夫や未成年の息子が痴漢再犯で逮捕!? その後の流れや量刑、対応方法は?
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あなたが自宅で家事をしているとき、警察から「旦那を痴漢で逮捕しました」や「息子を痴漢で逮捕しました」という連絡を受けたらどうしますか? しかも、痴漢容疑をかけられている旦那や息子が、以前も同様に痴漢容疑で逮捕されており、そのときは示談がまとまって処分を受けていなかったとすれば……。
おそらく、崩れ落ちそうになるほど落胆するとともに、「旦那はいつ帰ってこれるのか」「会社や学校に知れたらどうしよう」「今回こそ重い罰を受けることになるかもしれない」と、不安でいっぱいになるでしょう。
では、実際のところ、家族が痴漢で逮捕された場合、どのような処罰がくだされるのでしょうか。刑事手続きや処罰、成人と未成年の場合の違いなどを、堺の弁護士が解説します。
1、痴漢で逮捕されたときの罪名は?
「痴漢」は、代表的な性犯罪のひとつですが、「痴漢罪」という犯罪はありません。
痴漢によって逮捕される際は、都道府県が規定する「迷惑防止条例」違反か、刑法に規定されている「強制わいせつ罪」のいずれかにあたり、逮捕起訴されることになります。
それぞれの違いについてご説明します。
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(1)「強制わいせつ」罪
強制わいせつ罪は、刑法第176条に定められており、暴行または脅迫を用いて「被害者にわいせつな行為をした」場合に処罰されます。
状況によっては、「わいせつな行為を突然、もしくは無理やり行うこと」が「暴行または脅迫」を用いたと認められることもあり、痴漢行為が「強制わいせつ罪」にあたるとされるケースもあるのです。
量刑は、6ヶ月以上10年以下の懲役刑と定められています。よって、あなたが行った「痴漢」行為が「強制わいせつ」として起訴されれば、刑事ドラマでよく見るような公開法廷で刑事裁判をすることになります。有罪となれば、執行猶予付き判決でない場合は、懲役刑を科せられ、刑務所で刑務に服することになるでしょう。 -
(2)各都道府県の「迷惑防止条例」違反
なお、衣服の上から身体に触れる程度の「痴漢」行為は、各都道府県で制定されている「迷惑防止条例」違反として逮捕されるケースが圧倒的多数となります。
大阪府内における「迷惑防止条例」の正式名称は、「大阪府公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」といいます。同条例の第6条で「卑わいな行為の禁止」が規定されており、第6条1項1号に、痴漢行為をしてはならない旨の規定があります。
「迷惑防止条例」違反の量刑は、「6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金」です。罰金刑の設定があることから、「迷惑防止条例」違反は、強制わいせつ罪と比べれば罰則が軽いといえるでしょう。
しかし、痴漢行為は、被害者となった女性に大きな心の傷を残す悪質な犯罪です。また、再犯の可能性が高いといわれている犯罪です。そのため、大阪府警では、強制わいせつや痴漢行為を「大阪重点犯罪」と重視して、厳重に取り締まっています。
2、痴漢容疑で逮捕された場合の流れ
では、実際に痴漢事件の加害者として逮捕された場合の流れを説明します。逮捕から処罰を受けるまでの流れは、初めて逮捕されたケースでも、再び逮捕されてしまったケースにおいてもかわりありません。
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(1)警察による身柄拘束
逮捕されると、48時間、警察によって身柄を拘束され、取り調べなどを受けます。警察での身柄拘束ののち、さらに留置する必要があると判断された場合は、逮捕から48時間以内に、送検します。送検とは、事件記録や証拠など一式を、検察官のもとへ引き渡す手続きのことです。
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(2)検察官による勾留請求
送致を受けた検察官は、引き続き加害者の身柄を拘束して取り調べを行い、勾留請求するかどうかを、身柄を受け取った時から24時間以内に判断します。共犯者がいる、否認している、黙秘しているなど、検察が引き続き身柄を拘束する必要があると判断すれば、検察官は裁判官に「勾留請求」を行い、裁判官が「勾留請求」を認めると、10日間、さらに延長請求を認めると、追加で10日間、最大で合計20日間の身柄拘束が続きます。
身柄拘束の必要がないと判断される場合は、その時点で釈放となります。ただし、釈放されたからといって、無罪放免になるわけではありません。罪名が「迷惑防止条例」違反であれば、在宅事件として、後日起訴されることもあるでしょう。
なお、身柄拘束の場所は、一般的には警察署の留置施設になりますが、少年の場合は少年鑑別所で身柄を拘束されることもあります。 -
(3)検察官による起訴
拘留期間中(最大で20日間)に、検察官は、起訴するかどうか(刑事裁判にかけるかどうか)を判断します。加害者の重い刑事責任を追及すべきと判断されれば起訴され、情状も踏まえて刑事責任がそれほど重くないと判断されれば不起訴・起訴猶予として釈放されます。
14歳以上の未成年者による痴漢事件のケースでは、処罰を与える目的ではなく、少年本人の健全な育成と更生を目的として、事件の捜査や原因究明が進められます(少年の保護主義)。具体的には、刑事裁判ではなく、家庭裁判所における「審判」で処分が決定されます。なお、審判の必要がないと判断されれば、「審判不開始」になって釈放されます。
また、14歳未満の未成年者(触法少年)が痴漢事件を起こした場合は、刑法で定められた刑事事件を問う責任年齢に達していないため、刑事事件として罪に問われることはありません。触法少年の保護については児童相談所等の判断が先行し、家庭裁判所への送致が必要と判断された場合に通常の少年事件と同様の手続きの流れとなります。 -
(4)刑事裁判・審判
起訴された成人は刑事裁判によって、有罪か無罪かを判断され、有罪の場合は懲役刑や罰金刑等、刑の量定が判断されます。少年の場合は、家庭裁判所における審判によって、保護観察処分や少年院送致などの処分が決定します。
なお、国内における刑事事件のうち、起訴された事件のうち99%が有罪判決となっています。前科をつけないためには早めの対処を行い、不起訴処分とすることが重要なポイントとなっていきます。
3、痴漢の再犯は勾留期間や量刑に影響する?
痴漢に限らず、常習者による犯罪は、非常習者による犯罪と比べて刑事責任を重たくみられます。「常習」とは、反復して行為をする習癖のある者のことをいいます。大阪府の迷惑防止条例においても、常習者による痴漢行為は、「1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処する」と、懲役刑について2倍の長期となる刑罰が規定されています。
常習犯とは別に、「再犯」という概念が刑法に規されています。以前に「強制わいせつ」罪で有罪判決を受け、懲役刑に処せられ、その執行を終わった日から5年以内にさらに罪を犯した場合は、刑法上の「再犯」として認識されます。その場合は、犯した犯罪の法定刑(懲役刑)の2倍以下の範囲で刑罰がくだされます。
4、痴漢容疑で逮捕されて弁護士を選任するメリット
家族が痴漢容疑で逮捕されてしまった場合、残された家族がまず取るべき行動は「弁護士に依頼すること」です。初めて逮捕された場合も、2度目の逮捕でも、かわりありません。
「まずは弁護士へ依頼したほうがよい理由」を、詳しく説明します。
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(1)逮捕された家族との橋渡しとなる
逮捕されてしまうと、逮捕期間中(最大で72時間)は弁護士以外の方は面会できません。たとえ家族であっても面会できません。前述したとおり、逮捕された本人の様子を見に行くことはもちろん、不安な気持ちや弁明を聞くこともできません。示談の意思があるかどうかの確認も難しくなるでしょう。
しかし、選任された弁護士であれば、面会できます。逮捕されてしまった本人と残された家族との間の橋渡し役を担い、早期釈放に向けた積極的な弁護活動がいち早く行えることになります。また、後述するように、弁護士であれば示談に向けて早期に活動することが出来ます。 -
(2)被害者との示談交渉を進めることができる
性犯罪における示談は、とても重要な意味合いを持ちます。検察官に勾留請求を差し控えてもらい、また、不起訴処分にしてもらう可能性を高めるためです。
しかし、いざ、被害者と示談をしたいと思ったとしても、性犯罪の被害者との示談交渉は非常に難しいものです。加害者が被害者と直接連絡を取ることは極めて困難です。示談の話をすることだけで被害者の感情に怒りに火を注ぐ結果となるケースも少なくありません。
弁護士であれば、示談の交渉をしてもよいという被害者の方がおられます。被害者が不明なときも、弁護士であれば警察を介して連絡先を聞くこともできます。弁護士であれば必ず示談を取りまとめることが出来るとはいえませんが、加害者や加害者家族がご自身で示談をまとめることと比較すれば、圧倒的に高い確率で示談交渉をすることが出来ます。
5、まとめ
もし、夫や未成年の息子が痴漢容疑で逮捕されてしまい、しかも以前は示談で解決したとはいえ、いわゆる「再犯」であれば、残された家族は重い処罰を受けるのではないかと心配になっても当然です。
こんなとき、残されたご家族がまずするべきことは、初めて逮捕されたときと同様、「いち早く弁護士に相談すること」です。弁護士のサポートを受ければ、被害者との示談交渉を進めることで勾留請求や起訴を防ぐことが期待できます。さらに、面会の権利がある弁護士が残されたご家族との橋渡しになりますし、なによりも逮捕されて不安で押しつぶされそうになっている旦那や息子の心の支えになるでしょう。
旦那や息子が痴漢容疑で逮捕されてしまった場合は、一刻も早く弁護士に相談してサポートを受けることをおすすめします。ベリーベスト弁護士事務所 堺オフィスの弁護士であれば、あなたのご家族が逮捕された際も迅速に駆けつけ、適切なアドバイスを行います。
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