【前編】家族が逮捕されてしまった! 面会について知っておくべきことは?

2019年08月14日
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【前編】家族が逮捕されてしまった! 面会について知っておくべきことは?

堺市が公表している統計データによりますと、市内における平成29年の犯罪認知件数は8659件、検挙件数は2208件でした。検挙とは、実際に警察が事件化して被疑者を特定して取り調べなどを行うことを指します。

家族が逮捕されてしまったらどうなるのかについてイメージできるでしょうか? 実際にご家族が逮捕されてしまったケースでは、まずは面会することを目指す方が多いようです。そこで、逮捕されたご家族との面会について知っておくべきことについて、ベリーベスト法律事務所 堺オフィスの弁護士が解説します。

1、逮捕とは?

逮捕とは、捜査機関などが強制的に被疑者を身体的に拘束することです。刑事訴訟法第199条1項によりますと、検察や警察は「被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるとき」に逮捕ができると定めています。かなり抽象的ですが、つまり、逮捕には理由(犯罪の嫌疑)が必要なのです。

逮捕には「通常逮捕」「緊急逮捕」「現行犯逮捕」の3種類があります。ご家族が逮捕されたらその理由(どのような行為をしたと疑われて逮捕されているのか、罪名は何か)をしっかり確認するとともに、逮捕の種類についても確認してください。もしかしたら、当該逮捕が違法なこともありえます。

  1. (1)通常逮捕

    通常逮捕はもっとも件数が多い逮捕の方法で、裁判官が発付する逮捕状に基づき犯行の後日逮捕される方法です。逮捕状は検察や警察から請求を受けた裁判官が発付します。裁判官は、刑事訴訟法199条2項、刑事訴訟規則第143条の3に基づき、逮捕状を発付するかどうか判断します。

    具体的な判断要素は以下のとおりです。

    • 嫌疑の相当性の有無(罪を犯したと疑うに足りるある程度の証拠があること)
    • 被疑者が逃亡するおそれの有無
    • 被疑者が罪証を隠滅するおそれの有無
    • 被疑者の年齢および境遇
    • 犯罪の軽重および態様
    • その他の事情
  2. (2)緊急逮捕

    緊急逮捕は、刑事訴訟法第210条に定められた要件に該当した場合に、裁判官から逮捕状の発付を待たずに被疑者を逮捕することができる逮捕方法です。

    • 死刑または無期、3年以上の懲役、もしくは禁錮にあたる罪を犯したことを疑うに足りる十分な理由が被疑者にあること(犯罪の重大性)
    • 検察や警察が裁判官から逮捕状の発行を待っていられないほど、緊急性がある事件であること(逮捕の緊急性)


    緊急逮捕の場合でも、捜査機関は身体拘束完遂後に直ちに裁判官に逮捕状を求める手続きをしなければなりません。緊急逮捕されたとしても、それが冤罪である場合や上述した刑事訴訟規則第143条の3に定めた逮捕の必要性に該当しないと裁判官が判断した場合は、裁判官は逮捕状を発付せず、釈放となります。

  3. (3)現行犯逮捕

    現在進行形で犯罪行為をしている、あるいは犯罪行為が終わってから間もないと認められる場合は、逮捕状なしに犯人を逮捕することができます(刑事訴訟法第212条、第213条)。これを現行犯逮捕といいます。

2、逮捕されたあとの流れは?

逮捕されると、まずは警察の留置場(代用監獄)もしくは拘置所で身柄を拘束されることになります。

  1. (1)起訴されるまでの流れ

    逮捕されたあと、48時間以内に事件を検察官へ送致されなければ釈放となります。嫌疑が晴れず、送致が必要となれば検察官に送致されることになります。送致を受けた検察官は24時間以内に引き続き取り調べなど必要な捜査を行い、勾留(10日間の身柄拘束)が必要か否かを判断します。

    検察官の判断次第では、その後の起訴の有無に関係なく、「在宅事件扱い」としてこの時点で釈放されることもありえます。在宅事件扱いとなれば、呼び出しに応じて取り調べを受けることになります。

    しかし、勾留が相当と検察官が判断し裁判官が認めた場合は引き続き10日間勾留されることになります。検察官の判断次第では、勾留期間がさらに10日間も延長されることがあるでしょう。つまり、逮捕されてから起訴されるまでは最長で23日間も身柄を拘束され続けることがあるのです。

  2. (2)起訴されたあとの流れ

    勾留期間が満期になるまで、もしくは在宅事件扱いのときは取り調べが終わり次第、検察官は被疑者に対する起訴または不起訴の処分を決定します。起訴猶予または不起訴処分が相当と判断されれば釈放され、前科が付くことはありません。

    起訴されれば被疑者から被告人となり、刑事裁判にかけられることになります。公判請求の形で起訴されれば、裁判が始まるまでは、約1ヶ月以上はかかるでしょう。略式請求の場合は、法廷が開かれることもなく、書類手続のみの裁判となるため早期に処罰が決定し、釈放となります。

    公判となった場合、第一審は、地方裁判所で行われます。第一審の判決が出るまでは、数ヶ月かかることもあります。もし第一審の判決に納得がいかない場合は高等裁判所へ不服申し立てをし(控訴)、高等裁判所の判決に納得がいかない場合は最高裁判所へ不服申し立てをする(上告)ことになります。つまり、判決が確定するまでさらに時間がかかることになるのです。

    日本における刑事裁判では、起訴されてしまうと非常に高い確率で有罪となります。有罪判決が確定すれば、前科がつきます。そして、懲役または禁錮の実刑判決となった場合は、刑期が満了するまで家族のもとに戻ることができません。

3、逮捕されたあとの面会は?

逮捕されたあと、身柄の拘束を受けている間、面会を制限されることがあります。

  1. (1)逮捕直後は面会できない?

    逮捕されたあと送致され、少なくとも勾留が決定する72時間が経過するまでは、たとえご家族であろうと被疑者に面会することができません。差し入れも同様です。

  2. (2)勾留後も面会できないことも?

    身体拘束が逮捕から勾留に切り替わった後も、逮捕されていない共犯者と口裏合わせするおそれがある、容疑を否認しているなどの場合は「接見禁止」の処分が下されることがあり、この場合は引き続き面会や差し入れができないことがあります。

  3. (3)面会には制限が多い

    逮捕されてから72時間が経過し、かつ接見禁止が付けられていなければ被疑者との面会が可能になります。

    面会は、被疑者が勾留されている警察署や拘置所などの窓口に行き、所定の用紙に住所、氏名、被疑者との関係などの所定事項を記入して申し込みます。このとき、身分証明書の提示が求められたり警察官や刑務官から質問を受けたりすることがあります。

    面会は以下のようにさまざまな制約があります(刑事施設により異なります)。

    • 平日のみ
    • 1日1回のみ
    • 面会可能な時間帯は、午前が8時30分から11時、午後が13時から16時(刑事施設により異なります。)
    • 警察官や刑務官の立ち会いがある
    • 面会時間は15分から20分程度
    • 時間内でも面会が打ち切られることがある
    • 一度に面会できる人数は3人まで


    ここまで、逮捕についての概要や主な流れについて解説しました。後編では、では「家族としてどうすべきか」、「どうしたらサポートできるのか」について、堺オフィスの弁護士が解説します。
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