相続手続きに必要な戸籍謄本! 急いで取り寄せた方がいい理由とは

2019年12月25日
  • 遺産を受け取る方
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相続手続きに必要な戸籍謄本! 急いで取り寄せた方がいい理由とは

今回は、相続手続きになくてはならない書類である戸籍謄本の基礎知識について説明します。相続手続きは、私たちにとってもっとも身近な法律問題のひとつです。

堺オフィスがある地域を管轄する大阪地方裁判所でも、相続関連の手続きは常に発生しています。司法統計によると、平成29年度中に大阪地方裁判所で新たに受け付けられた家事審判や調停のうち「相続の放棄の申述の受理」は1万6614件、「相続財産管理人選任等(相続人不分明)」は1525件、「遺言書の検認」は1095件でした。

相続手続きには厳格なタイムリミットがありますので、戸籍謄本はなるべく早く準備しておくことが望ましいでしょう。戸籍謄本がどのタイミングで必要となるのか、戸籍謄本の取り寄せ方などについても、堺オフィスの弁護士がわかりやすく解説します。

1、戸籍謄本の基礎知識

  1. (1)戸籍謄本・除籍謄本とは

    戸籍とは、家族単位で日本国民を把握するための制度です。出生・養子縁組・結婚・離婚・死亡・転籍などの理由で、日本人は生涯にわたって戸籍に入ったり抜けたりしているのです。
    戸籍に関する書類は、以下のように複数の種類があります。

    • 戸籍謄本:現在その戸籍内に入っている方がいる場合の戸籍の写し(全部事項証明書)。
    • 除籍謄本:戸籍に入っている方全員が死亡・婚姻・離婚・養子縁組・転籍などにより別の戸籍へ出て行っていて、構成員がいなくなっている場合の戸籍の写し(全部事項証明書)。
    • 改製原戸籍謄本:戸籍の電子記録化などによって新たに戸籍が編成された場合、元となっている戸籍の写し。新たに戸籍が電子記録で作成されたらデータはそちらに移りますが、古い戸籍もそのまま役所で保管されて「改製原戸籍」と呼ばれるようになります。
    • 戸籍抄本:戸籍原本の一部を抜き書きしたもの。通常、戸籍の構成員1人分の戸籍です。


    戸籍謄本や戸籍抄本は、紙で作られた戸籍の写しです。戸籍が電子記録で作られている場合には、戸籍謄本に当たるものが戸籍全部事項証明書、戸籍抄本に当たるものが戸籍個人事項証明書と呼ばれます。

    そして相続手続きに必要な書類は、主に以下の2種類です。

    • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本(除籍謄本)
    • 相続人全員の現在の戸籍謄本


    なぜこれらの書類が必要なのかというと、「被相続人の死亡確認のため」「被相続人の戸籍謄本をたどり、全ての相続人を把握するため」「相続人の生存確認のため」などの理由があります。
    相続手続きの中で出てくる「戸籍謄本」という言葉には、多くの場合「除籍謄本」も含まれていることに注意が必要です。

  2. (2)相続手続きの中で必要になるタイミングは、いつ?

    被相続人が亡くなり相続が開始すると、残された相続人たちは、限られた期間内に非常に多くの手続きをしなければなりません。
    基本的な流れとしては、相続人の調査、相続放棄(限定承認)、遺産分割協議、相続財産の名義変更を経て、最終的には相続開始後10か月以内に相続税申告をします。
    その中で、戸籍謄本の提出が必要となる主な手続きは以下の通りです。

    • 相続人調査(相続開始直後~)
    • 相続放棄・限定承認の申述の申し立て(相続開始後3か月以内)
    • 相続財産の名義変更・相続登記(相続開始後10か月以内)
    • 相続税の申告(相続開始後10か月以内)

2、相続の際、戸籍謄本を急いで取り寄せたほうがよい理由

  1. (1)相続開始直後の相続人調査、3か月以内の相続放棄に必要

    先ほどもご説明した通り、戸籍謄本は相続開始直後からさまざまな用途で必要となります。 まずは相続開始直後の“相続人調査”。被相続人の死亡から出生までの戸籍謄本(除籍謄本)をさかのぼり、全ての相続人を把握しなければなりません。その中で、隠し子などの思いがけない相続人が判明することもあります。
    相続人で集まって“どの遺産を誰がどれだけ相続するか”話し合うことを「遺産分割協議」と言いますが、全ての相続人が話し合いに参加しなければ無効となってしまいます。
    戸籍謄本を急いで取り寄せないとそもそも相続手続きを始めることができませんし、後の手続きのタイムリミットにも間に合わない恐れがあります。

  2. (2)出生から死亡までの戸籍謄本をそろえるのは大変

    前述の通り、被相続人については出生から死亡までの戸籍謄本(除籍謄本)をそろえる必要があります。
    被相続人が結婚・離婚・引越しなどを何度も繰り返していた場合、市区町村をまたいで戸籍謄本の取り寄せをしなければならなくなり、とても大変です。
    このように一つの自治体だけで出生から死亡までの戸籍謄本がそろえられるとは限りませんので、なるべく早く取り寄せるようにしましょう。

  3. (3)相続人の人数が多い、代襲相続など多くの戸籍謄本が必要なケースも

    代襲相続とは、被相続人死亡時においてすでにその子どもや兄弟姉妹が死亡等で相続権を失っていた場合に、その子ども(被相続人にとっては孫または甥姪)が代わりに相続人となるケースのことです。
    死亡等で相続権を失った子ども・兄弟姉妹は「被代襲者」、親の代わりに相続することになった子どもは「代襲者」と呼ばれています。
    代襲相続の場合、被相続人だけでなく被代襲者についても「出生から死亡までの戸籍謄本(除籍謄本)」をそろえなければなりません。これは非常に労力を要する作業です。
    代襲者については、通常の相続人と同じく「全員の現在の戸籍謄本」を取り寄せることになります。

    兄弟姉妹が相続人となるケースでは、被相続人の両親についてもそれぞれ「出生から死亡までの戸籍謄本(除籍謄本)」を取り寄せる必要があります。

3、戸籍謄本・除籍謄本の取り寄せ方

  1. (1)まず必要な書類をそろえる

    まず下準備として、取り寄せに必要な書類を用意しましょう。市区町村役場に出向いて手続きする場合は、以下の書類が必要です。

    • 戸籍交付申請書(市区町村役場で入手、またはホームページでダウンロード)
    • 印鑑(認印でも可)
    • 本人確認書類(運転免許証、パスポート、マイナンバーカードなど)
    • (弁護士等に依頼する場合)委任状


    郵送で取り寄せることもできます。市区町村役場に郵送する書類は、以下の通りです。

    • 戸籍交付申請書(必要個所に記入して、押印もしたものです)
    • 本人確認書類(運転免許証、パスポート、マイナンバーカードなど)のコピー
    • 手数料相当額の定額小為替
    • 返信用封筒と切手(封筒は大きめ、切手金額も多めの方が安心です)


    戸籍謄本の交付手数料は、1通=450円、除籍謄本・改製原戸籍謄本や除籍謄本の交付手数料は1通=750円です。
    ほとんどの場合「出生から死亡までの戸籍謄本」は複数あるため、その分の手数料がかかることに注意が必要です。

  2. (2)市区町村役場または郵送で請求する

    必要な書類がそろえられたら、いよいよ請求手続きです。戸籍謄本を請求するのは、「被相続人または相続人の本籍地の市区町村役場(またはその総合支所)」です。
    直接出向くか、上記の必要書類を郵送して請求しましょう。
    自治体によっては、“自分が記載されている戸籍謄本”のみコンビニでも受け取れる場合もあります。

  3. (3)出生から死亡までの戸籍謄本をそろえる方法

    この場合は、死亡から出生まで順番にさかのぼって取り寄せるのが基本的な流れとなります。
    具体的には、まず死亡時の本籍地で戸籍謄本(除籍謄本)を取り寄せます。戸籍謄本には前の戸籍の情報も記載されているので、それを参考にしながら一つずつさかのぼっていくことになります。
    被相続人の本籍地がわからない場合は、住民票で確認できます。
    困ったときは、戸籍謄本を交付してくれた役場の職員に「出生から死亡までの戸籍謄本をそろえたい」旨を相談してみましょう。次にどこの自治体に行って戸籍謄本を請求すれば良いか、アドバイスしてくれるはずです。

  4. (4)同じ戸籍謄本を何度も取り寄せる手間を省くには?

    不動産、預貯金、自動車など複数の相続財産がある場合、名義変更のたびに何度も同じ戸籍謄本を取り寄せると、手数料がかさんでしまいます。
    その際役に立つのが、「相続関係説明図」です。被相続人と相続人の関係がひと目でわかる家系図のようなものです。被相続人・相続人の氏名、続柄、生年月日、死亡年月日などの情報も記載されているので、相続関係を第三者に説明しやすくなります。
    この「相続関係説明図」を法務局や金融機関などに提出すると、相続財産の名義変更のために提出した戸籍謄本を返してもらえます。
    したがって複数の相続登記・名義変更手続きに使い回すことができ、とても経済的です。

4、時間がないときは弁護士に相談を

複数の自治体で死亡から出生まで戸籍謄本をさかのぼる……気が遠くなるような作業にゾッとした方もおられるかもしれません。また、仕事などで平日昼間に役場に行くことができない方も多いでしょう。
非常に面倒な戸籍謄本の取り寄せですが、実は弁護士に依頼することができることをご存じでしょうか?
弁護士は、相続人の代理人として職権で戸籍謄本を取り寄せることができます。初めて相続に関わる人にとっては煩雑な手続きも、弁護士であれば豊富な実務経験と知識に基づきスピーディーに進めてくれるでしょう。

5、まとめ

“出生から死亡までの戸籍謄本”を揃える手続きは複数の自治体にまたがることも多く、大変な労力を要する作業です。なるべく早めに着手されることをおすすめします。
ベリーベスト法律事務所には、相続問題専門の弁護士が多数所属しています。さらに税理士とも提携していますので、相続全般をワンストップで解決します。
明朗会計を旨とさせていただいておりますので、相続人調査や遺産分割問題でお悩みの場合には、ベリーベスト法律事務所・堺オフィスへお気軽にご相談ください。

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