不同意わいせつ罪の示談の相場│罰則や強制わいせつ罪との違い

2025年07月24日
  • 性・風俗事件
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不同意わいせつ罪の示談の相場│罰則や強制わいせつ罪との違い

令和5年(2023年)7月に「不同意わいせつ罪」が施行され、従来の「強制わいせつ罪」が改正されました。

不同意わいせつ罪では、暴行や脅迫をせずとも、同意なく相手にわいせつな行為をした場合に罪に問われるおそれがあります。不同意わいせつ罪の加害者になってしまったとき、事件をなるべく早く解決するためには、示談が重要です。

今回は不同意わいせつの示談の相場やなどについてベリーベスト法律事務所 堺オフィスの弁護士が解説します。


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1、不同意わいせつ罪の示談の相場

不同意わいせつ事件では示談が重要といわれています。本章では、示談が重視される理由と、示談の相場、示談をしなかった場合のリスクについて解説します。

  1. (1)示談が重要視される理由

    示談が重要とされていた背景としては、2017年の法改正まで、旧・強制わいせつ罪が、被害者による告訴(被害者が犯罪事実を捜査機関に申告し、加害者の処罰を求める意思表示)がなければ起訴できない「親告罪(しんこくざい)」だったという背景があります。

    しかし、2017年の法改正以降、強制わいせつ罪は、告訴がなくても起訴できる「非親告罪」へ厳罰化されました。つまり示談が成立したからといって、「絶対に逮捕・起訴されない」ということではありません。

    それでも現在も示談を行う重要性にかわりはありません。被害者の処罰感情が消滅すれば、逮捕回避や減刑につながる可能性が高まります。

  2. (2)不同意わいせつ罪の示談金の相場

    不同意わいせつ事件の示談金は犯行の様態により差があるため、明確な基準はありません。行為の内容や被害者の処罰感情、年齢、加害者の資力などに左右される傾向があります。

    ただし、過去の民事裁判例を元に金額が設定され、交渉開始されることが多いため、一定の目安となる金額は存在します。あくまでも参考程度ではありますが、一般的な示談金は30~100万円といわれています。

    示談金には、被害者の精神的苦痛に対する慰謝料のほか、治療費、事件に起因する引っ越し費用、労務不能中の生活費などを含むことがありますが、支払うべき費目について具体的に定まっているわけではありません。

    また事件によって異なりますが、被害者に近づかない、連絡しないなどの接近禁止条件や、口外しないといった守秘条件がつくこともあるでしょう。

2、そもそも「不同意わいせつ罪」とは?

不同意わいせつ罪は、従来の「強制わいせつ罪」と違い、暴行や脅迫がなくとも、相手の同意がなければ罪に問われる可能性があります。

以下、罪の構成要件や罰則について解説します。

  1. (1)不同意わいせつ罪が成立する要件

    不同意わいせつ罪が成立するのは、一定の行為や原因のもとで、「同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、わいせつな行為をした」場合です(刑法第176条1項)。

    被害者が「嫌だ」という意思を持つこと、態度で表すことが難しい“一定の状況や原因”のもとで、わいせつな行為をすることを禁じており、被害者が断りにくい状況だったことに配慮されているのが特徴です。

    この一定の行為や原因については、次のとおり、刑法に具体的に規定されています。

    • 暴行または脅迫
    • アルコールまたは薬物の影響
    • 睡眠その他の意識不明瞭
    • 心身の障害があって意思表示が難しい状況
    • 同意しない意思を持ったり、伝えたりする時間や余裕がない状態
    • 予想外の出来事で、恐怖または驚愕で拒否できない状況
    • 過去の虐待経験から恐怖で意思表示できない、などの心理的反応
    • 経済的または社会的関係上の地位(上司や取引先など)の影響力による不利益の憂慮


    これらの状況下でわいせつな行為を行うと不同意わいせつ罪が成立する可能性があります。なお、「わいせつな行為」とは、相手の胸や陰部を触る、抱きつく・キスする、服を脱がすなど、相手が性的に恥ずかしいと感じる行為のことを指します。

  2. (2)不同意わいせつ罪の罰則

    不同意わいせつ罪では、「6月以上10年以下の拘禁刑」が科されることになります。

    不同意わいせつ罪の罰則には罰金刑が法定されていないため、実刑判決が下されると必ず刑務所に入ることになります。

    なお「拘禁刑」は、懲役刑と禁錮刑を一本化した自由刑で、2025年6月1日に施行されます。従来の懲役刑とは異なり、刑務作業を義務化せず、指導や教育に重点を置くことで受刑者の自発性や自立性を尊重し、必要な支援を提供することを目的としています。

  3. (3)不同意わいせつ罪と強制わいせつ罪の違い

    令和5年の刑法改正により、従来の「強制わいせつ罪」は「不同意わいせつ罪」に変わりました。

    両罪の違いは以下の通りです。

    強制わいせつ罪 不同意わいせつ罪
    処罰対象 暴行または脅迫による、わいせつな行為 被害者が、同意できない状態のわいせつな行為(暴行・脅迫以外も含む)
    公訴時効 7年 12年
    同意の有無にかかわらない若年者 13歳未満 16歳未満


    改正により、被害者の心理的状況を考慮して、より幅広いケースを処罰できるようになりました。

    また、経過すると検察官が被疑者を起訴できなくなる「公訴時効」も5年延長されました。さらに、16歳未満の者に対してわいせつな行為を行った場合、たとえ相手が同意していたとしても、原則として不同意わいせつ罪として処罰されることになります。

3、不同意わいせつの示談成立は弁護士のサポートが重要

不同意わいせつ罪を起こしてしまった場合、示談成立によって、その後の結果が大きく変わります。

では、示談を成立させるためには、どのようにすればよいでしょうか。重要なポイントを3つ紹介します。

  1. (1)交渉を弁護士に依頼する

    示談交渉は、原則的には加害者と被害者の話し合いによって行われるものです。しかし、強制わいせつ事件を含む性犯罪では、当然のことながら、被害者が加害者に対して激しい嫌悪感情を抱いています。

    被害者が知り合いで連絡先を知っている場合でも、加害者が直接連絡することは避けるべきです。被害者の被害感情をこれ以上悪化させないためにも、交渉は加害者本人ではなく、弁護人に任せることをおすすめします。

    まず、弁護士は事件の第三者であり、守秘義務があります。これまで示談を拒否していたケースであっても、弁護士が間に入ることで被害者が示談交渉に応じることがあり、示談が成立する可能性が高まります。また、弁護士であれば、被害者が過剰すぎる示談金を請求してくることがあっても、素早く事態に対応し、適正な金額で交渉することも可能です。

    さらに、加害者が逮捕されれば、逮捕から48時間は家族でも接見できなくなりますが、弁護士ならば接見が可能です。いち早く自由の身になれるよう、アドバイスが行えます。

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  3. (2)できるだけ早く示談を成立させる

    強制わいせつ事件における示談は、いつ成立するかによって、加害者が受けることのできるメリットの大きさが変わります。

    以下に示すとおり、示談成立が遅くなればなるほど、メリットが小さくなる点に注意が必要です。

    • 示談成立タイミング:① 事件化前
      示談により被害届が提出されなければ捜査が開始されるケースは少なく、逮捕もされない可能性が高まります。

    • 示談成立タイミング:② 起訴前
      逮捕されてしまっても、起訴前の示談で不起訴処分となれば、身柄を釈放され、前科もつかない可能性が高まります。

    • 示談成立タイミング:③ 起訴後
      強制わいせつで起訴されれば、公判や有罪はほぼのがれることはできないでしょう。ただし、示談を成立しておけば、執行猶予付き判決を下される可能性や、刑期が短くなる可能性が高まります。


    このように、示談を成立させることには、時期によってそれぞれ得られるメリットが異なります。前科をつけず、社会生活への復帰を容易にするためには、少なくとも起訴前に示談を成立させることが重要です。

    加害者になった場合は、できるだけ早いタイミングで弁護士に相談することをおすすめします。

  4. (3)宥恕(ゆうじょ)項目を盛り込む

    「宥恕」とは、「被害者が加害者を許す」という意味です。前述のとおり、加害者が示談を成立させる大きな目的は、被害者に許しを請い、自らの刑事責任について、逮捕の回避や減刑など、できるだけ悪化させないことにあります。

    「被害者は加害者を許した」という文言を入れることで、検察官や裁判官の心証に大きな影響を与えます。

    通常、示談金など、相手に対する謝罪となる項目のほかに、「宥恕」項目として被害届や告訴の取り下げについても盛り込み、示談を成立させるケースが一般的です。文章として「宥恕項目」を降りこむことで、被害者の処罰感情が緩和されていることを示します。

    弁護士は、加害者の刑事責任を軽減させる示談になるよう、示談書作成に尽力します。

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4、まとめ

今回は、強制わいせつ罪と示談について、示談の意味や不成立の場合のリスク、交渉のポイントなどを紹介しました。

強制わいせつ事件を起こしてしまったら、2度と同じ過ちを犯さないと誓うとともに、できるだけ早いタイミングで示談を成立させることが重要です。示談の成立によって逮捕や起訴を回避する可能性を高めることができ、いち早く日常を取り戻せる可能性が高まるでしょう。

適切な示談を成立させるためには、弁護士のサポートは必要不可欠といえます。依頼の際は、刑事事件対応の経験が豊富な弁護士を選ぶことが大切です。

強制わいせつの疑いによる逮捕の心配がある場合は、ベリーベスト法律事務所 堺オフィスへまずはご連絡ください。

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