損害賠償請求できないケースもある? 損害賠償請求を弁護士に依頼するメリット
- 一般民事
- 損害賠償
- 弁護士
平成23年に行われた大阪府知事選挙のときに、堺市の有権者68万名分の個人情報が一時インターネットに流出する事件がありました。この事件を受け、平成29年3月、市民団体が堺市を相手取って損害賠償請求訴訟を起こしました。
このように、被害者は、何らかの損害を受けた場合、加害者に対して損害賠償請求をして損害を補償してもらうことができます。しかし、損害賠償請求ができないケースも存在するのをご存じでしょうか。今回は、損害賠償請求ができるケース・できないケースについて、損害賠償請求の流れや弁護士に依頼するメリットなどと併せて解説します。
1、損害賠償とは
損害賠償とは、相手方から受けた損害について金銭的な補償を得るために請求するものです。不倫・浮気、医療過誤・医療ミス、名誉毀損(きそん)、契約違反など、さまざまな場面で損害賠償を請求できる可能性があります。
-
(1)不法行為に基づくものと債務不履行に基づくものがある
損害賠償には、大きく分けて不法行為に基づくものと債務不履行に基づくものの2種類があります。
<不法行為に基づく損害賠償>
加害者の違法な行為によって自分の権利が侵害された場合、加害者に対して損害賠償請求をすることができます。不倫や浮気は民法の貞操義務に違反するもの、名誉毀損は相手方の社会的地位をおとしめるものとしてこれにあたります。これらの行為があったときには損害賠償請求ができるのです。
<債務不履行に基づく損害賠償>
相手方が契約に基づく債務を履行しなかったことによって損害を受けた場合、債務不履行に基づく損害賠償ができます。たとえば、ある業者に注文していた部品が指定した納期に届かなかった場合、その部品がないために製品を製造することができなくなり、期限までに完成品を納品することができなかったときは、業者に対して債務不履行に基づく損害賠償請求をすることが可能です。 -
(2)損害賠償と慰謝料との違いとは
損害賠償とならんでよく使われる言葉に「慰謝料」があります。損害賠償が物理的な損害の補償を主に意味するのに対し、慰謝料は精神的な損害(精神的苦痛)の補償を主に意味します。慰謝料の金額は、被害者の受けた苦痛や加害行為の程度などを総合的に判断の上算定されます。
-
(3)損害賠償請求ができる要件
損害賠償請求をするには、以下のような要件を満たさなければなりません。
<不法行為に基づく損害賠償の場合>
①故意または過失があること
その行為が意図的に行われたこと(故意)、または意図的ではないが注意をすれば防げたのに注意を怠たり、その行為によって権利侵害が発生してしまったこと(過失)を証明することが必要です。
②因果関係があること
「ケガで1ヶ月間働けなくなった」など、行為と損害の間に因果関係のあることを証明することが必要です。
③具体的な損害が生じたこと
「1ヶ月分の給与:○○万円が得られなくなった」など、具体的な損害が生じたことが条件となります。
<債務不履行に基づく損害賠償の場合>
①債務があること
契約に基づき「商品を作って納品する」などの債務があることが必要です。
②債務の不履行
「商品を期日までに納品できなかった」など、相手方との契約に基づく約束を守らなかったことを示します。
③因果関係があること
「商品の納品が間に合わなかったことで、その日の売り上げが立たなくなった」など、債務不履行と損害との間に因果関係があることが必要です。
④具体的な損害が生じたこと
「その日の売り上げ予想金額である10万円が得られなかった」など、具体的な損害が生じたことが条件となります。 -
(4)損害賠償を請求できる相手
損害賠償を請求できる相手は、加害者に限りません。たとえば労働災害であれば、機械の操作を誤った同僚社員(加害者)のみならず、労働者を安全に働かせるための注意を怠ったとして会社の経営者が責任を問われることもあります(使用者責任)。
2、損害賠償請求ができるケース
ここでは、損害賠償請求ができる具体的なケースについて考えていきましょう。以下のようなものが損害賠償請求の対象となります。
-
(1)仕事中にケガをしたとき
仕事中にケガをした場合は、労災保険給付が得られるだけでなく、損害賠償請求もできる場合があります。たとえば、仕事中に機械を操作していてケガをした場合は、会社の責任者である経営者に対して、安全配慮義務を怠ったとして損害賠償請求をすることが可能です。
-
(2)不倫・浮気されたとき
夫(妻)に不倫や浮気をされたときは、夫(妻)に対して貞操義務に違反したとして損害賠償請求をすることができます。夫(妻)だけでなく、その不倫・浮気相手に対しても損害賠償請求を行うことが可能です。
-
(3)いじめ・暴行を受けたとき
学校でいじめにあったときや、殴る蹴るなどの暴行を受けた場合も、損害賠償請求をすることができます。物理的なケガをしたときだけでなく、暴行によってうつなどの精神疾患を発症したときにも、請求することが可能です。
-
(4)医療ミス・医療過誤があったとき
「内臓の手術の執刀中に医師がミスをした結果、患者が死亡した」などの医療ミス・医療過誤があったときには、遺族は医師や病院に対して損害賠償請求をすることができます。ただし、この場合は非常に高度な医療知識が必要になるため、医療事故の経験が豊富な弁護士に相談されるとよいでしょう。
3、損害賠償請求ができないケース
どのような場合でも損害賠償請求ができるとは限りません。いくら多額の損害を受けたとしても、損害賠償請求ができないケースもあります。それはどのような場合なのか、見ていきましょう。
-
(1)自然災害など不可抗力による損害の場合
自然災害など不可抗力が生じたときは、損害を受けても相手方に損害賠償請求ができなくなります。たとえば、大きな地震が起きたために工場が倒壊して操業停止を余儀なくされた場合、製品を製造して取引先に納品することはしばらく難しいでしょう。このような場合、当該取引先に納品ができない落ち度や帰責性があるわけではないので、取引先は業者が約束通りに納品ができなくても損害賠償請求ができないことになっているのです。
-
(2)被害者以外の第三者の立場の場合
また、被害者以外の第三者が相手方に対して損害賠償請求をすることもできません。たとえば、幼なじみの友人が、ある業者によって詐欺被害に遭ったとします。この場合、どんなにこの友人ときょうだいのように仲がよくても、自分は第三者の立場なので相手方に対して損害賠償請求はできないのです。
-
(3)隣家の火が燃え移って火事になった場合
隣家が火事になり、その火が燃え移って自宅が火事になった(いわゆる「もらい火」の)場合、原則として、隣家の住人に対して損害賠償はできないことになっています。失火責任法では、火元になった家の住人に重大な過失がなければ不法行為責任を負わない旨規定されているため、隣家の住人の負う責任が限定されているためです。ただし、その住人が「寝たばこをしていた」などの重大な過失があれば、損害賠償請求ができることもあります。
-
(4)一度和解をしてしまった場合
一度この件に関しては争わないと合意したり和解したりした場合にも、損害賠償請求ができなくなります。
4、損害賠償請求の流れと進め方
損害賠償請求の方法は、大きく分けて示談交渉・民事調停・民事裁判の3つがあります。それぞれの流れと進め方について見ていきましょう。
-
(1)示談交渉
まずは任意での示談交渉に応じるよう相手方に働きかけます。交通事故の場合は、保険会社が被害者の電話番号などの連絡先情報を握っていて、先方から示談を持ちかけてくることも多くあります。交渉の際は、事前に内容証明郵便を相手方に送付します。後日、相手方と協議を行って、双方が和解できれば合意した内容を合意書などの書面にまとめます。また、加害者と被害者双方が公正証書により合意を締結する約束があれば、公証役場に出向き、合意内容に従わなければ強制執行を受け入れると約束する強制執行認諾文言付の公正証書にしておくと安心です。
-
(2)民事調停
示談交渉が成立しない場合は、裁判所に民事調停を申し立てることも考えられます。当事者が裁判所に出頭して調停委員の仲介のもとで話し合い、双方で合意ができれば裁判所が合意内容を調停調書にまとめます。相手方が賠償金を支払わない場合は、調停調書を債務名義として強制執行をすることが可能です。
-
(3)民事裁判
調停が不成立に終わった場合は、損害賠償請求訴訟を提起して裁判で争うことも考えられます。なお、民事調停を申し立てなくても直ちに民事裁判を訴えることもできます。裁判では証拠の提示が必要となるため、事前に証拠資料を準備しておきましょう。訴額が140万円以内の少額であれば簡易裁判所で争うことができます。裁判所に仮執行宣言をしてもらうことができれば、確定判決が出る前でも相手方の財産に対して強制執行をすることが可能です。
5、損害賠償請求を弁護士に依頼するメリット
損害賠償請求を検討する際は、まず弁護士に相談して対応を依頼するとよいでしょう。最近では、初回相談無料をうたっている事務所も多いので、無料相談可のところを利用して相性の合う弁護士を見つけることをおすすめします。弁護士に依頼することで得られるメリットは以下の通りです。
-
(1)手続きのサポートをしてもらえる
弁護士に依頼すれば、交渉や手続きをすべて一任することができます。調停や裁判を申し立てる場合は、裁判所で煩雑な手続きを踏まなければなりませんが、弁護士にお任せすることでその手間を省くことができるのでストレスも減るでしょう。
-
(2)先の見通しが立てられる
損害賠償請求をしたらどうなるのかがわからない場合でも、弁護士に相談すれば過去の判例や解決事例に照らして先の見通しを立ててもらうことができます。今後の予想される展開だけでなく、得られるであろう賠償金の金額もある程度予測を立てることができるので、それらを把握した上で心の余裕をもって問題解決に臨むことができます。
-
(3)解決策の選択肢が得られる
たいていの場合、問題解決の方法はひとつだけではありません。損害賠償請求以外にも、もっとよい解決方法があることも考えられます。弁護士に相談・依頼すれば、複数の解決策を提示してもらえて、その中から自分の希望に近い選択肢を選び取ることが可能です。
-
(4)確実に損害賠償を得られる可能性が高まる
被害者個人で相手方に損害賠償請求をしても、のらりくらりとかわされたり、相手にされなかったりすることもあります。そのようなときでも、弁護士に対応を依頼すれば、相手方も無視できないと感じて確実に損害賠償請求に応じてもらえる可能性が高くなります。
-
(5)より高額な賠償金額を得られる
弁護士に依頼することで、確実に損害賠償請求に応じてもらえるだけでなく、より高額な賠償金額を得られることもあります。弁護士は過去にどのようなケースでどれくらいの損害賠償金額になったのかを熟知しています。そのため、依頼者の相談内容に類似していて、かつもっとも高額な賠償金を得られた事例を引き合いに出して、相手方と交渉をすることで、予想よりも高い賠償金額を得られる可能性があるのです。
6、まとめ
何らかの損害を被ったとき、唯一相手方に金銭的な補償を求めることができるのが、損害賠償請求です。しかし、損害を受けて心身ともにダメージを受けているときに、相手方に対して損害賠償請求をするのはかなりのエネルギーを必要とします。
そのようなときには、損害賠償請求の経験が豊富な弁護士にお任せください。弁護士があなたに代わって示談交渉や裁判所での手続きを引き受け、無事に損害賠償金を得られるまでサポートをいたします。ベリーベスト法律事務所ではほとんどの場合、初回の法律相談は60分間無料です。損害賠償請求でお困りの際は、一人で抱え込まず、ベリーベスト法律事務所・堺オフィスまでお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています