息子が痴漢で逮捕された場合、家族はどうすればいい?
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大阪府堺市を走っている市営地下鉄御堂筋線は、大阪の地下鉄の中でも利用客が多い路線であり、通勤・通学時には大変混雑しています。車内には痴漢防止ポスターが目立つように張られており、痴漢は珍しい犯罪ではないことがうかがえます。
もし、大学に入ったばかりの未成年の息子が痴漢で警察に逮捕されたと連絡が来たら、家族はどうすればいいでしょうか? 今回は、未成年の息子が痴漢で逮捕された場合、家族としてどうすればいいか、堺オフィスの弁護士が逮捕後の手続きの流れにそって説明します。
1、痴漢の刑罰
まず、痴漢はどのような行為として刑罰が定められているのでしょうか。
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(1)強制わいせつ罪
暴行、または脅迫を用いてわいせつな行為をした場合、刑法第176条に定める強制わいせつ罪として、6ヶ月以上10年以下の懲役が科されます。たとえば、満員電車で混雑のため被害者が身動きできないような状況でわいせつ行為をした場合、強制わいせつ罪が成立する余地があります。
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(2)迷惑行為禁止条例違反
衣服の上から身体を触るなどをした場合は、地方公共団体がそれぞれ定める迷惑行為禁止条例に違反する行為となります。
大阪府では「大阪府公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」第6条1項1号、第17条1項2号で6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金に処すると定めています。
2、未成年が痴漢で逮捕された場合の流れ
次に、未成年者が痴漢容疑で逮捕された後の流れを解説します。たとえ未成年であっても、14歳以上であれば逮捕されてしまう可能性があります。しかし、その場合でも成年が受ける刑事手続とは異なり、少年事件手続として手続が進みますので注意してください。
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(1)逮捕後の取り調べと勾留
まず、身柄を拘束されて警察署で48時間以内の取り調べを受けます。その後検察に送致され、最大24時間の取り調べを受けます。この手続は、成年が受ける刑事手続と変わりません。
逃亡・証拠隠滅の恐れがあり、その後も身体拘束と取り調べが必要と判断された場合は、検察官から裁判所に勾留請求が行われます。これが認められると10日間、身体拘束が延長され、さらに、身体拘束が必要として検察官が勾留延長を請求し、裁判官が認めると、もう10日間勾留されます。つまり、警察に逮捕されてから最大23日間、勾留される可能性があるということです。この手続も、成年が受ける刑事手続と変わりません。
なお、未成年者の場合、勾留は、「やむを得ない場合でなければ」してはならないと少年法48条1項で定められており、成年の場合よりも要件が厳格化されています。また、勾留が未成年者に及ぼす弊害を考慮して、勾留に代わる観護措置(少年法43条1項)も認められています。勾留に代わる観護措置とは、心身ともに未熟な未成年者に配慮して、専門性の高い少年鑑別所で身体拘束を行うことを認める手続であり、期間は最大10日間に限られ、延長も認められません。この点は、成年が受ける刑事事件と大きく異なる点でしょう。 -
(2)家庭裁判所への送致
検察官による捜査が終了した場合、または、勾留が満期を迎えた時点で、少年事件はすべて家庭裁判所に送致されます。成年が受ける刑事事件であれば検察官の裁量で不起訴処分や起訴猶予処分とすることがあり、短期間で事件が終結することもありますが、少年事件では不起訴処分や起訴猶予処分という制度はなく、必ず家庭裁判所での事件処理を待つ必要があります。この点も成年が受ける刑事事件と大きく異なるでしょう。
事件が家庭裁判所に送致されたタイミングで、未成年者の心身の鑑別や審判を行うために必要がある場合に、家庭裁判所は、観護措置の決定を行います。観護措置とは、少年鑑別所に未成年者を身体拘束する手続であり、約4週間身体が拘束されることになります。逮捕段階から身体が拘束されているとすると、最大で50日ほど身体拘束が続くこととなります。
家庭裁判所では、家庭裁判所調査官という少年を観察する専門家によって被疑者本人や保護者、学校からの聞き取り、心理テストなどの調査が実施されます。 -
(3)少年審判による処分の決定
少年審判は成人の刑事裁判に相当する手続です。しかし、刑事裁判とは異なり、未成年者を処罰することを主たる目的で行われるのではなく、未成年者に対する保護・教育的配慮のもとで行われるものであり、審判は非公開を原則とし、裁判官が少年を諭す、導くという形で手続が行われます。少年審判で下される終局決定には以下の5つがあります。
•不処分
審判の結果、保護処分に付することができず、または保護処分に付する必要がない場合は、不処分決定となります。非行の事実(犯罪行為の事実)がない場合や、要保護性が解消された場合(未成年者の問題性が解消された場合)がこれにあたります。
•保護観察(保護処分)
保護観察とは、社会内処遇によって未成年者の改善更生をはかる処分です。未成年者は、少年院送致と異なり、身体拘束を受けるわけではありませんが、保護観察官や保護司による指導・監督に服し、定められた遵守事項を守って更生に努めます。
•少年院送致
少年院送致とは、施設に収容した上で少年に対して矯正教育などを施し、社会生活に適応させる措置です。少年は、身体拘束を受けることとなり、おおむね6ヶ月から2年の範囲内で収容されることとなります。
•児童自立支援施設などへの送致
この処分は、少年の生育環境に問題があると判断された場合、児童の自立を支援する施設に入所させ、あるいは保護者の元から通わせ、児童の改善更生を図ります。
•検察送致(逆送)
この処分は、殺人や傷害致死などの故意の犯罪行為により被害者を死亡させた場合や、少年が審判開始前に20歳以上の年齢に達した場合に行われ、家庭裁判所は事件を再び検察官に送致し、未成年者は成人と同様の刑事手続を受けることになります。
3、まずは弁護士に連絡を
以上、説明してきたように、未成年が逮捕された場合成人とは一部異なる手続を経ます。場合によっては、未成年者の方が成年の場合よりも長期間身体拘束を受けることもあります。最初に警察に逮捕されてから検察の取り調べを経るまでの72時間の間は、家族とも面会ができず、心細い思いをすることには変わりはありません。
いえ、少年だからこそ、大人よりもずっと不安でしょう。警察の厳しい取り調べに、やってもいないことまで話してしまうかもしれません。やってもいないことについていったん警察で罪を認めてしまうと、少年審判で重たい処遇を決定され、社会に復帰することが非常に困難になりかねません。
そこで、もしお子さんが痴漢で警察に捕まってしまったら、家族の方は弁護士をすぐに呼んでください。弁護士ならば逮捕直後にも面会をすることでき、適切なアドバイスをして不安をやわらげ、もっともよい事件解決に導けるためです。
具体的には、弁護士は少年事件の早期解決に向けて下記のような行動をします。
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(1)面会
逮捕直後から未成年者に面会ができるのは弁護士だけです。警察の厳しい取り調べに対しても抗議できますし、黙秘権を告知したり、頻繁に面会したりすることで未成年者を励まし、アドバイスし、精神的に支えます。
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(2)示談交渉
被害者が存在する刑事事件の場合は示談が成立していると、加害者の十分な反省と被害の補てんがされたとみなすなど、処分を行う際の大きな判断材料になります。
痴漢行為に争いがない場合は、早急に示談を検討してください。もっとも、加害者と被害者が直接交渉することは、感情的な問題もあり難しいことが多いです。そのようなときは、第三者である弁護士が間に介入することで、交渉がスムーズに解決する場合があります。 -
(3)検察官、裁判官への働きかけ
意見書を提出して、勾留請求をしないよう検察官に求めたり、裁判所に準抗告を申し立てるなどして長期間身体を拘束される事態を回避するように活動します。もし、勾留が決定されてしまった場合でも、勾留に代わる観護措置をするよう働きかけて、身体拘束期間をより短く、かつ心身により良い環境で過ごせるように活動します。
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(4)学校や職場への対応
身体拘束が長期間に及ぶと、会社や学校などに逮捕されたことが知られてしまう可能性があります。少年事件の場合、家庭裁判所の調査官が調査に訪れ、そこから知られてしまう可能性もあります。
そのような場合であっても、少年が学校を退学処分になったり、会社をクビになったりしないように、裁判所や学校、会社に働きかけます。
4、まとめ
以上説明してきたように、少年事件は少年の更生を目的とした手続きとなっているため、成人とは異なる取り扱いがされます。
しかし、未成年者が警察に逮捕され、家族から引き離されて取り調べを受けた場合、非常に心細く不安になるでしょう。早く帰宅したい一心でやっていないことまで自白してしまい、取り返しがつかない事態に陥る可能性もあります。
そのような事態に陥らないよう、もしものことがあれば、すぐに弁護士を依頼することをおすすめします。まずはベリーベスト法律事務所 堺オフィスへお問い合わせください。痴漢などの刑事事件の経験が豊富な弁護士が、事実関係を確認した上で、状況に適した弁護活動を行います。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています