再逮捕とは? 再逮捕が行われるケースを堺オフィスの弁護士が解説

2019年12月11日
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再逮捕とは? 再逮捕が行われるケースを堺オフィスの弁護士が解説

令和元年6月、いわゆる「ひととき融資」における貸金業法違反容疑で逮捕されていた堺市の男が、児童買春・ポルノ禁止法違反容疑で再逮捕されたという報道がありました。

再逮捕という言葉は、特に重大事件においてよく耳にします。逮捕されたのに、また逮捕……、一刻も早い被疑者の釈放を願っていたご家族の落胆は、計り知れないものがあるでしょう。

再逮捕されるということは余罪が疑われているわけですから、やむを得ないと考える方もいるかもしれません。一方で、再逮捕の法的な位置づけや実際の運用については一般的にあまり知られていないようです。

そこで、本コラムでは再逮捕の仕組みや再逮捕が行われるケースをご紹介しながら、再逮捕の繰り返しにより勾留期間の長期化を防ぐためのポイントについて、ベリーベスト法律事務所 堺オフィスの弁護士が解説します。捜査機関の取り調べに適切に応じることで再逮捕の繰り返しを回避できる可能性もあるのです。

1、再逮捕とは?

逮捕とは、警察や検察などの捜査機関が事件の全貌を明らかにする過程で、被疑者の逃亡や証拠隠滅を防止するために、その身柄を拘束することをいいます。

さて、ニュースなどで登場する「再逮捕」とは、ある容疑で逮捕された被疑者の余罪が発覚したとき、その余罪について逮捕することです。冒頭で紹介した事件における再逮捕も、この流れを踏襲しています。

ただし、刑法学などにおける「再逮捕」の本来の意味は「同じ犯罪事実で再度逮捕・勾留すること」を指します。法律上明文化されていないものの、日本では「再逮捕・再勾留禁止の原則」というものがあります。これは実体法上、「ひとつの事件についての逮捕・勾留は原則として1回しかできない」とする原則です。

逮捕されてから起訴までの被疑者に対する身柄拘束は、刑事訴訟法において最大23日間までとされています。それにもかかわらず、ひとつの事件で再逮捕や再勾留を何回も認めると、法で定められた身柄拘束期間に関する規定が形骸化してしまいます。そればかりか、被疑者に対する重大な人権侵害にもつながりかねません。これが同一事件における再逮捕・再勾留が認められないとされる理由です。

あくまでも法律用語における「再逮捕」と、報道などでみかける「再逮捕」の意味は異なることに注意してください。便宜上、本コラムではニュースなどで一般的にいわれているような、逮捕された被疑者の余罪に対する逮捕を「再逮捕」として解説します。

2、どのようなケースで再逮捕されるのか

前述の通り、窃盗容疑で逮捕した被疑者を、同一の窃盗容疑で後日に再び逮捕することは原則ありません。窃盗容疑での逮捕後の取り調べで暴行行為をした疑いが浮上した場合に、暴行容疑で再逮捕するという流れになります。

一方で、捜査機関が本来の目的である窃盗の容疑を確実なものとするために暴行容疑で逮捕した場合は、最初の暴行容疑での逮捕を別件逮捕、これによる勾留を別件勾留と呼ぶこともあります。このように、再逮捕、別件逮捕は多くの罪状や関係者が存在する複雑な事件について、捜査戦術のひとつとして用いられることもあるのです。

また、被害者が複数いる場合は、同じ罪名の別の容疑で再逮捕されることもあります。たとえば、Aさんを殺害した容疑で逮捕された被疑者が、その後の取り調べでBさんも殺害していたことがわかった場合、Bさんに対する殺人容疑で再逮捕されることになります。

3、再逮捕後の流れについて

再逮捕されたあとの流れは、基本的に初回の逮捕と同じです。

  1. (1)逮捕

    再逮捕されると、警察の留置所または拘置所で身柄を拘束され、引き続き容疑を固めるための取り調べを受けることになります。逮捕から48時間以内に検察官への送致が妥当と警察が判断すれば送致します。

  2. (2)勾留

    事件と身柄が検察に送致されると、検察官は24時間以内に引き続き10日間の勾留が必要か否かを判断します。検察官が逃亡や証拠隠滅のおそれがあると判断して行った勾留請求を裁判所が認めた場合は、引き続き10日間身柄が拘束され、取り調べを受けることになります。検察官の判断次第では、逮捕されてから起訴まで最大23日間も身柄拘束されることもあるでしょう。

  3. (3)起訴

    起訴とは検察官による刑事裁判の提起です。勾留中であれば勾留期間が経過する前に、検察官が被疑者に対する起訴または不起訴の処分を決定します。そして起訴されると、呼び方が被疑者から被告人に変わります。

    複数の容疑で逮捕をされている場合は、同じタイミングで起訴されることもあるでしょう。また、すでに別の刑事事件で起訴されその裁判が進行しているときは、再逮捕された刑事事件については「追起訴」という形が取られることになります。

    ただし、実際の刑事裁判ではひとりの被告人が犯したすべての事件を起訴することはあまりありません。主要な容疑だけが起訴されて、残りは余罪として情状の一つとして量刑に考慮されるというのが一般的です。

4、再逮捕は何回まで可能なのか?

刑事訴訟法に再逮捕の回数を制限する規定はありません。したがって、犯した罪の数だけ再逮捕され続けることもありえます。

ただし、上記のように検察が再逮捕される可能性がある容疑を余罪として処理する決定をした場合は、再逮捕せずに処理され刑事裁判が進行していくことになります。

5、保釈中に再逮捕されると?

保釈とは、保釈金の納付や裁判所からの指定条件を受け入れることを要件に、刑事事件により起訴され刑事施設に勾留されている被告人の身柄を一時的に解放することです。

起訴されたあとの被告人には、保釈を申請する権利が認められています。逃亡や証拠隠滅のおそれがないなどの理由で保釈申請が認められれば、保釈金を納付することで刑事施設での勾留から解放されます。

たとえば、A事件で逮捕・起訴されたあとの保釈期間中に、余罪のB事件で再逮捕されたとき、残念ながらA事件の保釈は実質的に効力を失います。B事件における再逮捕はA事件の保釈を取り消す効果は持っていませんが、一方でA事件の保釈はあくまでもA事件の保釈であり、B事件の逮捕・勾留を回避できる効力まではありません。したがって、A事件の保釈中であろうとB事件で再逮捕された以上は、B事件について釈放、不起訴処分にならないかぎり、最大23日間の勾留を受けることになるのです。また、B事件について起訴された場合、被告人として勾留されることになり、B事件について保釈が認められない限り、身柄拘束が続くことになります。

6、再逮捕を回避するためには?

余罪の数だけ、再逮捕される可能性があるといっても過言ではありません。しかし、回避できることがあります。どうすればいいのでしょうか。

  1. (1)罪を認める

    特に別件逮捕されている中で否認や黙秘を貫いていると、捜査機関は本命の事件の逮捕にたどり着くまで、逮捕・勾留を繰り返す可能性があります。その結果、身柄拘束を受ける期間が延々と続いてしまうことになるでしょう。

    もちろん、あなたが本当に捜査機関が疑っている罪を犯していないのであれば、たとえ帰宅したいという理由があっても決して「やった」などとウソの自白をするべきではありません。しかし、容疑が事実であれば素直に認めたほうが、結果的に勾留されたり再逮捕されたりする可能性が低くなる可能性はあります。

  2. (2)弁護士に相談する

    再逮捕されることで勾留期間が延びてしまうことは、被疑者にとって非常に不利益です。

    刑事訴訟法第199条1項によりますと、検察や警察は「被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるとき」に逮捕ができると定めています。したがって、再逮捕であろうと、逮捕するためには理由が必要なのです。

    ところが、時として再逮捕は事件の全容解明を狙う捜査機関による「武器」のひとつとして用いられることがあります。具体的には、早期釈放を願う被疑者に対して再逮捕による身柄拘束期間延長の可能性をちらつかせながら自白を迫ることもありえるのです。

    このようなときは、必ず事実を曲げることなく弁護士に相談してください。刑事事件に対応した豊富な経験がある弁護士であれば、事実と照らして被疑者に不利な供述調書が作成されないよう、取り調べに臨む際の適切なアドバイスを行います。

    また、再逮捕されてしまったとしても弁護士は弁護活動の一環として処分の軽減を求める意見書などを提出しながら、捜査機関と交渉します。これにより再逮捕による勾留延長が回避されたり、最終的な刑が軽減されたりする効果が期待できます。

7、まとめ

再逮捕による身柄拘束期間の長期化を防ぐためには、そのタイミングにおける初動が重要なポイントになります。適切な初動には、刑事事件の知見がある弁護士による適切な弁護活動が欠かせません。

もしご家族が逮捕あるいは再逮捕されてしまったときは、できるだけ早期に刑事事件を取り扱っているベリーベスト法律事務所 堺オフィスの弁護士までご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています