警察の取り調べはどのように行われるのか。拒否や録音は可能?

2019年11月06日
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警察の取り調べはどのように行われるのか。拒否や録音は可能?

大阪府堺市では、男性が任意の取り調べの際に退去しようとしたところ、捜査官が妨害していた事案が、違法な行為ではないかと物議を醸しています。このような違法な対応を受けないために、録音などで対策したいと考える方が少なくありません。また、取り調べ自体を拒否したいと考える方もおられるでしょう。

しかし、取り調べの拒否などはできるのでしょうか。ベリーベスト法律事務所 堺オフィスの弁護士が取り調べの概要や、拒否、録音の可否などを丁寧に解説します。

1、取り調べとは

取り調べとは、警察が事件の関係者や被疑者を警察署に呼び出して状況を聞くことを言います。取り調べで自白してしまうと、他に証拠がなくても罪を犯したとの疑いにより逮捕などの措置がとられることもありますので、慎重に臨まなければなりません。

取り調べには大きくわけて2つの種類があります。ここではそれぞれの取り調べについて解説します。

  1. (1)任意の取り調べ

    任意の取り調べとは、逮捕されていない事件の関係者や被疑者を警察署に呼んで取り調べを行うものです。逮捕されているわけではないので、義務ではなく好きなときに取調室を出ることができると規定されています。しかし、冒頭の事案のように、任意の取り調べなのに捜査官に退去を妨害されることも少なからずあるようです。

  2. (2)逮捕・勾留されている場合の取り調べ

    逮捕されている場合、すでに勾留されている場合の取り調べは義務とされています。

    逮捕・勾留されている場合の取り調べは義務ですが、言いたくないことは話す必要はありません。暴力や脅迫に屈して供述した内容は、証拠にならないとされています。

2、警察の取り調べはどうやって行われる?

次に、警察署で行われる取り調べの方法や雰囲気を説明します。これから取り調べを受ける方は、取調室の様子や雰囲気を知り、心の準備をしておきましょう。

  1. (1)取調室の様子

    取調室は各警察署に複数用意されています。事務机を2つ置けばいっぱいになるほどの狭いものです。取調室に連れていかれると、逮捕されている場合は手錠がとられて自由になります。任意の取り調べの場合は、最初から拘束されてはいませんので、それは取調室の中でも同じです。

  2. (2)取り調べの上限時間と日数

    あまり知られていないかもしれませんが、警察の取り調べには時間制限があります。原則として1日8時間以内、午前5時から午後10時です。なお、逮捕された場合の身体拘束時間は、警察での身柄拘束は48時間、検察送致後の身柄拘束は24時間です。また、逮捕されていない場合の取り調べは日程を調整してもらうことができます。

3、警察の取り調べを拒否することはできる?

警察の取り調べは、「任意」であれば拒否することができます。しかし、すでに逮捕・勾留されている場合は取り調べを拒否することができません。ここでは、任意の場合とすでに逮捕・勾留されている場合にわけて解説します。

  1. (1)任意の取り調べの場合

    繰り返しになりますが、任意の取り調べは義務ではないため、拒否することができます。取り調べ中も好きなときに退去することができます。

    しかし、あなた自身、身に覚えがある場合はなんらかの犯罪行為がすでに露見していて、その結果、疑われているという可能性が高いでしょう。その場合、任意の取り調べを拒否し続けると、「証拠隠滅の恐れがある」などと判断され、逮捕される可能性があります。したがって、任意の取り調べは義務ではないですが、拒否し続けることは必ずしも得策ではありません。

    任意の取り調べの場合は、日程を調整できます。あらかじめ弁護士に相談した上で万全の体制を整えて取り調べに臨むことをおすすめします。警察から取り調べの呼び出しが来た場合は、日程を調整すると伝えてから、弁護士と打ち合わせをしておくとよいでしょう。

  2. (2)逮捕・勾留されている場合

    すでに逮捕されている場合の取り調べは拒否することはできません。

    しかし、逮捕・勾留されている場合でも、知っていることを何でもすべて話す必要はありません。ただし、事件との関わりがある場合はすべてを黙秘すると後々不利になる可能性があります。状況に適した対応方法については、あらかじめ弁護士に相談しておいたほうがよいでしょう。

4、取り調べの様子は録音することはできる?

取り調べを録音することは法律的には禁じられていません。ただ物理的に録音が可能かどうかは状況によって異なります。録音の可否を刑事に尋ねれば、婉曲(えんきょく)的に拒否されることもある可能性もあります。ただし、警察などに告げないまま録音しても罪に問われることはないでしょう。

取り調べを録音するメリットは違法な取り調べを明らかにすることができる点です。違法な取り調べによって不利な自白をしてしまった場合は証拠にならないと主張することが可能です。また、慰謝料の請求が認められたケースもあります。

なお、令和元年6月1日より、改正された刑事訴訟法が施行されています。逮捕・勾留された場合は全件、録音・録画することが義務付けられることになりました。ただし、逮捕前や起訴後の取り調べは対象外なので任意の取り調べは録音・録画されません。

5、取り調べ中に逮捕されるケースとは

任意の取り調べ中であっても逮捕されることがあります。逮捕には、「通常逮捕」と「現行犯逮捕」、「緊急逮捕」の3種類があり、任意の取り調べの際に行われる可能性が高いのが「通常逮捕」です。犯行を自白した、捜査の結果証拠が見つかったなどの場合は捜査官が裁判所に「逮捕令状」を請求し、発行を待って逮捕されるケースなどが「通常逮捕」に該当します。

取り調べ中に「現行犯逮捕」される可能性があるケースは、取調官に暴力を振るった、捜査書類を破いたなどの行為をしたときです。現行犯逮捕は、逮捕状がなくても行うことができます。取調室では暴れたり破壊的行動をとったりしないようにしましょう。

取り調べ中に逮捕されてしまうと、そのまま身柄が拘束されます。逮捕から48時間は警察による身柄拘束が続き、その後は検察庁に身柄が送致されて24時間、身柄拘束が続きます。検察官が「勾留」が必要と判断すると裁判所に勾留請求を行い、勾留請求が認められたら最大20日間身柄の拘束が続きます。

取り調べ中に逮捕された場合、自宅に帰ることなくそのまま身柄の拘束が続いてしまいます。取り調べ前に弁護士に相談し逮捕されないための対策や取り調べに対するアドバイスを受けおいたほうがよいでしょう。

6、警察から呼び出しを受けた場合、弁護士ができることとは

警察から呼び出しを受けたら、弁護士にいち早く相談することで今後の結果が大きく変わってきます。ここでは警察から呼び出しを受けた後弁護士ができることを解説します。

●黙秘権や供述内容についてアドバイスする
警察官による取り調べに対して、本人が知っていることをすべて話す必要はありません。自分に不利になることは話す必要がない「黙秘権」という権利が存在しますので、具体例を交えながら黙秘権について詳しく説明します。また、状況を確認した上で、供述したほうがいい内容、黙っていたほうがいい内容を的確にアドバイスしますので、自身の供述によって不利な状況に陥る可能性が低くなります。

●弁護士の立ち会いを要求する
取り調べの際は弁護士の立ち会いを要求することで、弁護士が取り調べに同席できる場合もあります。弁護士が同席すれば、違法な取り調べが行われることがありませんし、不利な自白をすることもないでしょう。

●被害者と早期に示談することで逮捕回避や不起訴を目指すことができる
犯してしまった罪に、被害者が存在する場合は早期に被害者を特定して示談を完了させることで、逮捕や起訴を避けることができます。被害届が出ていて警察が捜査をしている場合は、示談することで被害届を取り下げてもらうことも可能です。被害届が取り下げられたら、逮捕や起訴を避けられる可能性があるでしょう。

7、まとめ

警察から任意の取り調べの呼び出しがあった場合、法的には拒否することができます。しかし、拒否し続けると逮捕される可能性があるため、拒否を続けることは必ずしも得策ではないでしょう。しかし、任意の取り調べに気軽に応じて、取調官に誘導されて不利な供述をしてしまえば、取り返しのつかない事態に陥りかねません。

それを避けるためには、取り調べの呼び出しがあった時点で刑事事件についての知見が豊富な弁護士に相談して、アドバイスを受けてください。疑われている犯罪が特定できれば、被害者との示談を早期に行うことで、逮捕を避けられる可能性があります。

ベリーベスト法律事務所 堺オフィスでは逮捕される前、任意の取り調べの段階からサポートする体制を整えております。状況を確認した上で最適なアドバイスを行います。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています