痴漢でも後日逮捕はあり得る? 後日逮捕のパターンや期間を堺市の弁護士が解説

2018年08月07日
  • 性・風俗事件
  • 痴漢
  • 後日逮捕
痴漢でも後日逮捕はあり得る? 後日逮捕のパターンや期間を堺市の弁護士が解説

堺市には南海本線や南海高野線などが横断しており、特に通勤時間帯をピークに電車内は混雑していることが多くあります。そのような乗車環境では、ときには痴漢の加害者として疑われることがあるかもしれません。痴漢を疑われてしまっても、その場で逮捕されなければ問題はないのでしょうか。

たしかに、痴漢は現行犯逮捕のイメージが強いかもしれませんが、実際には後日逮捕をされる可能性もあります。
今回はそんな痴漢の後日逮捕について、捜査や逮捕のパターンや、逮捕されるまでの期間についてご紹介します。実際にはケース・バイ・ケースでもありますが、少しでも気にされている方の参考になれば幸いです

1、痴漢をすると問われる罪と逮捕される理由

後日逮捕について見ていく前に、まずはそもそも痴漢がどのような罪に問われるのか、確認しておきましょう。

  1. (1)痴漢の主な罪名は「迷惑防止条例違反」と「強制わいせつ罪」

    痴漢とは主に、性的な行為を相手の意に反してすることです。卑猥な言葉を吐くことも痴漢になる可能性がありますが、主な検挙例は、電車や夜道などで相手に直接触る行為です。

    痴漢をすると罪に問われますが、その罪名は「痴漢罪」ではなく、都道府県で制定されている迷惑防止条例の違反か、刑法で規定されている強制わいせつ罪です。大阪では、公共の乗り物(バス、電車など)や公共の場で身体に触れた場合に問われます。後者は、暴行や脅迫を手段に相手にわいせつ行為をした場合に問われます。
    なお、強制わいせつ罪は相手が13歳未満の場合は、暴行や脅迫を手段とせず、また、被害者の承諾があっても罪に問われます。

    痴漢事件で迷惑防止条例違反と強制わいせつ罪のどちらが適用されるかはケース・バイ・ケースですが、ひとつの判断基準としては、「触ったのが衣服の上からなのかそうでないのか」という点です。

    強制わいせつ罪…衣服の中に手を入れて直接相手を触った場合
    迷惑防止条例違反…衣服の上から相手を触った場合

    堺市の場合、迷惑防止条例違反の刑罰は6ヶ月以下(常習は1年以下)の懲役又は50万円(常習は100万円以下)の罰金となります。

    一方、強制わいせつ罪の場合は6ヶ月以上10年以下の懲役となります。罰金刑はありません。

2、2017年の刑法改正により、性犯罪が厳罰化へ

2017年の法改正以前は、迷惑防止条例違反と強制わいせつ罪には大きな違いがありました。
それは、「親告罪」か「非親告罪」か、という違いです。

2017年以前と現在では、このように変わっています。

  迷惑防止条例違反 強制わいせつ罪
2017年以前 非親告罪 親告罪
2017年以降 非親告罪 非親告罪

親告罪
簡単に言うと、被害者が、加害者の処罰の捜査機関に求めること(告訴)が無ければ、刑事裁判できないということです。

非親告罪
簡単に言うと、告訴がなくても刑事裁判ができるということです。

2017年以前は、「強制わいせつ罪」の場合には被害者が告訴しない、または告訴を取り下げることにより処罰を免れることができていました。
しかしながら、法改正により、現在は強制わいせつ罪も「非親告罪」となり、被害者が告訴しなくても処罰される可能性があります。

3、警察は何をもとに痴漢の捜査を行うのか

現行犯ではなく後日逮捕になる場合、警察は現場を見ていないこともあるでしょう。その場合は何をもとに捜査を行うのか、パターンをいくつかご紹介します。

※それぞれ分けてご紹介しますが、ある事件の捜査でひとつの証拠しか利用しないわけではなく、場合によっては複数の証拠を合わせて利用することもあります。

  1. (1)被害者の供述をもとにするパターン

    痴漢事件の捜査でまず重要なのは、被害者の供述です。そもそも痴漢の場合、捜査は被害者からの申告で始まるケースがほとんどです。
    被害者が警察や駅員などに通報をし、現場で捜査が始まります。被害者の供述は捜査のきっかけとして、また、証拠としても非常に重いものです。

  2. (2)周囲の証言をもとにするパターン

    捜査のためには、被害者だけでなく、周囲に居合わせた者の証言も取られます。特に複数人からの証言は、証言内容の信ぴょう性を高めます。

  3. (3)加害者のDNAをもとにするパターン

    証拠になるのは目撃証言だけではありません。たとえば加害者の皮膚の一部が被害者についていた場合には、そのDNAが証拠となる場合もあります。

  4. (4)防犯カメラの映像をもとにするパターン

    駅などに設置されている防犯カメラの映像も、痴漢の捜査に使われる極めて重要な証拠です。防犯カメラの映像には、服装、身長、身体的特徴、人相など、人物を特定するための情報が豊富に映っている可能性があります。そのため、逃走後もどのような人物が痴漢をしたのかを捜査することが可能です。
    電車内に防犯カメラが設置されている場合は、痴漢をしている現場が映っている可能性もあります。首都圏では電車内に防犯カメラを設置することが急ピッチで進んでおり、大阪でも試験導入されています。

  5. (5)その他

    現在、電車に乗るときには電子マネーを利用する人が多く、この情報も痴漢の捜査に使われるようです。

    以上のように、痴漢捜査はさまざまな情報をもとに行われます。

4、痴漢の後日逮捕はいつ、どのように行われるのか

痴漢の後日逮捕のイメージは、テレビでよく見るように、警察がある日突然逮捕状を持参して自宅にやってきて玄関先で逮捕されるというイメージがあるかもしれません。
しかし、現実的にはそのようなパターンよりも、先に警察から「話を聞かせてもらいたい」と連絡があり、任意同行で警察署で取り調べを受けた後、逮捕されるというパターンも多くあります。

また捜査期間の見込みですが、逮捕までの期間が法律で決まっているわけではなく、捜査の進み具合や捜査機関の忙しさ等により一概にいうことはできません。例えば、防犯カメラをもとに捜査する場合であれば、膨大な数の防犯カメラをチェックし、人物の行動履歴を追跡することになるので、捜査期間も相当長くなることでしょう。犯行が相当期間が経過し、発覚しないと思っていても、思わぬタイミングで逮捕されることも十分考えられます。

5、まとめ

今回ご紹介したように、痴漢の場合は現行犯逮捕されなくとも、後日逮捕されることが十分にあります。後日逮捕までで相当期間が経過してもおかしくありません。当事者にとっては、いつ警察が連絡・訪問をしてくるのか、もし逮捕されてしまった場合はどうすればよいのかなど、不安なことも多いでしょう。

痴漢事件を起こしてしまい後日逮捕を心配されている方は、できるだけ早くベリーベスト法律事務所 堺オフィスの弁護士までご相談ください。当事務所には刑事弁護専門のチームがあり、事件に逮捕や示談といった場面で相談者の方をサポートいたします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています