事故証明を後日取得することはできる? 交通事故被害者が知るべきこと
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大阪府交通安全協会が公表している大阪の交通白書によると、令和4年中に大阪府下で発生した交通事故の件数は2万5509件で、前年よりも121件増加しています。
交通事故が発生すると、公的に証明する「交通事故証明書」という書類を受け取ることができます。この交通事故証明書は、自賠責保険会社への損害賠償請求の際に必要になるなど、後日利用する可能性のある書類ですので、交通事故が発生した場合には、発行元である自動車安全運転センターへきちんと届け出ることが大切です。
今回は、交通事故証明書が必要になるケースや後日受け取る場合の方法などについて、ベリーベスト法律事務所 堺オフィスの弁護士が解説します。
1、交通事故の事故証明とは
交通事故の事故証明とはどのようなものなのでしょうか。
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(1)事故証明とは
事故証明とは、正式名称を「交通事故証明書」といい、交通事故が発生したことを公的に証明する書類です。
交通事故証明書には、以下のような内容が記載されています。- 交通事故の発生日時
- 交通事故の発生場所
- 交通事故の当事者に関する事項(住所、氏名、生年月日、車両番号、車種、自賠責保険関係、自賠責保険の証明書番号、事故時の状態)
- 事故類型
- 物件事故、人身事故の別
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(2)事故証明書を取得するには警察への事故の届出が必須
事故証明は、警察から自動車安全運転センターに事故の概要が通知され、自動車安全運転センターにおいて作成する書類です。そのため、事故証明を取得するためには、警察に事故の届出をすることが必要になります。
軽微な事故だからといって、警察に連絡をせずに放置してしまうと、後日、怪我や車の修理が必要になったとしても、事故証明が取得できず、損害賠償請求や保険金請求ができないおそれがあります。
また、交通事故が発生した場合には、道路交通法によって警察への報告が義務付けられています(道路交通法72条1項後段)ので、事故の報告を怠ると、3月以下の懲役または5万円以下の罰金に処せられるおそれもあります(道路交通法119条1項17号)。
そのため、交通事故の被害にあった場合には、必ず、警察に連絡をし、事故の届出を行いましょう。 -
(3)事故証明書の取得のために後日でも早めの届出を
事故直後に警察への連絡ができず、後日になる場合でもなるべく早く届出をするようにしましょう。時間が経過するほど事故の証明や証拠収集が困難になり、事故証明書を発行してもらえないおそれもあります。
後日、損害賠償請求等で事故証明書が必要となり、ご自身での対応が難しくなってしまった場合は、交通事故トラブルの解決実績がある弁護士にご相談ください。
2、事故証明が必要となるケース
事故証明はどのような場面で必要になるのでしょうか。以下では、事故証明が必要となるケースについて説明します。
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(1)自賠責保険会社に被害者請求をするケース
交通事故の損害賠償は、加害者(保険会社)との間で示談が成立した後に支払われるのが一般的です。
しかし、交通事故の被害者は、加害者が加入する自賠責保険会社に対して、損害賠償金を請求することで、示談成立前に損害賠償金の全部または一部をもらうことができます。これを「被害者請求」といいます。被害者請求は、交通事故の被害者が主導で後遺障害等級認定を行う場合にも利用される手続きです。
被害者請求を行う場合には、自賠責保険会社に対して、診断書や診療報酬明細書などの書類の提出が必要になりますが、事故証明書も必要書類のひとつとされています。 -
(2)被害者の任意保険を利用するケース
加害者が無保険であったり、被害者にも過失があったりした場合には、被害者自身の任意保険(人身傷害保険、搭乗者傷害保険、車両保険、無保険車傷害特約など)を利用して、補填(ほてん)を受けるケースがあります。
このような場合には、交通事故が発生したことおよびその当事者であることを自身が加入する任意保険会社に示すために、事故証明が必要になります。 -
(3)労災保険を申請するケース
仕事中や通勤途中で交通事故にあった場合には、労災事故にあたりますので、労働基準監督署から労災認定を受けることができれば、労災保険から補償を受けることができます。
事故証明は、労災申請に必要な書類のひとつとされていますので、労災申請をする場合には、事故証明書の取得が必要になります。 -
(4)交通事故を理由に会社を欠勤するケース
交通事故で怪我をした場合には、怪我の治療のために、仕事を休まなければならないことがあります。このようなケースでは、会社から交通事故の事実確認のために、事故証明の提出が求められることがあります。
会社によって事故証明の要否は、異なりますので、事故で会社を休む際には、会社に確認してみるとよいでしょう。 -
(5)損害賠償請求訴訟を提起するケース
保険会社から納得いく賠償額が提示されないなどの理由で示談交渉が決裂した場合には、裁判所に損害賠償請求訴訟を提起することになります。
裁判所に訴訟提起をする場合には、事故の当事者や内容を証拠によって立証していかなければなりません。そのため、交通事故を客観的に証明する証拠として、事故証明の提出が必要になります。
3、事故証明を後日受け取りたい場合
事故証明が後日必要になった場合には、どのように受け取ればよいのでしょうか。以下では、後日事故証明を受け取る方法について説明します。
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(1)事故証明の申請者
事故証明書を申請することができるのは、以下のような人です。
- 交通事故の加害者
- 交通事故の被害者
- 加害者または被害者から委任を受けた人(親族や弁護士など)
- 加害者および被害者の遺族
- 保険会社
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(2)事故証明の申請方法
事故証明の申請方法には、以下の3つの方法がありますので、都合のよい方法を選択して事故証明の交付申請を行いましょう。なお、事故証明の交付手数料は、いずれの方法であっても1通あたり800円とされています。
① 窓口申請
窓口申請をする場合には、各都道府県に設置されている自動車安全運転センターの窓口において、備え付けの申請用紙に必要事項を記入し、交付手数料を支払い、事故証明の交付申請を行います。
警察から事故の概要がすでに通知されている場合は、原則として即日、事故証明が交付されます。まだ、事故の概要が通知されていない場合には、後日郵送で事故証明が交付されます。
② ゆうちょ銀行・郵便局での申請
事故証明の交付申請は、ゆうちょ銀行・郵便局でも対応しています。ゆうちょ銀行・郵便局で申請をする場合には、証明書申込用紙に必要事項を記入し、交付手数料と払込料金を添えて、事故証明の交付申請を行います。事故証明は、申請から10日程度で指定した住所に郵送されます。
③ オンライン申請
オンライン申請をする場合には、自動車安全運転センターのウェブサイトの専用ページから事故証明の発行申請を行います。オンライン申請をすることができるのは、交通事故の当事者に限られますので注意が必要です。オンライン申請では、手数料(交付手数料に加えて払込手数料もかかります。)の支払いから10日程度で指定した住所に事故証明が郵送されます。(3)事故証明の申請期限
事故証明の申請には、以下のような期限が設けられています。
- 人身事故:事故発生から5年
- 物損事故:事故発生から3年
なお、申請期限を経過してしまうと、原則として、事故証明を取得することができなくなってしまいますので注意が必要です。
また、事故証明書を発行するための警察への届出は事故直後が望ましいとされています。後日になってしまうと事故の証明が難しくなるため、なるべく早期に警察に届出をした上で、事故証明の発行申請をすることをおすすめします。
4、交通事故は弁護士へ相談を
交通事故の被害に遭われた方は、弁護士に相談することをおすすめします。
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(1)保険会社との対応を任せることができる
交通事故の被害に遭うと、怪我の治療のために病院に通院しなければなりません。仕事や家事だけでも精一杯の状況で、治療だけでなく保険会社との対応もしなければならないといるのは被害者にとって大きな負担といえます。
弁護士に依頼をすれば、保険会社との対応をすべて任せることができます。被害者としては、治療に専念することができるため、精神的なストレスも大幅に軽減できるでしょう。 -
(2)裁判所基準での慰謝料請求が可能
慰謝料の算定基準には、自賠責保険基準、任意保険基準、裁判所基準(弁護士基準)の3つがあります。慰謝料の金額としては、自賠責保険基準での慰謝料が最も低く、裁判所基準での慰謝料が最も高い金額になるといわれています。
弁護士が被害者の代理人として示談交渉をする場合には、被害者にとって有利な裁判所基準で慰謝料を請求します。被害者自身で保険会社と示談交渉をしても、基本的に裁判所基準での慰謝料を認めてもらうことはできません。
少しでも多くの慰謝料を獲得したいという場合には、弁護士への依頼が不可欠となります。 -
(3)自賠責保険会社への被害者請求も対応可能
被害者に後遺障害が生じた場合には、後遺障害等級認定を受けることで、後遺障害等級に応じた後遺障害慰謝料や逸失利益の支払いを受けることができます。
後遺障害の認定を受ける方法には、被害者が主導で行う「被害者請求」と保険会社が主導で行う「事前認定」という2つの方法があります。有利な認定を受けるためには、自分で必要な資料を準備できる被害者請求がおすすめですが、集めなければならない書類も多いため、被害者だけでは負担の大きい手続きといえます。
弁護士に依頼をすれば、被害者請求の手続きも任せることができますので、負担の大きい書類の収集や作成なども対応してもらうことができます。
5、まとめ
事故証明は、交通事故の当事者や内容を公的に証明することができる書類です。後日、自賠責保険会社に被害者請求をする場合やご自身の任意保険会社に保険金を請求する場合などに必要になりますので、交通事故の被害に遭った場合には、後日になってしまったとしても、必ず警察に届け出るようにしましょう。
交通事故の損害賠償請求にあたっては、弁護士のサポートが重要になります。早めに相談をすることでより手厚いサポートを受けることができますので、交通事故被害の損害賠償請求をご検討の方は、まずはベリーベスト法律事務所 堺オフィスまでご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています