どうやって離婚する? モラハラ夫と離婚して、かつ高額な慰謝料請求を獲得する方法
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夫が妻に対し暴力を振るうというDVだけでなく、家庭内のモラハラに苦しんでいる女性はたくさんいます。
そして、苦しみの中で考えるのが、離婚についてです。
今回は、モラハラの定義からモラハラ夫と離婚する方法、高額な慰謝料を請求する方法までを、弁護士が詳しく解説いたします。
1、どんな言動が「モラハラ」になるの?
実は、近年「モラハラ」による離婚は増加傾向にあります。2013年の統計によると、モラハラを原因とする妻側からの離婚申し立ては25%程度ということがわかっています。しかし、実際はモラハラに気づいていない被害者も多く、気づかないまま長期間辛い想いを我慢している方も多くいらっしゃいます。そこで、まずはモラハラの定義について理解していきましょう。
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(1)「モラハラ」とは?
では、「モラハラ」とは一体どんな行為を指すのでしょうか。
「モラハラ」とは、正式にはモラルハラスメントといいます。家庭内や恋人関係にある男女の仲で身体的に暴力を加えることをDV(ドメスティック・バイオレンス)といいますが、モラルハラスメントでは身体的暴力は含まれていません。基本的には、精神的な暴力となります。配偶者や恋人など親密な関係にある人に対して、言葉や態度で絶対的に正しい存在だと思わせることにより相手を精神的に支配します。
もっとも、法律上ははっきりとした定義は定まっていません。セクシャルハラスメントについては、現在では一般的な用語となり、法律上も一定程度定義され使用されていますが、モラルハラスメントについては確定された定義はできていないというのが現状です。
現実に、被害者自身もモラハラを受けていると気づかないケースが多く、深刻なうつ病になるまで離婚に至らない場合もあります。気づかないのは、被害者だけでなく加害者も同様です。自分がモラハラをしていると気づいてすらいないケースも多々あるのです。
モラハラをする夫の特徴としては、自己愛が高いことが挙げられます。家の中では、妻に厳しくあたり、高いモラル(夫の常識)を要求しますが、外では人に好かれる「良い人」という印象を与えています。そのため、周囲からみてもモラハラがある家庭とは気づかれず、妻が周囲に相談しても「あんなに優しい人が?」という意見に苦しめられることもあります。
「付き合った当初はすごく優しかった」、「結婚してから変わった」ということも少なくありません。モラハラ夫は、仕事などでストレスを抱えていることが多く、育った環境も影響しているといわれています。親から過剰な愛情を与えられていたり、逆に愛情を与えてもらえなかったりという家庭環境が影響しています。
このように、「モラハラ」とは、精神的暴力のことを指します。内と外で夫の顔が違うということが、モラハラに気づくポイントになります。 -
(2)「モラハラ」にあたるのはどんな行為?
では、どんな行動が「モラハラ」になるのでしょうか。
たとえば、このような行動はモラハラとして注意してください。- 生活費を家庭に一切入れない(経済的な虐待)
- 「誰のおかげで生活できていると思っているんだ」と日常的に吐く
- 何か気に入らないことがあると、大きな物音を立てて脅す、舌打ちをする
- 口論や喧嘩をした後、何ヶ月も無視する
- 何かあると「全部お前が悪い」と責任転嫁をしてくる
- 周囲に「妻は何も家事をやらない」と平気で嘘をつく
この中でも一番、多いのが「妻に対し暴言を吐く」という行為です。
モラハラ夫は、些細なミスでさえも許さず、「お前はバカなのか?」という直接的な暴言を吐きます。これ以外にも、「生きている意味はあるのか?」「俺がいないとお前は生きている価値なんてない」など、自分が優位に立つような発言を繰り返します。
また、「相手を見下したり脅したりする態度」をとることもあります。
何もないのに、舌打ちをしたり、大きな音をたててドアを閉めたりして妻を精神的に追い詰めます。嫌なことがあれば妻に当たり、態度で相手を脅すのです。「そんなこともできないの?」というように、妻を見下すような発言もします。
そして、直接的ではないものとしては、「無視」もモラハラの言動に含まれます。
「喧嘩後に、一切話をしない」という夫婦は多くいらっしゃると思います。しかし、理由もなく、「不快な顔だけを見せ理由を話さない」ということが数ヶ月続くケースがあります。「話しかけても機嫌が悪ければ無視される」という行動も何ヶ月も続けば、モラハラ行為となります。
最後に、夫婦間で一番大きな問題となるのが「経済的に支配する」という行為です。
生活費を入れない、ギャンブルなどで借金を作り妻に支払わせるなど、妻を経済的に支配し、困窮させることで精神的にダメージを与えます。また、専業主婦を強要し、経済的に離婚が不可能なようにした上で「お前は俺がいないと生きていけない」と繰り返し指摘します。
以上が代表的なモラハラ行為となります。すべてに該当する必要はありません。どれか1つでも婚姻期間中に継続して繰り返されるようなことがあれば、「モラハラ」の可能性があります。これ以外にも妻の趣味を批判したり嘲ったり、妻のミスすべてを事細かに指摘するようであれば、「モラハラ」に該当する可能性が高いといえるでしょう。 -
(3)「モラハラ」の証拠になるものは?
では、「モラハラ」として離婚調停や離婚裁判で認定されるためには、どんな証拠が必要になるのでしょうか。
離婚調停や離婚裁判になった場合、調停委員や裁判官に対し「モラハラ行為があったこと」が客観的にわかる証拠が必要になります。代表例としては、以下のようなものが証拠になります。- 暴言時の録音・録画テープ
- 言葉の暴力などを受けたことを記録した日記
- 友人や両親にモラハラを相談したLINEやメールの内容
- 夫に「やめてほしい」ことを要求した内容を記した手紙、メール、電話などの録音記録
自分自身が「モラハラを受けているかもしれない…」と気づいたとき、出来る限り上記のような客観的証拠を残すよう努めてください。
日記を記録する場合、具体的に、
① どのような状況で
② どんな暴言があり
③ どの程度精神的に被害を受けたのか
を記録するようにしましょう。これまで日記などを継続的に書いてきた方は、昔の日記を見返し、証拠になるものはないか見てみましょう。
2、「モラハラ」夫と離婚したい。うまく離婚する方法は?
「モラハラ」夫と離婚したい。しかし、精神的に支配され、うまく切り出せない方もいらっしゃるでしょう。以下では、モラハラ夫と離婚する方法について解説します。
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(1)夫に離婚の意思を伝えること
では、最初にすべきことはどんなことでしょうか。
まずすべきことは、夫と話し合うことです。「離婚をしたい」という意思をしっかりと伝えることが大切です。精神的に支配されている場合、「言い返せない」「切り出せない」「聞いてくれない」「無視される」などの状況があると思います。しかし、そのような状況を打開しなければ、幸せになることは難しいのです。しっかりと自分の意思を伝えることで、将来の幸せにつながると考えましょう。
離婚したいことを伝えるときは、きっぱりとした口調で伝えてください。「離婚を考えている」という表現をすると、相手は口でうまく丸め込もうとします。対策としては、「私の意思は、あなた次第では変わらない」という強い想いを伝えることが効果的です。 -
(2)協議離婚を検討する
離婚の話し合いが、うまくいかなった場合、次に検討すべきは「協議離婚」です。日本では、2人だけの話し合いで離婚が成立しない場合でも、協議離婚で9割程度の離婚が成立します。もっとも、これは一般的な離婚の場合です。
モラハラがある場合は、相手が協議離婚での話し合いにも応じてくれないことがあります。モラハラ夫の場合、離婚の意思を伝えると逆上し、ひどい暴言を吐いたりすることもあり危険です。精神的に危険を感じたら、一旦引き下がってください。
協議離婚の段階でも、冷静に話ができない状況が続く場合は、この次の段階に進んだ方が良いでしょう。 -
(3)調停離婚を経て、裁判離婚に
協議離婚がうまくいかなかったケースでは、調停離婚を検討します。
調停離婚とは、調停委員が介在し、家庭裁判所の調停手続きを利用して離婚についての問題を解決する手続きです。基本的には、調停委員を介して、離婚が必要かどうかを検討していくことになります。夫と直接やり取りをしなくても良いため、離婚の話がスムーズに進むことを期待できます。モラハラが原因の場合は、「モラハラ行為があった」ということを調停委員に具体的に説明していく必要があります。
仮に、調停でも離婚が成立しなかった場合は、裁判離婚になります。
基本的に、暴言が一般の夫婦と同レベルであり、1週間に1回暴言を吐く程度であれば、離婚理由として認定されるのは厳しいでしょう。また、妻が夫に精神的に支配されておらず、しっかりと反論できている場合も同様です。対等な関係があると考えられ、ただの夫婦喧嘩と解釈されてしまいます。この場合も、離婚理由として判断されることは難しいでしょう。
このように、モラハラ夫と離婚するためには、法的手続きを利用する方法もあります。弁護士など専門家の力を借りると、離婚話もスムーズに進むでしょう。
3、「モラハラ」で高額な慰謝料請求をする方法は?
「モラハラが原因でうつ病になってしまった、精神的に傷ついた」というケースでは、離婚だけでなく、慰謝料も請求したいという気持ちもあるでしょう。では、高額な慰謝料を請求するためにはどうしたら良いのでしょうか。
一般的に、モラハラが理由の慰謝料は、数万円~数百万円程度が相場といわれています。もっとも、実際の慰謝料の額は個別具体的事情によって変わってきます。
具体的には、
② モラハラ行為による妻(被害者)の精神疾患の有無
③ 妻(被害者)の収入・資産・年齢
④ 婚姻期間
⑤ 子どもの有無
⑥ 妻(被害者)の落ち度
などが考慮要素となります。
できるだけ高額な慰謝料を請求するためには、モラハラの行為態様が酷く、継続的で何年も続くことや被害が精神疾患を罹患するなど、精神的ダメージが大きいことなどを主張することが必要です。また、妻の収入が低く、資産状況がよくないことなども影響します。
このように、慰謝料をできるだけ多く請求したいケースでは、さまざまな主張が必要となります。法律に詳しくない方が1人で主張していくことは難しいため、弁護士に相談し戦略を練った上で裁判などに臨むことをおすすめします。
4、離婚調停&離婚裁判の流れ
次は、離婚調停や離婚裁判の流れについて見ていきましょう。
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(1)離婚調停の流れ
では、離婚調停はどのような流れで進んでいくのでしょうか。
まず、申立書と戸籍謄本(戸籍謄本全部事項)の2つの必要書類を用意し、相手方の住所地(原則)にある家庭裁判所に離婚調停を申し立てます。
次に、申立書が受理されると、家庭裁判所から改めて「呼出し状」が夫婦それぞれに送付されます。これには、調停の呼び出し期日(約1ヶ月後以降の期日)が記載されているので、この日に家庭裁判所に出向くことになります。
調停では、調停室にて夫婦別々に調停委員に対し話をすることになります。調停での聴取は2回繰り返されます。1度目の内容としては、申し立ての経緯やそれぞれの離婚に対する主張についてとなります。夫婦それぞれから話を聞きおわったら、相手の主張を踏まえた上で、2回目の呼び出しを受けることになります。各聴取の時間は30分程度です。1回の調停全体の時間としては、2時間〜3時間程度となるでしょう。
1回目の調停では、2回目の調停時に必要な書類を用意するように促されることもあります。話し合いを元に一定の項目についての主張をまとめてくるように課題が出されることもあります。
調停開始から終了までの期間は、個別ケースによって異なります。ですが、平均して、2ヶ月から6ヶ月程度となります。
以上が、一般的な離婚調停の流れとなります。離婚調停では、必ず離婚できるわけではありません。もっとも、裁判離婚になれば離婚まで時間がかかってしまうため、できる限り調停離婚で早期離婚を目指すべきだといえるでしょう。 -
(2)離婚裁判の流れ
では、離婚裁判はどのように進んでいくのでしょうか。
まず、離婚裁判を開始するには条件があります。それは、「離婚調停が不成立であったこと」です。そのため、離婚調停を先に行わなければいけません。
調停不成立になった後は、必要書類を準備し、管轄裁判所に訴状を提出します。相手方が答弁書を作成・提出後、第1回の口頭弁論が開かれることになります。ここでは、基本的に法律上の離婚事由があるかについて審理されることになります。モラハラの場合、法律上の離婚事由として認められにくいため、別居期間などの主張も行われるでしょう。2回目以降は文書ベースでのやりとりとなります。その後、証拠調べなどが行われ、最終の口頭弁論が行われ、判決が下されます。
判決に不服がある場合は、2週間以内に高等裁判所へ控訴を行うことになります。不服がない場合は、離婚に関する判決が確定します。裁判になると、半年から1年くらいかかることもあります。
以上が、一般的な離婚裁判の流れとなります。離婚裁判は長期になってしまうと、精神的にも身体的にも大変です。判決が下される以外にも、和解という選択もあります。担当弁護士と相談して最適な条件での決着を検討してください。
5、「モラハラ」離婚を弁護士に依頼すべきメリットとは?
「なんとしてでもモラハラ夫と離婚したい」。そうお考えの方は、弁護士への相談をおすすめします。弁護士に相談することには、下記のようなメリットがあります。
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(1)早く離婚が成立する可能性がある
まず、「早期に離婚が成立する可能性が高くなること」です。
2人の間の話し合いでまとまらない場合、第三者に介入してもらうことが早期離婚への近道となります。法律の専門家であれば安心して任せることができるはずです。また、あなたにとってより良い条件で離婚できるようにサポートすることができます。離婚する上での法律上の面倒な手続きも、弁護士に任せることで解決できます。 -
(2)高額な慰謝料請求が望める
また、「高額な慰謝料の請求が望めること」もメリットです。
自分1人で損害賠償請求をすることは、事実上困難です。仮に話し合いでまとまったとしても、相場よりも低い額になってしまうかもしれません。多くの損害賠償が請求できれば、その分弁護士費用をまかなうこともできます。
このように、弁護士に依頼することにはメリットがあります。モラハラ夫にお悩みで、早期の離婚をお望みの方は、ぜひ法律事務所にご相談ください。協議離婚から裁判離婚まで全力でサポートするとともに、できる限り早期に離婚が成立するようお手伝いいたします。
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