息子が逮捕! 公然わいせつ罪とは? 家族ができる対応方法を弁護士が解説します

2018年09月19日
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息子が逮捕! 公然わいせつ罪とは? 家族ができる対応方法を弁護士が解説します

警察からの連絡というと、何も悪いことをしていなくても驚きますよね。その連絡が「息子が公然わいせつ罪の疑いで逮捕された」という家族の不祥事であれば、一層驚くものでしょう。残された家族としては、どのように対処すればよいのかわからず、困惑することもあるかと思います。

そこで今回は、まず、公然わいせつ罪とはどのような犯罪なのかを、ベリーベスト法律事務所 堺オフィスの弁護士が解説します。さらには、夫や息子などの家族が逮捕されてしまった場合、連絡を受けた家族は、どのように対処したらいいのかについても、詳しく紹介します。ぜひ参考にしてください。

1、公然わいせつ罪とは

  1. (1)公然わいせつ罪の法律的意味は?

    公然わいせつ罪とは、「公然」と「わいせつな行為」をした場合に成立する犯罪で、公園や通りなど人の目に触れる場所で、わいせつな行為をしたときに成立します。刑法では、以下のとおり定められています。

    第174条
    公然とわいせつな行為をした者は、6月以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

    「公然」とは、不特定または多数の人が認識することが出来る状態を指します。現実に目撃者などの被害者がいなくとも、不特定または多数の人が認識する可能性がある状態であっても、「公然」にあたります。インターネットのリアルタイムな動画配信は、たとえ閲覧者がいなくても、また、自分の愛車の中であっても、不特定または多数の人の目に触れる可能性がある場合は、「公然(こうぜん)」にあたります。

    「わいせつ行為」とは、性欲を刺激、興奮または満足させる行為であり、他人に性的嫌悪感や羞恥心を抱かせたり、性的秩序を乱したりするような行為を指します。社会常識として、性的と判断される行為がこれに該当します。一般的には、全裸でいること、局部をさらす行為、性行為を公開する行為などを指します。

  2. (2)公然わいせつ罪の構成要件は?

    公然わいせつ罪の構成要件として、主に、「実行行為」があったか、また「故意」が認められるか否かの2つのポイントが問われることになります。

    公然わいせつ罪における「実行行為」とは、条文のとおり「公然とわいせつな行為」を指します。具体的には以下のようなケースが該当します。

    • 路上で全裸になる、もしくは局部をさらす
    • 駐車場などで性行為を行う
    • インターネットを介してリアルタイムで裸体や性行為を配信する(リアルタイムでない場合は、わいせつ電磁的記録媒体陳列罪という別の罪に問われます)


    次に、公然わいせつ罪の「故意」ですが、その行為について本人が認識し、認容していることが、法律の構成要件となります。たとえ、本人が「公然と」という法律的な意味を正確に理解しておらず、公然とわいせつな行為をした場合でも、実際の行為と客観的状況についての認識・認容があれば、公然わいせつ罪に問われます。

    たとえば、本人が、誰もいない駐車場で性行為を行ったとしましょう。本人は、性行為をしたことについては認めており、ほかに車がなかったため、「公然と」わいせつな行為をした認識はなかったとしましょう。この場合、本人の認識では、公然わいせつ罪を犯している意思はありませんが、客観的に、駐車場という不特定または多数の人が認識することが出来る公共の場で性行為をしたという認識・認容があれば、「故意」が認められ、公然わいせつ罪に問われます。よって、逮捕される可能性があります。

  3. (3)公然わいせつ罪での逮捕の方法は?

    公然わいせつ罪での逮捕には、主に2つの方法があります。

    一つは、現行犯逮捕で、もう一つは、通常逮捕です。

    現行犯逮捕は、犯罪行為が行われているその最中かその直後、あるいは、犯人として連呼されていたり、犯罪に使った凶器を所持していたり、身体または被服に明らかに犯罪の痕跡があるような者で、犯行後間もないと明らかに認められる場合に認められます。冒頭の例は、駐車場に停車中の車内での性行為が目撃され、その目撃者の通報により現行犯逮捕されたものです。この場合、警察は逮捕状がなくても逮捕できます。

    他方、通常逮捕は、現行犯逮捕の場合のように、犯罪行為と時間的近接性はありません。目撃者(被害者)などからの申告から捜査を進め、証拠を収集し、捜査機関が裁判所に対して逮捕状を請求し、裁判所が逮捕状を発付し、逮捕令状に基づき、警察が被疑者を逮捕します。個別の案件によりますが、犯罪行為から逮捕までにおおよそ1ヶ月から3ヶ月要するでしょう。公然わいせつにあたる行為をした後に、時間が経っても警察が来ないといって安心できないものです。現代は、街中に防犯カメラがあふれ、ICカードなど個人を特定する物も多く、また、スマートフォンを用いて目撃者に容易に撮影され得る時代です。

    公然わいせつ罪においては、一般的に現行犯逮捕が多数を占めるといってよいでしょう。しかし、通常逮捕の例も決して少なくありません。

  4. (4)公然わいせつ罪の刑罰は?

    公然わいせつ罪の刑罰は、刑法174条に記されているとおり「6ヶ月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金、または拘留もしくは科料」です。

    痴漢といった強制わいせつ罪や強制性交罪など、被害者の人権(個人的法益)を踏みにじる罪とは異なり、公然わいせつ罪は、健全な性秩序(社会的法益)を害する罪であり、具体的な目撃者(被害者)がいなくても罪が成立します。性犯罪の中では、比較的軽微の刑罰が定められています。

    初犯で反省しているケースなどでは、低額な罰金で済むことも少なくありません。

2、逮捕後の流れは、どうなる?

  1. (1)現行犯逮捕後の流れは?

    公然わいせつ罪が特定の目撃者(被害者)がいないことの多い犯罪だからと言って、身柄を拘束されたり、起訴されたりする心配がないわけではありません。

    逮捕された場合は、逮捕から48時間まで、警察での捜査・取り調べが行われます。警察は、この間の捜査・取り調べを通じ、被疑者の身柄を事件記録一式とともに検察に送るかどうか(送検)の判断をします。

    送検されると、検察官は、引き続き捜査・取り調べを行います。さらに捜査が必要と判断されれば、24時間以内に裁判官へ勾留請求を行います。裁判官が勾留の裁判をすると、被疑者は勾留請求の日から10日間、延長が必要であればさらに10日間(合計20日間)、勾留されます。この勾留期間中に、検察官は起訴するかどうかを決定します。

    つまり、起訴されるかどうかは、逮捕から72時間+20日間の23日以内に決定されることになります。起訴されれば刑事裁判となり、さらに勾留される可能性があります。不起訴となれば、その時点で解放となります。早期の身柄解放のためには、この間にどれだけ弁護活動できるかどうかが非常に重要です。

  2. (2)逮捕された当人の心がけは?

    実際に、公然わいせつ罪で逮捕された場合、本人はどのように対処したらいいのでしょうか。

    被疑者当人の犯行に間違いないのであれば、事実を認め、反省の態度を示すことで早期に身柄が解放される可能性も高まります。

    もっとも、故意ではないなど冤罪(えんざい)の疑いがあれば、法律の専門家に相談しましょう。

  3. (3)被疑者が未成年者のときは?

    公然わいせつ罪で逮捕された被疑者が未成年である場合、本人および家族はどう対処したらいいのでしょう。

    被疑者が未成年の場合は、成年の場合と手続きが異なります。成年の場合は、検察の捜査が終わり、起訴されると、刑罰を与えるための刑事裁判へ移行します。これに対して、未成年の場合は、検察の捜査が終わると、事件記録一式を家庭裁判所に送致し、家庭裁判所が、処罰を与えるためではなく更生のための措置を審理・判断していきます。なお、検察の捜査段階で勾留された未成年であれば、家庭裁判所送致後、少年鑑別所で身体拘束を受ける可能性が高いです。この身体拘束期間は、家庭裁判所の審判(成年の刑事事件における刑事裁判に類する手続き)まで、おおよそ4週間に及びます。

    家庭裁判所の審判では、未成年の更生を第一に考え、どのような処遇が適切か判断します。処遇の中には、少年院送致(身体拘束を伴う処遇)や保護観察(身体拘束を伴わない処遇)があります。

    「自分は何もやっていない!」と無実を証明したいのであれば、弁護士に相談し適切なアドバイスに従い慎重に対応していくことが必要です。

    他方、自らのやった事に間違いないケースでは、深く反省し、更生の意思を示すことで罪を宥恕してもらうように弁護活動します。通報者や目撃者を被害者同様に扱う公然わいせつ罪では、被害者に深く謝罪し、被害弁償を行い、示談を締結し、被害者の被害感情を少しでも和らげ、被害回復を図る努力も欠かせません。

  4. (4)逮捕後の家族の対処法は?

    公然わいせつ罪は現行犯逮捕で被疑者の身柄が拘束され逮捕されるケースが多数を占めます。突然の逮捕により、家族はもちろんのこと、被疑者も大変不安になるでしょう。

    家族の希望があっても、逮捕後の72時間は被疑者と面会はできません。
    しかし、弁護士であれば、被疑者に接見し、早期の身柄解放を含めた必要な弁護活動をすることができます。場合によっては、前科にならない、不起訴処分のための弁護活動も行います。逮捕されたタイミングで、できるかぎり速やかに法律の専門家である弁護士のアドバイスを受けることをおすすめします。

3、まとめ

公然わいせつ罪は、性犯罪の中でも比較的軽い犯罪と言えます。
しかしながら、公然わいせつ罪で逮捕され長期に身柄を拘束されてしまうと、大学や職場にも逮捕の事実を隠せなくなり、不利益を被ることになりかねません。場合によっては、今後の人生に不利益が発生するケースも出るでしょう。

もし家族が公然わいせつの容疑で逮捕されてしまったら、できるだけ早く弁護士に相談し、専門家の適切なアドバイスを受けることをおすすめします。起訴されてしまえば、99%が有罪となるといわれています。一刻も早い対応が求められるといってよいでしょう。まずは、ベリーベスト法律事務所 堺オフィスまで相談してください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています