いじめやけがをした場合、学校を訴えることはできるのか。弁護士が解説

2022年07月21日
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いじめやけがをした場合、学校を訴えることはできるのか。弁護士が解説

学校でケガをした場合や、同級生などからいじめに遭った場合、学校に対して損害賠償を請求できる可能性があります。

損害賠償請求によって金銭を獲得すれば、ケガやいじめから立ち直るために、少しでも助けとなるかもしれません。もし学校に対する損害賠償請求等をご検討中の場合には、まずは弁護士まで相談することをおすすめします。

今回は学校でケガをしたり、いじめを受けたりした場合に、学校を訴えることができるのかどうかについて、ベリーベスト法律事務所 堺オフィスの弁護士が解説します。

出典:「全市・区域別年齢別人口」(堺市)

1、学校でケガをした場合、学校を訴えることはできるのか?

学校での活動中にケガをした場合、学校等が被害者に対して損害賠償責任を負うことがあります。

ただし、損害賠償請求の法律構成は、公立学校か私立学校かによって異なります。

ご自身やご子息の通っている学校の種類に合わせて、適切な法律構成を主張することが大切です

  1. (1)公立学校の場合|国家賠償責任を追及できる場合あり

    公立学校でのケガについて損害賠償を請求する場合、請求の根拠は「国家賠償法」となります。

    国家賠償責任を負うのは、公立学校を設立した国または公共団体です。具体的には以下の通りです。

    学校内でのケガに対する損害賠償の請求先
    • 国立の学校 → 国
    • 都道府県立の学校 → 都道府県
    • 市町村立の学校 → 市町村
    • 国立大学 → 国立大学法人


    国家賠償法に基づき、公立学校でのケガについて国または公共団体が国家賠償責任を負うのは、以下の2つの場合です。

    ① ケガが公務員の故意・過失による場合
    学生・生徒・児童がケガをしたことにつき、教師(先生)などの公務員に職務上の故意または過失があった場合には、国または公共団体が国家賠償責任を負います(国家賠償法第1条第1項)。

    ② ケガが公の営造物の設置・管理の瑕疵(かし)による場合
    公立学校の設備など、公の営造物の設置または管理に瑕疵があったことが原因で学生・生徒・児童がケガをした場合には、学校関係者の故意または過失の有無にかかわらず、国または公共団体が国家賠償責任を負います(同法第2条第1項)。
  2. (2)私立学校の場合|使用者責任・工作物責任を追及できる場合あり

    私立学校でのケガについて損害賠償を請求する場合、請求の根拠は「民法」となります。
    損害賠償責任を負うのは、私立学校を設立した学校法人などです。

    民法に基づき、私立学校でのケガについて学校法人などが損害賠償責任を負うのは、以下の2つの場合です。

    ① 使用者責任が発生する場合(民法第715条第1項本文)
    私立学校の従業員(教師など)が、職務上の故意または過失によって、学生・生徒・児童にケガをさせた場合、学校法人なども被害者に対して使用者責任に基づく損害賠償義務を負います。

    ただし、学校法人などが従業員の選任・監督について相当の注意をしたとき、または相当の注意をしても損害が生ずべきであった場合には、使用者責任は発生しません。

    ② 工作物責任が発生する場合(民法第717条第1項本文)
    学校の敷地上の工作物の設置・保存に瑕疵があったことにより、学生・生徒・児童がケガをした場合には、工作物の占有者である学校法人などが、被害者に対して工作物責任に基づく損害賠償義務を負います。

    なお、占有者が損害の発生を防止するために必要な注意をした場合には、工作物の所有者が、故意または過失の有無にかかわらず工作物責任を負います。
    しかし、学校の敷地上の工作物については、大半の場合学校法人などが所有者となっています。

    したがって、工作物の設置・保存の瑕疵により学生・生徒・児童がケガをしたケースでは、学校法人などが損害賠償責任を負う場合がほとんどでしょう。
  3. (3)災害給付金で損害をカバーできる場合がある

    学校側に対して損害賠償請求を行うだけでなく、独立行政法人日本スポーツ振興センターの災害共済給付を申請して、治療費などを賄う方法もあります。

    参考:災害共済給付(独立行政法人日本スポーツ振興センター)

    学校の管理下で負傷・疾病・障害・死亡の災害が発生した場合、災害共済給付を申請すると、災害の種類や程度に応じて給付金を受け取ることができます。

    たとえば負傷や疾病の医療費については、健康保険の自己負担分の3割を超えて、医療費総額の4割が補償されます。

    学校に対して損害賠償請求を行うよりも、災害共済給付を申請する方がスムーズに補償を受けられる場合があります

    給付対象となる可能性がある方は、独立行政法人日本スポーツ振興センターの窓口などへ相談してみましょう。

2、学校でいじめられた場合、学校を訴えることはできるのか?

学校でいじめに遭い、精神的なダメージ(損害)を受けた場合にも、学校側に対して損害賠償を請求できる場合があります。

いじめについて学校に損害賠償請求を行う際の法律構成は、学校でケガをした場合と同様です。公立学校と私立学校の場合で異なり、まとめると以下のようになります。

① 公立学校の場合(国家賠償法第1条第1項)
いじめを見逃したことなどにつき、教師などの公務員に職務上の故意または過失があった場合、公立学校を設立した国または公共団体が、被害者に対して国家賠償責任を負います。

② 私立学校の場合(民法第715条第1項)
いじめを見逃したことなどにつき、教師などの従業員に職務上の故意または過失があった場合、私立学校を運営する学校法人などが、被害者に対して使用者責任を負います。


なお、学校でのいじめが原因でうつ病にかかった場合や、自殺に追い込まれてしまった場合には、学校現場でケガをした場合と同様に、独立行政法人日本スポーツ振興センターの災害共済給付の対象となる可能性があります。

3、いじめの加害者を訴えることはできるのか?

学校でいじめを受けた場合、学校の責任を追及することと併せて、加害者本人に対して損害賠償を請求することもできます

また、加害者の年齢によっては、加害者の親に対して損害賠償を請求できる場合もあります。

  1. (1)不法行為に基づく損害賠償請求が可能

    いじめによって被害者に精神的な損害を与える行為は、「不法行為」に該当します(民法第709条)。

    不法行為が成立する場合、いじめの加害者は被害者に対して、被害者に生じた損害を賠償しなければなりません。

    損害賠償の対象には、精神的な損害に対応する慰謝料のほか、うつ病に罹患(りかん)した場合の治療費などが含まれます。

    また、万が一被害者が自殺してしまった場合には、本人の生涯収入に当たる逸失利益・遺族の慰謝料・葬儀費用なども損害賠償の対象です。

  2. (2)加害者の年齢によっては、監督義務者の責任を追及可能

    未成年者は、いじめについて自分の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかった場合、不法行為責任を負いません(民法第712条)。年齢的には10歳から12歳程度が、責任能力の有無を分けるボーダーラインと解されています。

    いじめの加害者である未成年者が、責任無能力によって不法行為責任を負わない場合、加害者の法定代理人(保護者)に対して、監督義務者の責任に基づく損害賠償を請求できます(民法第714条第1項)

    なお、監督義務者が義務を怠らなかった場合、または監督義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは責任が免除されます。

    しかし、いじめのケースで監督義務者の責任が免除されるケースはほとんど考えられません。いじめの加害者の責任を追及したいと考える場合には、加害者本人の年齢に応じて、本人または親を相手方として損害賠償を請求することも検討すべきでしょう。

4、学校でのケガやいじめは弁護士に相談を

学校でケガをしたり、いじめに遭ったりした場合には、学校に対する損害賠償請求をひとつの選択肢として検討しましょう。

また、ケガやいじめについて加害者がいる場合には、加害者(または親)に対する損害賠償請求も検討に値します。事件・事故の責任者から相応の補償を受け、被害者が受けた損害を少しでも回復するためには、弁護士のサポートを受けることがおすすめです

弁護士は、被害者が利用可能なあらゆる手段を検討したうえで、より良い形で事件・事故を解決するために尽力いたします。

学校でのケガやいじめについて、学校や加害者に対する損害賠償請求等をご検討中の方は、お早めに弁護士までご相談ください。

5、まとめ

学校でのケガやいじめによって損害を受けた場合、学校側に対して損害賠償を請求できる場合があります。

それと同時に、加害者に対する損害賠償請求や、災害共済給付の申請などを通じて被害の回復を図ることも考えられます。どのような方法を選択すべきかについては、ケース・バイ・ケースで判断する必要があるため、弁護士へのご相談がおすすめです。

ベリーベスト法律事務所では、学校事故や学校トラブルに関するご相談を随時受け付けております。損害賠償請求に関する協議・調停・裁判等まで、必要に応じて一括してサポートいたします。

学校現場でのケガやいじめについて、どのように対応すべきかお悩みの方は、お早めにベリーベスト法律事務所 堺オフィスにご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています