弾丸を発射する機能を有する銃」であり、「弾丸の運動エネルギーの値が、人の生命に危険を及ぼし得るもの」を指します。つまり、人を殺傷し得るほどの威力を持つエアガンでなければ、「空気銃」に該当しません。結局、市販のエアガンを改造することなく所持使用している場合には問題はありません。 -
(3)刀剣類の定義
刀剣類とは、刃渡り15センチメートル以上の刀、やり、なぎなた、刃渡り5.5センチメートル以上の剣、あいくち、45度以上に自動的に開刃する装置を有する飛び出しナイフを指します。また、刃渡り5.5センチメートル以下の飛び出しナイフのうち、開刃した刃体をさやと直線に固定させる装置を有せず、刃先が直線でみねの先端部が丸みを帯び、みねのうえの切先から直線で1センチメートルの点と切先とを結ぶ線が刃先の線に対して60度以上の角度で交わるものは除外されます(銃刀法第2条第2項)。
2、銃刀法違反となる基準
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(1)銃砲に関して
銃刀法第3条第1項各号に列挙された事由に該当しない限り、銃砲の所持は原則として禁じられています。例外的な事由として、警察官が職務のために所持する場合や、射撃練習場の教官が所持するような場合などでは所持が認められます。
また、銃砲そのものだけではなく、けん銃部品の所持(第3条の2)やけん銃実包の所持(第3条の3)も禁止対象とされています。所持以外には、けん銃・けん銃部品・けん銃実包などの輸入(第3条の4、5、6)、譲り渡しや貸し付け(第3条の7、8、9)、譲り受けや借り受け(第3条の10、11、12)、法令に基づいた職務執行以外での発射(第3条の13)も禁じられています。 -
(2)刀剣類に関して
刀剣類もまた、銃刀法第3条第1項各号に列挙された事由に該当しない限り、原則、所持自体が禁じられています。例外的な事由として、公務員が職務のために所持する場合や、法定の許可を受けた場合は処罰の対象外とされています。
なお、刃物については、銃刀法第2条第2項で定義された「刀剣類」とは別に規制があります。すなわち、何人も、業務その他正当な理由による場合を除いては、刃体の長さが6センチメートルをこえる刃物を携帯してはならないとされているのです。ただし、刃体の長さが8センチメートル以下のはさみ、折りたたみ式のナイフ、これら以外に政令で定める種類または形状の刃物については、この限りでないとも定められています(銃刀法第22条)。
そもそも、刀剣類で「刃渡り5.5センチメートル以上の剣」の所持が禁じられている以上、わざわざ区別して「刃体の長さが6センチメートルをこえる刃物」を禁じる必要性があるのか、と疑問に思われるかもしれません。これは、「剣」と「刃物」の違いに基づきます。剣は反りのないもので両刃のものを指し、刃物は人畜を殺傷する能力を持つ片刃または両刃の鋼質性の用具で、刀剣類以外のものを指します。つまり、包丁などは刃物に該当するのです。
なお、刃体の長さが6センチメートル以下であれば法に触れないとは限らず、軽犯罪法第1条第2号では、正当な理由なく刃物を隠して携帯する行為も処罰対象となることに注意が必要です。 -
(3)銃刀法違反となるケース
ここまでの定義を踏まえたうえで、銃刀法違反となるケースは、以下のようなものが考えられます。
- 護身を目的として刃体が6センチメートルを超過する刃物を所持する。
- コスプレ目的で模造刀を所持(第22条の4)する。
もちろん、所持に正当な理由があれば処罰はされません。しかし、護身やコスプレを法律上の正当な理由としてしまうと、いくらでも言い逃れができることとなってしまうため、認められない可能性が高いでしょう。
他方で、料理人が仕事で使う包丁を持ち歩くようなケースでは、「業務」と言えるため、銃刀法違反には当たりません。ただし、職務質問を受けた場合などは、自らが料理人だと示せるようにしておくほうが確実でしょう。
3、銃刀法違反の罰則
銃刀法違反の罰則は、それぞれ何を所持・使用していたかによって異なります。ここでは主な罰則について確認します。
●けん銃・猟銃の所持
けん銃所持の罪は、所持数により異なります。1丁の場合は1年以上10年以下の懲役、2丁以上の場合は1年以上15年以下の懲役と重くなります(銃刀法第31条の3)。
猟銃所持の罪は、5年以下の懲役または100万円以下の罰金です(銃刀法第31条の11)。
●けん銃・猟銃以外の銃砲・刀剣類の所持
けん銃・猟銃以外の銃砲や刀剣を所持する罪は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金です(銃刀法第31条の16)。
●刃物・模造刀の携帯
刃物携帯の罪は、2年以下の懲役または30万円以下の罰金です(銃刀法第31の18)。
また、模造刀携帯の罪は、20万円以下の罰金です(銃刀法第35条)。
4、銃刀法違反で逮捕されたら
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(1)逮捕後の流れ
銃刀法違反で逮捕されると、48時間を上限として警察での取り調べが始まり、制限時間内に検察に事件や身柄が送られます(送致)。送致を受けた検察庁では24時間を上限とする取り調べが行われ、起訴・不起訴が判断されます。 取り調べが終了しない場合、延長も含めて最長20日間の勾留がなされます。起訴されると刑事裁判へ移り、有罪か無罪かの判断が下されます。
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(2)逮捕された場合の対処法
刃物の単純な所持や携帯であれば、通常はそこまで大事にはなりません。ただし、取り調べに対しては真摯に反省し、素直に受け答えることが大事です。場合によっては、逮捕という身柄拘束の措置を受けずに、在宅事件扱いとなる可能性が出てくるでしょう。在宅事件扱いになれば、仕事や学校を休むことなく、取り調べを受けられるようになります。早期の釈放によって会社や学校などへの影響を最小限に抑えたい方は、弁護士にご相談ください。
5、まとめ
今回は銃刀法について、所持などが禁じられる銃砲や刀剣類の定義、罰則などについて解説しました。特にナイフ類は、キャンプを始めとするアウトドアの愛好家であれば、所持・携帯をしていても珍しくありません。しかし、業務などの正当な理由を説明できない場合、職務質問で見つかれば銃刀法違反の現行犯として逮捕される可能性があります。
銃刀法違反で逮捕されてしまったときはベリーベスト法律事務所・堺オフィスの弁護士にご相談ください。早期に身柄の解放を目指し、迅速丁寧に対応し、不当に重い罪が科されないように弁護活動を行います。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています