【後編】親が自己破産! 子どもや家族が受ける影響はある? 弁護士が解説します

2019年06月26日
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【後編】親が自己破産! 子どもや家族が受ける影響はある? 弁護士が解説します

親が子どもを選べないように、子どもも親を選べません。場合によっては、親が借金を重ねてしまうタイプだったがために苦しんで育ってきた方もいるでしょう。前編では、子どもに親の借金を支払う義務があるのか、さらにどれぐらいあるのかを調べる方法から、遺産に借金があったケースについての対応方法を解説しました。

後半では、親が自己破産をしたときの影響や自己破産をする手順をはじめ、そのほかにできる債務整理方法について、堺オフィスの弁護士が解説します。

4、自己破産とはどのような制度?

親の借金は、親自身で完結してもらいたいものです。しかし、どうしても親自身で返済ができない場合は、親に法的整理を活用するよう促す必要があります。ここでは、法的整理の代表的な方法である自己破産についてご説明します。

  1. (1)自己破産とは

    自己破産とは法的な債務整理手段のひとつで、裁判所にこれまでの借入債務などを免除してもらう手続です。

    自己破産は保有している資産や今後の収入見込みを考慮しても、借金返済のめどが立たなくなる「支払い不能」の状態に陥った場合に申し立てることができます。

    自己破産したい旨を裁判所に申し立てると、裁判所はさまざまな調査や審査などを行います。そして、所有財産について債権者に公平に分配し、弁済できなかった債務については税金や健康保険料、養育費など一部を除いてすべての債務が返済免除となります。

  2. (2)かならず借金が帳消しになるわけではない

    自己破産を申し立てたとしても、かならず借金が帳消しになるわけではありません。たとえば浪費やギャンブルが原因の借金があり、著しく財産を減少させた場合や、意図的に財産を隠していた場合は、裁判所の「免責許可決定」がおりず、自己破産手続が終了した後も借金が残ることになります。

  3. (3)自己破産のデメリット

    金融機関からの借金など債務が免責されることが、自己破産の最大のメリットです。しかし、自己破産には以下のような数多くのデメリットもあります。

    • 最低限度の生活に必要な私財以外は、手放さなければならないこと。
    • 子どもとの共有財産についても差し押さえられるため、親と同居している場合は生活面の影響が避けられないこと。
    • 手続のために平日の昼間に裁判所に出向く必要があるため、仕事に支障が出る可能性があること。
    • 個人の住所氏名が官報に掲載されるため、自己破産したことが勤務先などに知られる可能性があること。
    • 共働きの場合は配偶者の収入証明や源泉徴収票などの提出が求められることがあり、これによって配偶者に自己破産の事実が知られる可能性があること。
    • 信用情報機関のリストに載せられるため、少なくとも5年から7年の間はクレジットカードを作ることや住宅ローンなどの借金ができなくなること。
    • 親を保証人とした借金ができなくなること。
    • 信用情報機関と連携している不動産会社の仲介では、家を借りることも難しくなる可能性があること。
    • 自己破産手続の期間中は、警備員など一定の職業に就けないこと。


    このことから、自己破産はあくまで最終手段と考えたほうがよいでしょう。

5、そのほかにできる債務整理方法

自己破産だけが、債務を整理する方法ではありません。ここでは、私的整理を含めたほかの債務整理方法について解説します。

  1. (1)個人再生手続

    個人再生手続とは、自己破産と同じように裁判所を通じて行う債務整理手続のひとつで、借金額の圧縮を債権者に強制的に認めさせながら生活の再建を目指す手続のことです。手続としては、自営業者等が主な対象の「小規模個人再生手続」と、サラリーマン等が主な対象の「給与所得者等再生手続」の2種類があります。

    個人再生手続が自己破産手続と異なる点は大きく分類すると2つあります。ひとつは、個人再生手続の場合は自助努力による借金返済を前提としていることが挙げられます。もうひとつは、個人再生手続の場合は保有している資産を清算しないことが挙げられます。

    裁判所に個人再生手続が認可決定されると、原則として3年間で圧縮された借金を分割して返済することになります。この際、借金の圧縮額はおおよそ5分の1となります(借金額により異なり、3000万円以上の借金の場合は10分の1になります)。

    個人再生においても、個人の住所氏名が官報に掲載され、信用情報機関のリストに載せられることで少なくとも数年の間クレジットカードや住宅ローンなどの借金ができなくなることなどのデメリットがあります。したがって、個人再生に踏み切ることについては自己破産と同様に慎重な判断が求められます。

  2. (2)おまとめローン

    一部の金融機関では、「おまとめローン」という金融商品を提供しています。おまとめローンは複数の金融機関にある借金をひとつの金融機関にまとめることで、定期的な借金返済の管理がしやすいことや、現状よりも支払金利が安くなる場合があることなどがメリットとして挙げられます。もちろん、あなたの名前が官報などで公表されることなどありません。

    しかし、おまとめローンは一般的に審査が厳しく借入限度額が低いため多額の借金には活用することが難しいこと、借金そのものを減額することはできないことなどがデメリットとして挙げられます。

  3. (3)任意整理

    任意整理とは、現在の借金(金利も含みます)を3年程度で返済する和解契約を債権者と締結し、和解締結以降の金利を支払わなくて済むようにする債務整理手続のことをいいます。

    任意整理の手続には裁判所は一切介在せず、財産が清算されることもありません。このため、借金の事実が家族や勤務先に知られることはまずないと考えられます。

    任意整理は、債務者個人でも行うことが可能です。しかし、債権者との交渉を有利に成立させることは非常に難しいものです。弁護士のように知見と経験に裏付けられた交渉力を持つ専門家を代理人とすることが一般的です。

6、まとめ

借金があっても、子どもに対して申し訳ない・恥ずかしいという心情から、なかなか借金の事実を言い出せない親は多いものです。それが状況をいたずらに悪化させることにつながり、気づいたときには極めて深刻な事態に至ってしまうこともあります。

親の借金に気づいたら、これ以上の事態の悪化を防ぐために早急に弁護士へ相談してください。

借金問題の解決に豊富な経験と実績を弁護士であれば、債務者の状況を理解したうえで解決に向けた最適な提案や債権者との交渉を債務者に代わって行います。これにより、あなたや債務者である親が単独で問題解決に向けて取り組むよりも、よい結果が期待できるでしょう。

また、限定承認や相続放棄についても、あなたの代理人として債権者や他の相続人との交渉、さらには裁判所への手続を依頼することもできます。ベリーベスト・堺オフィスでも借金に関するご相談を受け付けております。ぜひお早めにご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています