夫や未成年の息子が痴漢冤罪で逮捕!? そのとき家族は何をするべきか

2019年08月08日
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夫や未成年の息子が痴漢冤罪で逮捕!? そのとき家族は何をするべきか

平成26年、南海電車の車中で痴漢をしたとして会社員の男性が現行犯逮捕されました。ところが2年後の平成28年に誤認逮捕だったとして、大阪地裁堺支部により無罪判決が言い渡されています。検察も控訴を断念したと報道されました。

痴漢で悩む女性がいる一方で、冤罪に苦しむ男性も存在します。この男性のケースでは、無実の罪が晴れるまでに約2年の時間を要しました。ご主人や未成年のご子息が痴漢の冤罪で逮捕されたご家族は、冤罪を晴らすために何をすべきかがわからずに、困惑されていることでしょう。そこで本記事では、家族が痴漢の冤罪で逮捕された方に向けて、知っておくべきことや家族ができることについて、堺オフィスの弁護士が解説します。

1、痴漢の逮捕について

まずは痴漢で逮捕された場合に知っておくべき、基礎的な知識を説明します。

  1. (1)警察以外による逮捕もある。痴漢は現行犯逮捕が多い

    痴漢の逮捕は、現行犯逮捕と後日逮捕の2種類があります。いままさに犯罪が行われている際の逮捕は現行犯逮捕です。それに対して後日逮捕は、捜査機関が捜査を進め、罪を犯したことが確かであると判断した際に行われるのが、後日逮捕です。後日逮捕は、警察が裁判所に逮捕状を請求して、発行されなければ行うことはできません。

    痴漢の場合は、犯行現場で取り押さえられる現行犯逮捕が多い傾向にあります。朝、通勤や通学などで出掛けた家族が痴漢で逮捕されたと連絡を受けた場合は、現行犯逮捕の可能性が高いでしょう。現行犯逮捕は、逮捕状が不要で、警察などの捜査機関だけでなくその場に居合わせた一般人や駅員でも可能です。

    後日逮捕は、防犯カメラの映像などをもとに行われますので、誤認逮捕は少ないのですが、現行犯逮捕は、確かな証拠がなくても可能なので、冤罪も起きやすいと考えられます。

  2. (2)逮捕=有罪ではない

    実は、痴漢で逮捕されたからといって有罪が確定するわけではありません。逮捕は、逃走や証拠の隠滅を避けるための措置であり、罪の有無を決めるものではありません。逮捕された後に、捜査機関や検察による取り調べや捜査が行われたのち、刑事裁判を開くかどうかを判断して、刑事裁判が開かれて初めて有罪か無罪かが決まります。
    つまり、逮捕されたからといって悲観的になる必要はなく、逮捕されてから有効な弁護活動を行うことで、起訴を回避、もしくは無罪を勝ち取ることも不可能ではありません。

2、痴漢で逮捕された後はどうなるか

次に、痴漢で逮捕された後の流れについて説明します。20歳以上の成人の場合と20歳未満の未成年の場合で、手続きが異なりますので、それぞれのケースについて解説します。

  1. (1)逮捕

    成人未成年問わず、逮捕されてから72時間は身柄が拘束されます。そのうち48時間は警察による取り調べ、その後の24時間は検察官による取り調べや捜査が行われます。
    この72時間は、家族であろうとも面会ができないため孤独な時間が続きます。特に、警察の取り調べでは厳しく追及されますので、焦燥する方が少なくありません。

    特に痴漢の冤罪の場合は、自白を求めて取り調べが続きますので、冤罪を訴えている方でも、無実の罪を認めることが少なくないほどです。警察による取り調べで話した内容は調書に記録され、重要な証拠となりますので、取り調べでの言動が非常に重要となります。冤罪の場合は、罪を認める発言をすると、不利な状況に追い込まれてしまいます。

    警察による48時間の身柄拘束ののち、検察に事件が引き継がれると、検察官は勾留が必要かどうかを判断します。勾留は、逃亡の恐れや証拠隠滅の危険性があるときに取られる措置です。

  2. (2)勾留もしくは少年鑑別所での観護措置

    逮捕から72時間が経過すると、成人の場合は勾留、未成年の場合は勾留もしくは、少年鑑別所での観護措置が取られる可能性があります。

    ●勾留
    勾留とは留置場や拘置所に身柄を拘束される措置です。原則として10日ですが、必要に応じてさらに10日延長され最大20日間続きます。勾留期間が満了するまでに検察官は、起訴するかどうかを判断します。勾留されると、学校や職場に行くことができないため、痴漢の冤罪による影響が甚大になります。痴漢の冤罪で、罪を認めていない場合は、「証拠隠滅の恐れがある」とされて勾留される可能性が高いと考えます。

    ●少年鑑別所での観護措置
    未成年の方が痴漢の冤罪で逮捕された場合勾留ではなく、少年鑑別所での観護措置がとられることが少なくありません。未成年は、成人よりもさらに勾留については慎重に判断する必要があるとされております。少年鑑別所に収容されると、犯行に及んだ経緯や家庭環境が調査されます。

  3. (3)起訴・不起訴の判断

    勾留期間が満了するまでに、検察官は起訴・不起訴を判断します。起訴と判断された場合は刑事裁判が開かれます。日本の刑事裁判の有罪率は99.9%と言われており、起訴されて有罪判決を免れることは難しいと言えます。
    しかし、不起訴と判断されれば、刑事裁判が開かれることはありませんし、前科もつきません。不起訴になるケースは多々ありますが、代表的なものが、被害者との示談が成立しているケースや、証拠不十分なケースです。痴漢冤罪では、証拠不十分による不起訴を目指すことになります。

3、弁護士への相談が最優先。家族が逮捕された場合にできること

痴漢で逮捕されると、逮捕後の72時間、さらに勾留の20日と長期間の身柄拘束が続くことになります。身柄拘束が続くと、学校や職場への影響を避けることはできず、場合によっては解雇や退学を命じられる可能性もあります。それを避けるためには、家族によって早急に弁護士へ依頼することをおすすめします。

  1. (1)弁護士への相談・依頼

    家族が痴漢の冤罪で逮捕されたら、できる限り早く弁護士に依頼してください。その上で本人と接見してもらい、不利な自白をしないためのアドバイスをしてもらいます。同時に、冤罪であることの証拠集めや弁護活動をスタートしなければなりません。
    痴漢を否認している場合、勾留回避は難しいと考えられますが、それでも早期に弁護活動を開始することで、勾留を回避できる可能性はゼロではありません。痴漢の冤罪の罪を晴らすため、また身柄拘束を避けるために、一刻も早く弁護士に依頼しましょう。

  2. (2)勾留阻止

    弁護士は、勾留阻止のための働きかけが可能です。家族の身元引受書や意見書などを提出することで、勾留の阻止を目指します。勾留阻止の働きかけにもかかわらず、勾留が認められたら、勾留に対する不服申し立てを行い、釈放を求めることもあります。

  3. (3)示談

    痴漢は絶対にしていないけど、身柄の拘束を解きたい、早く痴漢事件から解放されたいと望む方は、やむなく被害者と示談することもあります。被害者との示談が成立すれば、身柄も早期に釈放され、不起訴になる公算が高まります。痴漢をしていない方にとっては不本意ではありますが、社会生活を守るための選択肢のひとつと言えます。

  4. (4)冤罪であることを主張

    早期に弁護士に弁護を依頼することで、痴漢が冤罪であることを証明するための弁護活動が可能になります。現場調査などから痴漢行為が不可能であることを立証できれば、証拠不十分での不起訴も見込めます。
    未成年の場合は、全件送致主義といって、全ての事件が家庭裁判所に送致されますが、送致後に家庭裁判所に働きかけることで、審判不開始といって、少年審判が開かれない処分を目指すことも可能です。また、少年審判が開かれた場合も、罪を犯していないことを客観的に立証できれば、「不処分」を勝ち取れる見込みもあります。

4、まとめ

主人やご子息が痴漢の冤罪で逮捕された場合、ご家族ができることはなるべくはやく弁護士を手配して、身柄拘束中のご家族と接見してもらうことです。

痴漢冤罪では、多くのケースで逮捕後72時間は、家族と面会できず孤独な中で取り調べが進みます。そこで不利な自白をしてしまうと後々の処分に悪影響を与えることになるでしょう。

痴漢の冤罪は、初動の対応が重要になります。しかし、このタイミングでは国選弁護士の利用はできない点に注意が必要です。そこで、逮捕された本人やあなた自身が選任した弁護士に接見してもらい、適切なアドバイスをしてもらう必要があるでしょう。同時に、長期にわたる身柄の拘束や起訴を回避するための働きかけも重要です。身動きが取れるご家族がご主人やご子息にかわって速やかに弁護士を手配することをおすすめします。

ベリーベスト法律事務所 堺オフィスでは、痴漢冤罪の弁護を受け付けています。ご家族のため本人のために迅速に対応を開始します。逮捕されてからは時間との戦いになりますので、悩む前にまずはご連絡ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています