あおり運転厳罰化! どんな行為が妨害運転罪に当たるか?

2025年11月06日
  • 暴力事件
  • あおり運転
あおり運転厳罰化! どんな行為が妨害運転罪に当たるか?

一般的には「マナーがない運転」として捉えられていた「あおり運転」ですが、痛ましい事故が多発していることから、厳罰化が進んでいます。

具体的にどのような運転をすると、あおり運転として取り締まりの対象となるのかを、ご存じでしょうか。

今回は、あおり運転について知っておくべきポイントを、ベリーベスト法律事務所 堺オフィスの弁護士が解説します。


刑事弁護・少年事件を弁護士に相談 刑事弁護・少年事件を弁護士に相談

1、あおり運転(妨害運転罪)にあたる行為とは

あおり運転とは、他の車両の通行を妨害する目的で行われる運転行為であり、それにより交通の危険を生じさせるものをいいます。このようなあおり運転は、重大な交通事故につながるリスクの高い極めて悪質・危険な行為であることから、道路交通法により処罰対象となります。

妨害運転罪では、他の車両等の通行を妨害する目的で行われる以下の10類型の運転行為をあおり運転として規制しています。

  • 通行区分違反:対向車線にはみ出す
  • 急ブレーキ禁止違反:不必要な急ブレーキ
  • 車間距離不保持:車間距離を極端に詰めて接近
  • 進路変更禁止違反:急な進路変更
  • 追越違反:危険な追い越し
  • 減光等義務違反:執拗なパッシング
  • 警音器使用制限違反:執拗なクラクション
  • 安全運転義務違反:幅寄せや蛇行運転
  • 最低速度違反(高速自動車国道):高速自動車国道での低速走行
  • 高速自動車国道等駐停車違反:高速自動車国道で駐停車

2、あおり運転で問われる罪

以前は、暴行罪や危険運転致死傷罪という刑法上の犯罪として処罰されていましたが、平成25年11月に、運転の悪質性や危険性等の実態に応じた処罰を行うために、自動車運転致死傷処罰法が成立し、平成26年5月から施行されました。

さらに令和2年の道路交通法の改正により、新たな類型(妨害運転罪)が処罰の対象として追加されました。

現在は、あおり運転が発生した場合、基本的には「妨害運転罪」により処罰されることになります。

  1. (1)妨害運転罪

    妨害運転罪とは、令和2年6月30日に施行された改正道路交通法により創設されたあおり運転を取り締まる罪です。

    これまであおり運転は、道路交通法の「安全運転義務違反」や「車間距離保持義務違反」などの交通違反として処理されることが一般的でした。

    しかし、あおり運転による悲惨な事故が多発している状況を受け、あおり運転を厳罰化するために、道路交通法改正により、妨害運転罪が設けられることになりました。

    なお、あおり運転により相手を死傷させてしまった場合には、自動車運転死傷処罰法による「危険運転致死傷罪」が成立し、非常に重い刑罰が科されます。

  2. (2)道路交通法違反

    あおり運転が10類型に該当しなかったとしても、道路交通法のさまざまな規定に違反する可能性があります。

  3. (3)あおり運転の罰則

    妨害運転罪の罰則は、具体的な違反態様に応じて、以下の2種類の罰則が設けられています。

    ① 妨害を目的として交通の危険を生じさせるおそれのあるあおり運転をした場合
    他の車両等の通行を妨害する目的で、10類型のあおり運転であり、当該他の車両等に道路における交通の危険を生じさせるおそれのある方法によるものをした場合、3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が科されます。

    ② あおり運転により著しい交通の危険を生じさせた場合
    ①の罪を犯して、高速自動車国道等において他の自動車を停止させ、その他道路における著しい交通の危険を生じさせた場合、5年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金が科されます。
  4. (4)あおり運転の行政処分

    あおり運転により妨害運転罪が成立すると、上記の刑事罰だけではなく行政処分の対象にもなります。道路交通法違反に対する行政処分とは、違反行為に応じて点数が加算され、一定の点数を超えると運転免許の停止や運転免許の取り消しといった処分をいいます。

    あおり運転をした場合には、具体的な違反態様に応じて、以下のような行政処分が行われます。

    ① 妨害を目的として交通の危険を生じさせるおそれのあるあおり運転をした場合
    違反点数として25点が加算されますので、必ず運転免許の取り消し処分となります。

    ② あおり運転により著しい交通の危険を生じさせた場合
    違反転するとして35点が加算されますので、必ず運転免許の取り消し処分となります。

3、あおり運転をすると逮捕される?

あおり運転をすると妨害運転罪による処罰対象になりますが、あおり運転で逮捕されることはあるのでしょうか。

  1. (1)事故を起こさなければ大丈夫?

    妨害運転罪は、他の車両等の通行を妨害する目的で10類型の運転行為をした場合に成立する犯罪です。犯罪の成立に事故の発生は要件とはされてないため、事故が起きていなくても妨害運転罪は成立します。

    つまり、悪質なあおり運転により交通の危険を生じさせたような事案では、事故が起きていなくても逮捕される可能性があります。

  2. (2)あおり運転で逮捕されたらどうなる?

    あおり運転で逮捕されると、最大72時間、留置場で身柄を拘束されます。その後、証拠を追加で収集しなければならない等捜査の必要があると判断されれば、身柄は検察へ送致されます。

    送致を受けた検察官は、引き続き身柄を拘束して捜査を行う「勾留」の必要性を判断し、必要に応じて裁判所に勾留請求をします。勾留が認められれば、留置場または拘置所において、最大20日間、身柄の拘束が継続することになります。

    検察官は、勾留期間中に取り調べを終えて、起訴するかどうかを判断します。「起訴」となれば、99%有罪となると考えなければなりません。有罪となれば、当然前科がつくことになります。不起訴であれば身柄が解放され、前科がつくこともありません。

  3. まずはお気軽に
    お問い合わせください。
    電話でのお問い合わせ
    【通話無料】平日9:30~21:00/土日祝9:30~18:00
    メールでのお問い合わせ
    営業時間外はメールでお問い合わせください。
  4. (3)あおり運転で後日に逮捕される可能性は?

    あおり運転を妨害運転罪として処罰するには、証拠が必要です。最近は、ドライブレコーダーを搭載する車両が増えてきました。複数の車両がドライブレコーダーを搭載していれば、数珠つなぎであおり運転行為は連続的に記録され、確実な証拠として記録が残る可能性が高いでしょう。

    あおり運転をしたその場で逮捕されないとしても、その後も逮捕されることはないと言い切れません。後日になって、ドライブレコーダーの映像などを警察に提出する可能性がありますし、目撃者がSNSなどであおり運転中の動画を拡散する可能性もあります。その場合は、拡散を止めることは非常に難しくなります。

    それらの映像をもとに警察が捜査を進めれば、あおり運転を行った者が特定されることになるでしょう。ドライブレコーダーの映像等の記録は、確実かつ正確で劣化しない証拠として残り続け、後日に逮捕されたり、捜査を受けたりすることになる可能性は十分にあります。

4、もしあおり運転をしてしまったら

あおり行為をしてしまったら、その場ではもちろん、あとから捜査を受けて逮捕される可能性があります。妨害運転罪に問われれば、刑事事件として扱われ、起訴されることも考えられるでしょう。

逮捕されたまま何も手を打たなければ、最大23日間身柄を拘束される可能性が高まります。職場や学校を長期にわたり休む必要があることから、会社などに発覚してしまう可能性は否定できません。また、起訴されて有罪判決がなされると前科がついてしまいます。

もし、あおり運転をしてしまったときには、いち早く被害者との間で示談を成立させることをおすすめします。検察は、被害者の処罰感情を考慮したうえで、起訴・不起訴を検討するためです。
示談をすることで、逮捕を免れたり、逮捕されても早期に釈放を求めたりすることが可能になります。また、起訴されるかどうかの判断にも大きな影響を与えます。

しかし、あおり運転を受けた相手方の被害感情を考えると、加害者本人とは会いたくないと考えるケースが一般的です。そもそも、逮捕されてしまうと、被害者と会うことすらできなくなります。

そのため、あおり運転で警察の取り調べを受けたときには、なるべく早期に、弁護士に相談することをおすすめします。弁護士に示談をはじめとした弁護活動を依頼することで、被害者との示談を進めるだけでなく、警察や検察に対し、刑罰の適用に対して意見書を提出してもらうこともできます。

まずはお気軽に
お問い合わせください。
電話でのお問い合わせ
【通話無料】平日9:30~21:00/土日祝9:30~18:00
メールでのお問い合わせ
営業時間外はメールでお問い合わせください。

5、まとめ

あおり運転は、重大な交通事故につながるリスクの高い極めて悪質・危険な行為であることから、道路交通法の改正により新たに「妨害運転罪」が設けられ厳罰化となりました。

あおり運転をしてしまったときは、きちんと反省をして、被害者に謝罪をすることが求められます被害者への謝罪は、早ければ早いほど意味があります。同時に、弁護士に依頼をして、なるべく逮捕・起訴されないよう相談しておくことをおすすめします。

ベリーベスト法律事務所 堺オフィスでは、刑事事件の対応経験が豊富な弁護士が適切なアドバイスを行います。もし逮捕されているのであれば、早急かつ的確な弁護活動を必要とします。できる限り早いタイミングでご相談ください。

まずはお気軽に
お問い合わせください。
電話でのお問い合わせ
【通話無料】平日9:30~21:00/土日祝9:30~18:00
メールでのお問い合わせ
営業時間外はメールでお問い合わせください。
  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています