年収600万円の夫と離婚! 養育費の相場や算出方法とは
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堺市で、離婚に悩んでいる女性は少なくありません。大阪府が公表している「平成30年人口動態調査結果 離婚件数、届出月・市町村別」によると、堺市における同年度の離婚件数は1514件でした。また、堺市の離婚件数の多さは、大阪市(5772件)に次いで府内第2位です。離婚原因の内訳は不明ですが、子連れ離婚の数も相当数が含まれていると考えられます。
子どものいる女性が離婚を検討する場合、まず気になるのは親権と養育費のことではないでしょうか。たとえば、夫の年収が600万円である場合、養育費はどれぐらい請求できるのか? また、育費を確実に受け取るためには何をすべきなのか? さまざまな疑問と不安でお悩みの方もいらっしゃるでしょう。
本コラムでは、離婚問題の解決実績が豊富な堺オフィスの弁護士が、夫の年収が600万円だったケースを例に、養育費について解説します。
1、養育費とは
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(1)子どもが経済的にひとり立ちするまでの生活費・教育費
養育費は、未成熟の子どもが経済的にひとり立ちするまでにかかる子育て費用の総称です。具体的には、教育費・生活費・医療費などが含まれています。
養育費は、離婚後に親権者となった側の親に対して、もう片方の親が毎月一定額を支払います。養育費の金額は原則として離婚時に夫婦間の話し合いにより決定しますが、支払い義務者の年収が多いほど、また受け取る側の年収が少ないほど、養育費の金額は高くなる傾向があります。
もしも離婚時に「養育費はもらわなくて結構」などと言ったり、養育費について取り決めしないまま離婚してしまったとしても、後から請求することが可能です。養育費を受け取るのは子どもの権利であり、親が勝手にその権利を奪うことはできないからです。
万が一このような約束をしてしまった場合には、早めに弁護士に相談しましょう。 -
(2)大学以降の学費は父親の学歴・社会的地位も参考に
では、子どもが経済的にひとり立ちする時が具体的にいつなのかというと、その基準は各家庭によって異なります。高校卒業後に就職する人もいれば、大学・大学院まで進学する人もいます。中には浪人・留学などのケースもあるでしょう。
一般的には、養育費支払い義務者の学歴や社会的地位、経済状況が参考にされる傾向があります。支払い義務者が高学歴・高収入であれば、子どもにも自身と同じ水準の教育を与える義務があると判断されるでしょう。
なお、民法第877条では、実の親は未成熟子に対して扶養義務を負うと定められています。実の親子間での扶養義務とは、「自分と同レベルの生活をさせてあげるべきだ」という生活保持義務を意味しています。
また、最近の裁判例では、社会情勢なども考慮して、子ども自身が大学進学を希望している場合は大学卒業時まで養育費を請求できると判断される傾向にあります。
ただし、医学部・歯学部など通常より高額な学費を要する進学のケースでは、学費全額の支払い請求が認められない可能性もあります。適正な養育費がいくらなのかわからない場合は、弁護士に相談することをおすすめします。 -
(3)両親の経済状況の変化により養育費が増減額されることも
離婚時に取り決めをした養育費は、離婚後の生活状況の変化に応じて増減額されることもあります。たとえば、支払い義務者の失業・収入減、受け取る側の収入増、双方の再婚、子どもの病気・ケガなどの事情が考慮されます。
ただし、離婚時に専業主婦だった女性が今後働くことを想定して養育費の金額を決定していた場合には、女性の年収が離婚時より増えたとしても養育費の減額が認められる可能性が低いでしょう。
養育費の増減額の手続きは、管轄の家庭裁判所に調停を申し立てて行います。支払い義務者が独断で振込額を減らすことは、認められていません。
2、養育費の相場の算出方法
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(1)合意できなければ裁判所の“養育費算定表”で算出
養育費の金額は、原則として当事者同士の合意により自由に決めることができます。相場をはるかに上回る金額でも、支払い義務者が納得していれば有効となります。
もしも養育費について話し合いのみで合意できなかった場合は、裁判所が公表している“養育費算定表”に基づいて決定することが一般的です。
“養育費算定表”は、統計資料などを参考に、東京・大阪の家庭裁判所の裁判官で構成される研究チームが作成したもので、現在の社会情勢において適切な養育費の目安を示しています。令和元年12月23日には、これまでの養育費の金額が低すぎたという批判を受けて、より実態に見合う改定標準算定表が発表されました。
この表に“父親の年収・母親の年収・未成熟子の人数と年齢・職業が自営業か会社員か”を当てはめると、毎月の養育費を算定できます。
また、ベリーベスト法律事務所のホームページでは、数値を入力するだけで簡単に“養育費算定表”に基づく養育費を計算できる“養育費計算ツール”を用意しています。
たとえば、下記ケースでは- ● 会社員の父親の年収600万円
- ● 専業主婦の母親の年収0円
- ● 子ども ひとり(3歳)
- 養育費=月約6~8万円
と算出されます。
一方、両親の年収が同じでも子どもの人数と年齢が変わると- ● 会社員の父親の年収600万円
- ● 専業主婦の母親の年収0円
- ● 子ども ふたり(15歳、13歳)
- 養育費=月約12~14万円
と算出されます。
このように、両親の年収が同じであっても、子どもの年齢・人数によって養育費の金額は大きく変わる傾向にあります。 -
(2)養育費算定表以外に考慮される要素
養育費の金額は、算定表のみに当てはめて画一的に決定される訳ではなく、その他さまざまな事情が考慮されています。
たとえば、子どもの障がい・病気等の特別な事情がある場合には、通常よりも多額の養育費の請求が認められる可能性があります。また、障がい・病気など健康上の理由により成人しても自立することが難しいケースでは、通常より養育費の支払期間が長くなることもあります。
具体的にどのくらいの養育費が妥当なのかお悩みの場合は、まずは弁護士までご相談ください。養育費算定表や養育費計算ツールのみではわからない養育費の目安について、アドバイスいたします。
3、養育費を確実に受け取るために
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(1)養育費の受取率は低い
実は、取り決め通りの養育費をきちんと受け取っている人は非常に少ないことをご存じでしょうか。
厚生労働省が発表した『平成28年全国ひとり親世帯等調査』によると、養育費を継続的に受け取っている母子世帯は、24.3%です。また、養育費を受けたことがあるが現在は受け取っていないと回答した母子世帯は、15.5%でした。合計で約75%もの母子世帯が、離婚時に合意した養育費を毎月受け取ることができていないということになります。
慰謝料や財産分与等とは違い、養育費の支払いは10年以上の長期間に及ぶことも少なくありません。そのため、途中で支払い義務者の生活環境や心境に変化が生じ、支払う意欲を失ってしまうこともあります。
しかし、養育費は子どもが健やかに育つために欠かせない、重要なお金です。
養育費を回収するためには、離婚時に以下のような対策を講じておく必要があります。 -
(2)執行認諾文言付き公正証書を作る
離婚時に養育費について合意をしたら、その内容は執行認諾文言付き公正証書に記載しましょう。
執行認諾文言付き公正証書とは、公証役場で公証人と共に作成する公文書であり、「支払いが滞った場合は強制執行されて構いません」という旨の執行認諾文言を記載したものを意味します。
執行認諾文言付き公正証書で約束した養育費の支払い条件を元配偶者が守らなかった場合、相手の給与・預貯金等に強制執行をかけることができます。養育費の場合、裁判所に強制執行を一度申し立てれば、それ以降は毎月給与の2分の1(給与が月66万円以上の場合は、33万円以外の全額)を差し押さえ続けることが可能となります。
また、元配偶者の現在の勤務先・預貯金口座が不明な場合であっても、2020年4月より施行された改正民事執行法に基づき、第三者からの情報取得が可能となりました。勤務先情報については元配偶者の現住所の市区町村役場・年金事務所に、預貯金口座については金融機関の本店に問い合わせることができる可能性があります。さらに、元配偶者が不動産や有価証券を保有している場合は、法務局と証券会社にも財産情報を照会できます。
ただし、元配偶者がまったくの行方不明である場合には、残念ながら上記の制度も利用できないでしょう。 -
(3)協議できない場合は調停・審判へ
養育費の支払い条件について話し合いのみで決定できない場合には、管轄の家庭裁判所に養育費請求調停を申し立てることになります。
調停とは、男女2名の調停委員と裁判官が、夫婦間の話し合いをサポートしてくれる手続きです。相手と直接顔を合わせることなく、調停委員を介して自分の意見を伝えることができる手続きです。通常は、月に約1回のペースで、3回程度行われます。
さまざまな家族間トラブルを見てきた調停委員を味方につけることができれば、調停委員が元配偶者を説得してくれる可能性もあるでしょう。調停には弁護士も同席することが可能です。調停で養育費の主張をしっかり行いたい、有利な条件で進めたいなどの場合は、弁護士に相談することをおすすめします。
なお、調停はあくまでも話し合いの場ですので、夫婦がお互い一歩も譲らなければ、不成立として終了することもあります。調停が不成立となったら、自動的に審判に移行します。
審判は裁判官が決定を下す手続きですが、通常の訴訟よりもスピーディーに進行します。審判の結果にも納得がいかない場合は、2週間以内に不服申し立てをすれば高等裁判所で再審理できる可能性もあります。 -
(4)面会交流は支払い義務者のモチベーションになる
子どもが元配偶者から暴力を受ける危険性があるなどの事情がなければ、面会交流の機会を積極的に設けるほうが、養育費を回収しやすくなる可能性があります。定期的な面会交流を行うことによって親子の絆を再確認でき、養育費支払いのモチベーションにもつながると考えられるからです。
また、忘れてはならないのは、面会交流は子どもの権利であるということです。親権者側の主観的な恨みにより、面会交流を拒絶すべきではないでしょう。
ただし、面会交流がないことや、親子仲が悪いことを理由に養育費の支払いをしなくていいという訳ではありません。大阪高裁平成2年8月7日決定では、養育費支払い義務者である父親と子どもの親子仲が険悪でしたが、大学卒業時までの扶養義務を認める決定を示しています。面会交流は養育費の請求に必須の条件という訳ではなく、あくまでも支払い義務者の感情に訴えかけて自発的な支払いを促すという意味にとどまります。
4、養育費の相談は弁護士へ
弁護士に相談するメリットのひとつ目は、元配偶者との交渉を弁護士が代わりに行ってくれることです。離婚に至った元夫婦は多くの場合確執を抱えており、直接交渉をすることに精神的苦痛を感じることが少なくありません。日頃から交渉に慣れている弁護士を間に挟むことで、冷静かつ建設的な話し合いを期待できます。
ふたつ目のメリットは、公正証書の作成や調停・審判など一般には複雑な手続きを一任できるということです。また、現状についての法律的判断や今後の見通し、調停委員に対する適切な振る舞い方などの具体的なアドバイスも、弁護士から受けることができます。
養育費の取り決めや増額交渉で困ったら、早めに弁護士に相談しましょう。
5、まとめ
養育費は、両親の年収だけでなく、子どもの人数・年齢・健康状態によっても左右されます。また離婚時に決定した養育費は、その後の生活状況の変化によって増減額される可能性もあります。養育費の増額を希望する場合は、家庭裁判所に養育費増額調停を申し立てる必要があります。
また、養育費が止まってしまわないよう、長期間にわたって回収し続けるためには、養育費についての合意内容を執行認諾文言付き公正証書に記載しておくのが有効です。元配偶者が公正証書の作成に協力してくれない、約束通り養育費を支払ってくれないなどの理由でお困りの方は、ひとりで悩まず堺オフィスの弁護士までご相談ください。
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