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不当な養育費不払いには刑事罰? 強制執行の手続きで逃げ得を防ぐには

2021年09月28日
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不当な養育費不払いには刑事罰? 強制執行の手続きで逃げ得を防ぐには

大阪府が公表している「令和元年人口動態調査結果 離婚件数、届出月・市町村別」によると、堺市における同年度の離婚件数は1440件。大阪府内では、第1位の大阪市に次ぐ多さでした。

離婚トラブルではお金の悩みが多くを占めていますが、とりわけ子どものいる人にとって大きな問題が養育費です。なぜなら、統計的にみても養育費の支払いが滞ることは少なくないからです。

では養育費不払いについて、刑事罰などの法的な制裁や強制的に支払わせる方法はあるのでしょうか。ベリーベスト法律事務所 堺オフィスの弁護士が解説します。

1、養育費不払いで刑事罰が科される?

2020年4月に改正民事執行法が施行されました。養育費不払いについても法改正がされ、刑事罰が科されると思われた方もいらっしゃるかもしれません。

しかし養育費不払いの場合にただちに刑事罰が科せられるわけではありません養育費を差し押さえるための“財産開示手続”において債務者が裁判所に出頭しなかったり虚偽の陳述を行ったりした場合に刑事罰が科せられる、というのが正解です

財産開示手続とは、どのような手続きでしょうか。
民事執行法に基づき何らかの金銭債権につき強制執行を申し立てるためには、対象となる債務者の財産を特定することが法律上求められています。その際に、裁判所の命令で債務者に財産情報を開示させる“財産開示手続き”が平成15年に創設されました。

しかし旧制度では、財産開示手続きを利用できる人は、確定判決等を有する債権者のみに限定されていました。さらに、裁判所への不出頭や虚偽陳述に対する制裁が「30万円以下の過料」と養育費を支払うよりも安価であったことや、行政罰のため前科がつかなかったことから、養育費の不払いが進む一因であるとみられていました。

そこで、財産開示手続きの利用を促進し、より有効な手続きとするために、2020年4月から改正民事執行法が施行されました。

改正後は、執行認諾文言付き公正証書や仮執行宣言付判決を有している人も申し立てが可能となります(民事執行法第197条)。執行認諾文言が記載された公正証書は裁判を起こさなくても強制執行をかけることができるため、金銭債権の支払い約束にはよく利用されています。

さらに罰則も「6か月以下の懲役または50万円以下の罰金」の刑事罰に厳罰化されました(民事執行法第213条)。

2、養育費不払いが多い背景

前述のように民事執行法が改正された背景としては、養育費の不払いが多く、深刻な社会問題となっている背景があります。

厚生労働省が公表している「平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果報告」によると、養育費について取り決めをしているひとり親は、母子世帯では42.9%、父子世帯では20.8%でした。

日本では当事者の話し合いのみで離婚を成立させる協議離婚が多くを占めていますが、同調査結果によると、協議離婚は、その他の調停離婚・裁判離婚と比べて、養育費の取り決めをしている割合が低いこともわかっています。

養育費の取り決めをしていない主な理由は、母子世帯、父子世帯ともに、“相手と関わりたくない”“相手に支払う能力がないと思った”が上位を占めています。

次に実際の受給状況についてですが、母子世帯では「現在も受けている」が24.3%、父子世帯は「現在も受けている」が3.2%と、いずれも低い水準にとどまります。また、かつては受給していたが途絶えてしまったという人が少なからず存在していることも、同調査結果で明らかとなりました。

なお、養育費不払いの問題は、支払い義務者(多くは父親)の所得に関係なく起こっていることも指摘されています。低い所得層の場合は支払い能力が低いことが主な原因ですが、高い所得層では再婚相手との生活を優先させるために養育費の支払いを怠るケースが多く見られました。

3、そもそも養育費とは

  1. (1)子どもが独り立ちするまでの子育て費用

    養育費は、子どもが経済的・社会的に自立するまで親が負担すべき子育て費用です。生活費・教育費・趣味娯楽費・医療費などの総称です。

    親が養育費を負担すべき法律上の根拠となるのは、民法第877条第1項「直系血族および兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある」という定めです。

    養育費は子どものために支払われるべきお金ですが、判断能力が低い未成熟の子どもの代わりに親権者が受け取る権利を有しています。そのため、子どもが成長して判断能力が十分になった場合には、子ども自身が親に対して扶養料として大学の学費等を請求することもできます。

    支払いの終期は、家庭によってケース・バイ・ケースです。高校卒業時までとする家庭もあれば、専門学校・大学卒業までとする家庭もあります。原則として親は子に自分と同水準の生活を与える義務を負うため、支払い義務者である父親が大学院卒などの高学歴であり十分な収入・資産を有している場合には、子どもにも大学・大学院の学費を支払うべきと判断される傾向にあります。

    また子どもに障がいや持病があり、成人しても経済的社会的自立が難しいケースでは、養育費の支払い終期が平均よりも長く設定される可能性があります。

  2. (2)養育費の取り決めをする流れ

    養育費の金額は、父母の合意さえあれば原則として自由に取り決めることができます。ただし、一定の目安として、裁判所が公表している『養育費算定表』を参考に決定されることも少なくありません。

    また、取り決めた合意内容は、執行認諾文言付き公正証書にまとめることが強く推奨されていますもし養育費の不払いが起きた場合、執行認諾文言付き公正証書がなければ、ただちに強制執行をかけることができないからです

  3. (3)養育費の増額・減額について

    一度取り決めた養育費は、離婚後の状況の変化により、支払い義務者または親権者から家庭裁判所に増額・減額を申し立てることができます。

    養育費増額の主な理由としては、

    • 子どもの進学・留学による教育費負担増
    • 子どものケガ・病気による医療費負担増
    • 親権者のケガ・病気による収入減 等


    また、養育費減額の主な理由としては、

    • 支払い義務者の再婚による扶養家族の増加
    • 支払い義務者の収入減
    • 親権者の再婚相手と子どもの養子縁組 等

    が挙げられるでしょう。

4、養育費不払いに対する法的措置と手続き

  1. (1)債務名義をもとに強制執行を申し立てる

    養育費の支払いについて債務名義(公正証書、調停調書、確定判決等)を有しており、かつ対象となる財産を特定している場合に限り、強制執行をかけることができます

    申立てを行うのは、原則として相手方(支払い義務者)の住所地を管轄する地方裁判所です。
    申立てに不備がなければ、裁判官が債権差押命令を発令します。

    給料を差押えする場合は、勤務先と支払い義務者の住所に債権差押命令正本が発送されます。その後、申立人のもとにも債権差押命令正本が発送されます。

    相手方に債権差押命令正本が届いた日の翌日から1週間経過後、申立人が勤務先(預金口座の場合は金融機関)に直接連絡して取り立てを行います。

    一連の流れをご自分で行うのが難しいと感じる場合は、弁護士に依頼することをおすすめします。

  2. (2)財産が不明なら財産開示手続・第三者からの情報取得手続

    前述の通り、強制執行をかけるためには対象となる財産を特定しなければなりません。たとえば給与であれば勤務先、預貯金であれば金融機関名と支店などです。

    そこで、相手方の住所地を管轄する地方裁判所に財産開示手続きを申し立て、どのような財産を持っているのか開示するよう求めます。

    申し立てに必要なのは、執行認諾文言付き公正証書等の債務名義、財産開示手続申立書などです。申し立てに不備がなく実施が決定すると、申し立てから約1か月後に財産開示期日が指定されます。

    債務者は、財産開示期日の約10日前までに財産目録を提出しなければなりません。理由なく出頭しなかったり、虚偽の陳述と行ったりすると、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性があります。

    さらに確実に財産情報を収集するために、“第三者からの情報取得手続”も新設されました。
    本人がなかなか財産情報を開示したがらない場合にも、金融機関、市区町村、登記所などから債務者の勤務先や銀行口座などの財産情報を直接提供してもらえるという制度です。非常に強力な制度なので、養育費と生命・身体の侵害による損害賠償請求権の債権者のみ利用可能とされています。

    相手方の住所地を管轄する地方裁判所に申し立てると、裁判所は市区町村の年金事務所・金融機関本店などに情報提供命令を下します。裁判所が受け取った回答を債権者に伝え、債権者はそれをもとに給与や預貯金口座に強制執行を申し立てるという流れです。

    ただし債務者が現在住んでいる自治体すらまったく不明である場合には、当該制度を利用することはできません。また、勤務先と不動産の“第三者からの情報取得手続”については、まず“財産開示手続き”を申し立ててからでないと利用できない点には注意してください。

5、まとめ

現時点では、養育費の不払いをした人に刑事罰が科されるわけではなく、債務名義をもとに申し立てた財産開示手続きに従わなかった場合に“6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金”にとどまります

また、財産開示手続き・第三者からの情報取得手続き・強制執行の申し立てなどの裁判所の手続きは、難しく手間がかかる上に期限も厳格に定められており、受付時間が平日昼間のみとなっています。

離婚にまつわるトラブルは精神的にも大きな負担となることが少なくありません。期限内に迅速かつ適切に手続きを行うためには、弁護士のサポートを受けながら進めることを推奨いたします。養育費の不払いについてお悩みの際は、まずはベリーベスト法律事務所 堺オフィスの弁護士までご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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