事故の同乗者は誰に慰謝料を請求すべき? 保険で補償される内容とは

2023年03月23日
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事故の同乗者は誰に慰謝料を請求すべき? 保険で補償される内容とは

大阪府警察が公表している交通事故の統計資料によると、令和3年に大阪市で発生した交通事故の件数は、8296件でした。そのうち、堺市内の交通事故は、2487件でした。

自分が運転する車ではなく、家族や友人が運転する車に乗っているときに交通事故に遭ってしまった場合には、治療費や慰謝料は誰に対して請求することになるのでしょうか。また、車を運転していない同乗者にも交通事故の責任が生じることもありあすので、注意が必要です。

今回は、交通事故の同乗者による損害賠償請求について、ベリーベスト法律事務所 堺オフィスの弁護士が解説します。

1、同乗者は誰に損害賠償請求ができる?

家族や友人が運転する車で事故に遭った場合、同乗者は誰に対して損害賠償請求をすることができるのでしょうか。

  1. (1)同乗者は運転者と事故の相手に請求できる

    同乗している車が事故に遭った場合には、状況に応じて、同乗者が損害賠償請求できる相手方が異なってきます。

    ① 同乗していた車の運転者に過失がない場合
    同乗していた車が追突されたようなケースでは、同乗していた車の運転者には過失がなく、事故の相手に100%の過失がある事故になります。このようなケースでは、同乗者は、事故の相手に対してのみ損害賠償請求することができます。

    ② 同乗していた車の運転者にすべての過失がある場合
    同乗していた車の運転者が追突したケースや自損事故のケースでは、すべての責任は同乗していた運転者にあります。このようなケースでは、同乗者は、同乗していた車の運転者にのみ損害賠償請求することができます。

    ③ 同乗していた車の運転者と事故の相手の双方に過失がある場合
    交差点での出合い頭の衝突などのケースでは、同乗していた運転者と事故の相手の双方に過失が生じます。このようなケースでは、同乗者は、同乗していた車の運転者と事故の相手方のいずれかまたは双方に対して損害賠償請求することができます。
  2. (2)同乗者が使用できる保険

    交通事故の同乗者は、以下のような保険を利用することができます。

    ① 自賠責保険
    自賠責保険は、車を運転するすべての人に加入が義務付けられている強制保険です。交通事故で怪我をしていれば同乗者であっても交通事故の被害者になりますので、自賠責保険から最低限の補償を受けることができます。

    ② 任意保険の搭乗者傷害保険
    同乗していた車の運転者が任意保険の搭乗者傷害保険に加入している場合には、同乗者に対しても保険金が支払われます
    搭乗者傷害保険とは、車に乗っている人が交通事故で怪我をしてしまった場合の損害を補償する保険です。搭乗者傷害保険からは、怪我の程度に応じて契約時に設定された金額が定額で支払われます。

    ③ 任意保険の人身傷害補償保険
    同乗していた車の運転者が任意保険の人身傷害補償保険に加入している場合には、同乗者に対しても保険金が支払われます。
    人身傷害補償保険も搭乗者傷害保険と同様に車に乗っている人が怪我した場合の損害を補償する保険ですが、搭乗者傷害保険が契約時に定められた一定額の補償であるのに対して、人身傷害補償保険では、怪我の治療費など実際の損害額を補償するという違いがあります。
    そのため、補償の点では人身傷害補償保険のほうが手厚いといえます。なお、保険契約の内容によっては、このような内容と異なる場合がありますので、保険会社の担当者に契約内容を確認することをおすすめします。

2、事故に遭った同乗者が請求できる慰謝料の種類と相場

事故に遭った同乗者が請求できる慰謝料には、以下の3つがあります。

  1. (1)傷害慰謝料(入通院慰謝料)

    傷害慰謝料とは、交通事故によって怪我を負ったことによる精神的苦痛に対して支払われる慰謝料です。怪我の痛み、治療や手術の恐怖や不安などはすべて傷害慰謝料によってカバーされます。

    もっとも、精神的苦痛の程度は人それぞれですし、目で見ることもできません。そこで、交通事故の実務においては、治療期間や実通院日数などを基準に傷害慰謝料の相場が決まります。

  2. (2)後遺障害慰謝料

    後遺障害慰謝料とは、交通事故によって後遺障害が生じたことによる精神的苦痛に対して支払われる慰謝料です。交通事故の怪我の内容や程度によっては、治療を継続してもこれ以上改善する見込みのない状態になることがあります。

    このような状態を「症状固定」といいます。症状固定時に残存している後遺症については、後遺障害等級認定を受けることによって、認定された等級に応じた後遺障害慰謝料の支払いを受けることができます。

  3. (3)死亡慰謝料

    死亡慰謝料とは、交通事故によって死亡したことによる精神的苦痛に対して支払われる慰謝料です。本人はすでに亡くなっていますので、本人の遺族(相続人)が本人に代わって死亡慰謝料の請求をすることになります。
    死亡慰謝料の金額は、亡くなった方の立場(一家の支柱、母親、配偶者、その他など)に応じて相場が定められています。

3、同乗者が責任を問われるケース

車に同乗していただけの人が交通事故の責任を問われることは基本的にはありません。

しかし、以下のようなケースでは、同乗者にも交通事故の責任が生じることがあります。

  • 運転者が飲酒しているにもかかわらず運転をすすめたり、黙認したりしていた
  • 運転者をあおって信号無視やスピード違反をさせた
  • 運転者を驚かしたり、目隠ししたりするなど運転を妨害した
  • 運転者が無免許であることを知りながら、運転をさせた


このようなケースでは、運転者だけではなく同乗者にも事故の責任が生じてしまいますので、事故の相手に対して、慰謝料を支払わなければなりません。また、過失がある場合には、過失相殺によって同乗者が請求できる慰謝料額が減額されることもあります。

さらに、飲酒運転や無免許運転を止めなかった場合には、同乗者も行政処分や刑事責任を問われる可能性がありますので注意が必要です。

4、交通事故被害にあったときは弁護士に相談を

交通事故の被害に遭ってお悩みの方は、弁護士に相談することをおすすめします。

  1. (1)保険会社から提示された金額が妥当であるか判断してもらえる

    怪我の治療が終了した段階で、保険会社から賠償額の提示がなされます。損害賠償の項目としては、治療費、通院交通費、休業損害、傷害慰謝料などがあり、後遺障害が生じた場合には、後遺障害慰謝料、逸失利益が追加されます。

    治療費であれば実際に生じた金額が賠償額になりますが、休業損害、慰謝料、逸失利益などは、複雑な計算方法によって算定しますので、算定基準を理解していなければ保険会社から提示された金額が適正なものであるかどうかを判断することができません。

    加害者の保険会社は、支払う金額を少しでも抑えるために相場よりも低い金額で賠償額の提示をしてくることもあります。

    一度示談に応じてしまうと、後日示談をやり直すことはできなくなりますので、まずは、弁護士に相談をして、保険会社からの提示額が妥当なものであるかを判断してもらうとよいでしょう。

  2. (2)示談交渉を任せることができる

    保険会社の担当者は、日々多くの交通事故の事案を扱っていますので、被害者との間には、圧倒的な知識、経験、交渉力の差があります。不慣れな被害者が保険会社の担当者と交渉をしたとしても、有利な条件で示談をすることは難しいといえます。

    しかし、弁護士に依頼をすれば弁護士が保険会社との交渉をすべて担当しますので、対等な立場で交渉を進めることができます。賠償額だけではなく過失割合に争いがあるような事案でも法的観点から主張立証することによって、より有利な条件で示談を成立させることが可能です。

    ひとりで交渉を進めることに少しでも不安がある場合には、まずは、弁護士にご相談ください。

  3. (3)慰謝料額が増額する可能性がある

    慰謝料の金額を算定する基準には

    • 自賠責保険基準
    • 任意保険基準
    • 裁判基準(弁護士基準)

    の3つがあります。

    金額としては、自賠責保険基準が最も低く、裁判基準が最も高額になる基準です。そうすると被害者としては、当然裁判基準で算定した慰謝料を請求したいと考えるでしょう。

    しかし、裁判基準による慰謝料を請求することができるのは、弁護士に示談交渉を依頼した場合か裁判を起こした場合に限られます。被害者自身で行う示談交渉では、裁判基準による慰謝料請求することができません。できるだけ高額な慰謝料を希望するのであれば、弁護士への依頼が不可欠といえます。

5、まとめ

交通事故の被害に遭った場合には、運転者だけでなく同乗者も損賠償請求することが可能です。

同乗者の損害賠償請求は、運転者と事故の相手または双方に対して行うことができますので、事故の状況を踏まえて請求の相手を見極めることが大切です。

なお、同乗者が加入している任意保険に弁護士費用特約が付帯している場合には、自己負担実質0円で弁護士に対応を任せられる可能性もあります。交通事故の事案は、弁護士が介入することによって、有利な条件で示談できる可能性が高くなりますので、まずは、ベリーベスト法律事務所 堺オフィスまでお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています