児童買春をしてしまったら自首したほうがいい? 自首の条件とメリット
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平成31年3月、大阪府在住の20代の男性が18歳未満の女性にお金を払ってみだらな行為をしたとして、児童買春・ポルノ禁止法違反の疑いで逮捕されたという報道がありました。
日本では、18歳未満の児童に対して金銭を支払い、性交渉等を行う「児童買春」は違法な行為です。事件が警察に露見してしまうと逮捕される可能性があります。本コラムでは、児童買春をしてしまい反省しているもののまだ逮捕されていない方、警察に知られていない方が今後どうすべきかについて、ベリーベスト法律事務所・堺オフィスの弁護士が解説します。
1、自首の基礎知識と成立の要件
「自首」というと、「犯人として警察などに申告すること」と考えるかもしれません。しかし、刑法上の「自首」が成立するためには3つの要件を満たす必要があります。
まずは自首について規定されている刑法第42条を確認しましょう。
- 罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる。
- 告訴がなければ公訴を提起することができない罪について、告訴をすることができる者に対して自己の犯罪事実を告げ、その措置に委ねたときも、前項と同様とする。
刑法第42条には上記の条文しかありませんが、実際には下記の3要件を満たさなければ、自首の条件に当てはまりません。
- 犯罪が警察などの捜査機関に発覚する前に申告すること
- 罪を申告して自己の訴追を含む処分を委ねること
つまり、児童買春の場合で自首を成立させるためには、児童買春が警察に発覚する前に、警察に罪を犯したことと処分を委ねることを申告しなければならないのです。
すでに、警察に犯罪が発覚している場合は、罪を申告しても「自首」扱いにはなりません。すでに犯罪が発覚している事件で自ら罪を犯したことを申告することは「出頭」と言います。
2、自首した方が良い理由とは
児童買春において、自首のメリットは非常に大きいと言えます。ここでは、自首するメリットについて説明します。
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(1)刑が軽くなる可能性がある
まず大きなメリットとしては、先述の刑法第42条で明記されているように「減軽」が見込めることです。
児童買春の場合、懲役は「5年以下」と規定されています。しかし、刑事事件において「執行猶予」がつく条件は「懲役3年以下」です。つまり、4年以上の判決が下された場合は、初犯でも執行猶予がつかずに、すぐに服役しなければならない可能性があります。しかし、自首すれば刑が軽くなることが見込めますので、懲役刑を回避できる可能性が高まるのです。 -
(2)身柄の拘束を回避できる可能性がある
逮捕や勾留をされてしまえば、起訴か不起訴かが決まるまでだけでも最長23日間仕事や学校へ行くことはできません。特に、地方の場合は児童買春事件が新聞等に掲載されてしまい、会社を解雇されるなどの甚大な影響が出ることが少なくありません。
しかし、刑事事件では「逮捕」という身柄拘束が伴う措置を受けずに「在宅事件」として自宅にいながら捜査を受ける場合もあります。そもそも、逮捕するためには逃亡や証拠隠滅の可能性があるなど、厳格な条件を満たさなければならないことが刑事訴訟法によって定められているのです。
まだ捜査機関に罪が発覚していない段階で自首することで、逃亡の恐れ等がないと判断されて、逮捕や勾留を回避できる可能性があるのです。日常生活への影響を最小限に抑えたまま取り調べに協力することができます。生活の基盤が崩れる可能性を減らすことができます。
3、児童買春事件の特徴とは
窃盗や器物損壊などは、損害賠償を行うことで比較的容易に示談が可能です。しかし、児童買春の示談交渉の相手は被害児童の親権者になります。非常に被害者感情が強く、当事者同士の示談交渉は困難です。被害者と顔見知りであればなおさらでしょう。
また、警察等の捜査機関は加害者側に被害者の情報を開示しません。したがって、加害者本人や家族が被害者児童の親等の連絡先を知り、自ら示談交渉をすることは難しいと考えられます。
被害者との示談を早急に進めたい場合は、弁護士に示談交渉を依頼することになるでしょう。もし、警察に児童買春行為が発覚する前で、被害者の連絡先等を把握している場合は、先に弁護士に相談することで、示談交渉に着手できるようになる可能性が高まります。
4、児童買春で逮捕された場合におけるその後の流れ
次に、児童買春で逮捕された後にどうなるのかを説明します。
●警察と検察による最大72時間の取り調べ
児童買春で逮捕されたら、まずは警察によって48時間、その後検察によって24時間の取り調べや捜査を受けます。検察官は、24時間以内に「勾留が必要かどうか」を判断します。
●勾留の判断
勾留とは10日間、必要がある場合は最大20日間、留置所や拘置所に身柄を拘束する措置です。勾留されてしまうと、学校や職場に行くこともできませんし、自宅にも帰れません。児童買春した事実を隠しきれず、知れ渡ってしまう可能性があります。
しかし、自首をした場合は前述の通り「勾留不要」と判断される可能性が高くなります。なぜならば、勾留は「犯人が逃亡する恐れがある場合」、「犯人が証拠隠滅する可能性がある場合」、「住居が定まっていない」という事由に該当しなければ、することができないからです。
特に住居があり同居家族がいる方が自首をした場合は、逃亡する恐れも、証拠隠滅の可能性もないと判断されて、勾留されない可能性がありなす。勾留を回避できれば、児童買春で逮捕された影響を最小限に抑えることができるでしょう。
●起訴、不起訴
勾留された場合は最大20日間、勾留されなかった場合は捜査機関の捜査が完了する数ヶ月以内に「起訴・不起訴」が判断されます。起訴と判断されれば、刑事裁判が開かれます。不起訴の場合は前科がつきません。
●刑事裁判
日本では刑事裁判が開かれると99.9%が有罪になると言われており、児童買春容疑で起訴されれば無罪になる可能性は非常に低いと考えます。児童買春で有罪になった場合の刑の範囲は、「5年以下の懲役または300万円以下の罰金」です。先述の通り、4年以上の判決になる場合は、執行猶予をつけることができませんが、自首することで刑が軽くなる可能性があります。したがって、罪状によっては執行猶予付き判決が望めます。
執行猶予付き判決が下れば、執行猶予期間中に再び罪を犯し有罪にならない限りは、刑務所に服役する必要がありません。執行猶予付き判決の可能性を高めるという点でも、自首しておくことが非常に重要と言えます。
5、弁護士に依頼する3つのメリット
児童買春においては、自首前に弁護士に依頼することで、よりあなた自身の権利を守れる可能性が高まります。
本項では、自首前に弁護士に依頼する3つのメリットを説明します。
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(1)自首に同行することで逮捕の可能性が低くなる
児童買春をされた方が自首をすると、逮捕の可能性が低くなりますが、さらに弁護士に同行してもらうことで、逮捕リスクを大幅に減少させることができます。
たとえば、弁護士を依頼していることなどによって、逃亡の危険性はないとみなされる可能性があります。また、取り調べの際もサポートすることが可能です。逮捕を回避できれば勾留されない可能性が高いいため、身柄の拘束を受けずに捜査や取り調べを受けることができます。 -
(2)示談交渉がスムーズに進む
児童買春は、被害者の親にとって非常に深刻な問題で示談が困難と言われています。しかし、弁護士が間に入ることで比較的冷静に交渉できる可能性を高めることができます。
検察官が児童買春で起訴するかどうかの判断において、「示談の成立」は非常に大きな判断材料です。示談が成立していて、被害者が罪を問わないとしていて、かつ本人が反省の意を表していれば不起訴になる可能性もあるのです。
不起訴処分になれば、刑事裁判が開かれず無罪放免になります。もちろん前科もつきません。したがって、速やかに示談交渉すべきでしょう。そのためにも、弁護士による情報開示請求と冷静な示談交渉が必須といえます。 -
(3)児童買春を否認できるケースもある
児童買春の罪が成立するためには、「金銭を支払ったこと」と、「相手が18歳未満であることを知っていたこと」などの要件およびその認識を満たさなければなりません。もし、相手が18歳未満だと知らなければ、児童買春に問われない可能性があるのです。
ただ、18歳未満であると知らなかったと主張するためにはさまざまな証拠が必要になります。弁護士に依頼して証拠を集めることをおすすめします。
6、まとめ
児童買春行為をしてしまった場合、警察などの捜査機関が犯行を知るまでに罪を申告すれば「自首扱い」となりえます。情状を酌量されたり、在宅事件として取り扱われて身柄が拘束されなかったりと、社会的影響を最小限に抑えられる可能性があります。
あらかじめ弁護士に相談することで、自首する際、弁護士が同行して身柄の拘束を回避できる可能性が高まります。さらには、被害者との示談成立に向けた行動をとることができるでしょう。
あなたが児童買春行為をしてしまって悩んでいるのであれば、警察に事件が露見する前になるべく速やかに、状況に応じて自首や示談などの行動を起こさなければなりません。しかし、状況によっては自首とならない可能性もあるため、まずはベリーベスト法律事務所・堺オフィスでご相談ください。状況に応じた最適な対応をアドバイスします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています