未成年の子どもが逮捕されたら!? 逮捕から裁判までの流れはどうなる?

2019年02月22日
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未成年の子どもが逮捕されたら!? 逮捕から裁判までの流れはどうなる?

大阪府内で、未成年による犯罪がどのくらい検挙されているのかご存知ですか。平成29年、大阪府内で犯罪をしたとして検挙・補導された未成年は、3138名に及びます。未成年による犯罪で検挙・補導される人数は近年減少傾向にありますが、これだけの人数が犯罪に関わってしまっています。大阪府警察の発表によりますと、今年、高校生など3人が大麻を所持・譲渡していたとして大麻取締法違反で検挙されたほか、無職少年など5人が被害者に因縁をつけ、暴行を加えて現金を強取するなどを繰り返したとして強盗致傷などで検挙されたとのことです。未成年による犯罪は決してひとごとではないのです。
ここでは未成年の子どもが逮捕されてしまった場合、逮捕から裁判までの流れについてベリーベスト法律事務所 堺オフィスの弁護士が解説します。

1、逮捕の流れ

未成年の子どもが事件を起こした場合、子どもの年齢によって次のように手続きは異なります。なお、未成年による刑事事件を少年事件と呼びますが、この少年には女子も含みます。

  1. (1)14歳以上20歳未満の子ども

    14歳以上の子どもであれば、刑事責任能力がありますので、大人の刑事事件と同じように警察に逮捕され、取り調べなどの捜査を受けることになります。
    逮捕には現行犯逮捕、通常逮捕、緊急逮捕の3種類があります。たとえば、14歳以上の子どもが万引きやカツアゲなどの犯罪を犯したときに、通報を受けた警察にその場で逮捕されれば現行犯逮捕ということになりますし、後日、捜査で犯罪に関わったことがわかり、警察が裁判所の令状(逮捕状)をもって自宅を訪れ逮捕されれば通常逮捕ということになります。緊急逮捕は殺人や強盗などの重大犯罪に限って行われる令状なしの逮捕手続きのことですが(ただし、逮捕後に令状を請求します)、14歳以上であれば緊急逮捕されることもあります。逮捕については、基本的には大人と同じ手続きといえます。

  2. (2)14歳未満の子ども

    14歳未満の子どもは、刑事責任能力がありません。そのため、14歳未満の子どもが犯罪を犯しても逮捕することはできません。この場合には、児童福祉法上の措置として児童相談所へ通告されますし、場合によっては児童養護施設や児童自立支援施設などに入る可能性があります。

2、逮捕後の流れ

14歳以上20歳未満の子どもが逮捕されると、大人の刑事事件と同じく、48時間以内に警察から検察官に身柄が送致されます。
なお、少年の場合、罰金以下の刑に当たる犯罪については検察官に送致せずに、直接、家庭裁判所に送致することになっています。

検察官は、送致後、引き続き身体拘束をするのか、それとも釈放するのかなどを判断します。大人の刑事事件では、逮捕後の身体拘束は勾留と呼ばれる手続きになりますが、少年の場合は勾留のほかに勾留に代わる観護措置というものがあります。勾留に代わる観護措置は大人の刑事事件にはない、少年事件ならではの手続きになります。

  1. (1)勾留

    まずは、勾留について説明します。
    検察官は、引き続き身体拘束する必要があるときには、24時間以内に裁判所に勾留請求をします。
    大人の刑事事件では、勾留は①被疑者が住所不定なとき、②証拠隠滅のおそれがあるとき、③逃亡のおそれがあるとき、このうちひとつでも当てはまる場合には勾留の理由があるとして勾留状が発付されますが、14歳以上の子どもについては、さらにやむを得ない場合でなければ勾留することができないという違いがあります(少年法48条1項)。
    勾留状が発付されると、警察の留置場などに勾留されることになりますが、少年の場合には少年鑑別所が勾留場所になることもあります。勾留期間は、勾留請求の日から原則10日間です。事案が複雑だったり、関係者が多数などの事情がある場合にはさらに最大10日間延長されることもあります。

  2. (2)勾留に代わる観護措置

    次に、勾留に代わる観護措置について説明します。
    検察官は身体拘束の必要があるときには勾留を請求することもできますが、勾留には「やむを得ない場合」という限定がついています。しかし、検察官は、やむを得ない場合でなくとも身柄を保全する必要があるときは、裁判官に勾留に代わる観護措置を請求することもできます(少年法43条1項)。
    勾留に代わる観護措置がとられると、少年は少年鑑別所に収容されることになります。収容期間は、請求の日から10日間で、延長は認められていません(少年法44条3項)。

3、未成年の場合、裁判はどうなる?

  1. (1)家庭裁判所への送致

    勾留または勾留に代わる観護措置がとられている間、少年は事件の取り調べなどを受けることになります。

    検察官は事件を捜査し、犯罪が行われたと判断したときには、事件をすべて家庭裁判所に送致しなければなりません(少年法42条)。
    大人の刑事事件では、捜査の結果、犯罪が行われていた場合であっても、事案が軽微だったり、被疑者が反省していたり、被害者と示談が成立していたり、もろもろの事情によっては、検察官が起訴をしない不起訴処分で事件が終了することもあります。不起訴処分となれば、刑事裁判を受けることなく、早期に釈放されます。
    しかしながら、少年事件の場合には、検察官は、事件をすべて家庭裁判所に送致することになっていますので、不起訴処分で終わるということはありません。ただし犯罪の嫌疑がないときなどには嫌疑なし、あるいは嫌疑不十分として事件が終了します。

  2. (2)観護措置

    家庭裁判所に事件が送致されると、家庭裁判所は少年の事件記録を受理したときから24時間以内に審判を行うため観護措置をとるかどうかを判断します。勾留に代わる観護措置がとられていた少年については、そのまま観護措置がとられます。
    観護措置がとられると、少年は基本的には2週間、少年鑑別所に収容されます。必要があるときには1回に限って更新することができるため、実務では更新されることが多く、通常の事件ではおよそ4週間の観護措置がとられることが多いようです。なお重大事件についてはさらに2回更新ができ、最大8週間の観護措置がとられる可能性があります。 この期間中、少年は家庭裁判所調査官による調査や鑑別所技官による鑑別を受けることになります。

  3. (3)少年審判

    観護措置の期間内に、少年審判が開かれ、処分が決められます。
    少年審判は、大人の刑事裁判に当たるものですが、非公開で行われます。また、少年審判に出席するのは、裁判官、調査官など裁判所関係者、少年、保護者、付添人たる弁護士のみで、検察官は基本的には出席しないというのも大きな違いといえます。
    これは、そもそも少年法が、少年の犯罪について刑罰を与えることを目的とせず、少年が健全に成長できるように、性格の矯正と環境の調整を行うことを目的としているためといえるでしょう。 審判では、少年の非行事実が行われたのか、行われたとしてどういった非行事実であったのか、さらにはどうして少年がそのような非行事実をしたのかといった非行原因、少年の反省状況、少年の具体的な生活環境について、裁判官が少年に質問するなどして進められます。
    裁判所は、審判において少年の処分を決定することになります。この際、裁判所は、検察官が家庭裁判所に送致する際の処分に関する意見や、観護措置による鑑別結果の通知書、調査官による調査結果、弁護士である付添人の意見書などを踏まえ、少年の更生につながる処分を慎重に判断します。
    裁判所による終局処分の決定としては、不処分、保護処分(保護観察処分、児童自立支援施設または児童養護施設送致、少年院送致のいずれか)、検察官送致、知事または児童相談所長送致があります。
    不処分、保護観察処分であれば、少年は審判の日に自宅に帰ることができます。

    なお終局処分の決定には、審判不開始というものもあります。これは、そもそも非行事実が認められない場合(大人の刑事裁判でいえば無罪ということです)や教育的な働きかけにより審判を行う必要がない場合です。このような審判不開始にならない限りは、裁判所は少年審判を行うことになります。

4、一刻も早く弁護士に相談するべき理由と弁護士ができること

  1. (1)身体拘束についての対応

    少年事件では、逮捕から最大72時間以内に長期の身体拘束である勾留や勾留に代わる観護措置がとられる可能性があります。大人でもこのような身体拘束は精神的にも肉体的にも厳しいものですが、少年ともなればその影響は多大なものです。
    弁護士は、捜査機関が身体拘束をしないように、あるいは早期の身体拘束からの解放を求めて捜査機関や裁判官に働きかけをすることができますし、不当な身体拘束については準抗告や勾留取消などの申し立てをできます。
    身体拘束がやむを得ない場合であっても、警察の留置場ではなく、少年鑑別所に収容させるよう働きかけることもできます。
    あるいは、事案によっては罪名が罰金以下の軽微なものに該当すると主張することで勾留を免れさせることもできます。

  2. (2)審判についての対応

    少年審判では、非行事実とともに少年の生活環境の調整が非常に重要になります。生活環境が乱れていては、再び少年が犯罪に関わってしまうおそれがあるためです。そのため、少年と保護者の関係、就学先や勤務先との関係を整えておく必要があります。また犯罪の被害者がいる場合には、被害者への謝罪や被害弁償などを行うことも必要となります。
    家庭裁判所に事件が送致されてから約3週間で審判が開かれる可能性がありますが、これらの環境調整には時間がかかりますし、保護者だけで対応していくことはなかなか難しい部分もあると思います。そのため、なるべく早めに弁護士にご相談いただきたいと思います。

5、学校への対応はどうすべきか

少年が逮捕、勾留などされると学校へ行くことができなくなりますし、場合によっては退学のおそれがでてきます。しかし、少年が更生し、安定した生活を送るためには学校という存在はとても有益です。では、学校にはどのように対応すればよいのでしょうか。

  1. (1)学校に知られていない場合

    事件を学校に知られず、早期に釈放されて学校にそのまま戻ることができればよいですが、警察・学校相互連絡制度によって警察から学校に事件の連絡が入ることがあります。この場合、弁護士は少年の付添人または弁護人として、少年の更生のために必要があることを説明し、警察に対して相互連絡制度による学校への連絡をしないように申し入れを行うことができます。
    また、審判までの間に、家庭裁判所調査官が学校に対して少年の成績などについて照会することがありますので、裁判所に対しても学校に対する照会を行わないように申し入れする必要があります。
    なお、このような申し入れをするにしても、出席日数のためには早期に身体拘束からの解放を目指す必要があります。

  2. (2)学校にすでに知られている場合

    学校がすでに事件を知っている場合には、弁護士が少年の付添人または弁護人として改めて事件について適切な説明を行うことができますし、少年が反省していることなど少年の現状を正しく知らせることができます。また、そのうえで少年の更生のための協力を学校側に求めていくこともできます。学校側が協力してくれることになれば、少年の終局処分を決めるうえでも有益な環境調整といえます。

6、まとめ

お子さんが突然逮捕されてしまったら、今後、どうなってしまうのか不安でたまらないと思います。このようなときは、一度、ベリーベスト法律事務所 堺オフィスまで相談に来てください。弁護士は少年事件について手続きの流れ、お子さんの現在の状況や今後の状況について説明することができます。また必要な場合には、弁護士を弁護人または付添人として選任することができます。弁護人または付添人は、お子さんのために何ができるのか、何をすべきなのかを考え、お子さん本人やご家族をサポートしながら活動します。ご家族だけで悩まず、まずは相談してみてください。

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