離婚の財産分与で会社名義の資産も請求できる? 弁護士が詳しく解説

2019年04月04日
  • 離婚
  • 離婚
  • 財産分与
  • 会社名義
離婚の財産分与で会社名義の資産も請求できる? 弁護士が詳しく解説

配偶者が事業を営んでおり多くの資産が会社名義になっている場合は、それが財産分与の対象となるのかが非常に気になることでしょう。堺市では自営業者と家族従業者の減少傾向が続いていますが、農業や漁業分野、サービス業など一部の業種では事業者と家族従業者の割合が高いことがわかっています。

そこで、今回はベリーベスト法律事務所の弁護士が、財産分与の対象となる資産や対象にならない資産、もめた場合の対処法について詳しく解説します。

1、会社名義の資産を財産分与請求できる?

そもそも離婚の際に行われる財産分与は、「夫婦の共有財産」を分け合うことをいいます。そのため、配偶者の会社が「法人化」しているのか「個人事業主」なのかによって、取り扱いが異なります。

それぞれのケースについて解説しましょう。

  1. (1)会社を法人設立している場合

    配偶者が経営している会社が「株式会社○○」や「有限会社○○」のように、法人化された会社の場合は、原則として、会社名義の資産は財産分与の対象とならないとされています。法人と個人は法律的には「別人格」とみなされるためです。

    ただし、節税の観点などで、家や車などほとんどの資産を会社名義にしており、日常的に会社名義の口座から生活資金を引き出していた場合や、夫婦で会社を運営している場合など、「実質的に夫婦の財産として使っていた場合」には、財産分与の対象となる可能性もあります。

    法人化している場合の会社名義の資産が財産分与の対象になるかどうかはケース・バイ・ケースで個別に判断する必要があります。相手側に資産を隠される前に早く弁護士に相談しましょう。

    会社を経営している場合は、経営者側がすでに弁護士に相談しているケースが多いものです。弁護士をつけず交渉することは非常に不利な状況になる可能性があります。

  2. (2)個人事業主の場合

    配偶者が法人化していない個人事業主として事業を営んでいる場合は、事業のための口座や資産も原則として財産分与の対象となります。

    妻が専業主婦であっても、家事や育児などで配偶者をサポートすることで事業用財産の形成に貢献しているからです。したがって、分割割合は2分の1になるケースが多いでしょう。

    ただし、事業のための借金も、ご主人が個人的な趣味などのために借りたものでなければ、財産分与の対象となります。しっかり調べておく必要があるでしょう。

2、財産分与の対象となる資産と対象にならない資産とは

離婚の際の財産分与で大切なことは、財産分与の対象となる資産を少しでも早く把握することです。

離婚に至るまでに婚姻関係は破綻しているので、資産を隠そうとする方も少なくありません。ここでは、財産分与の対象となる資産とならない資産について解説します。まずはご自身の資産はもちろん、配偶者の資産についてもリストアップしておきましょう。

  1. (1)財産分与の対象となる資産「共有財産」

    財産分与の対象となる財産のことを「共有財産」と呼びます。

    共有財産とは、夫婦が婚姻期間中に共同で蓄積した現金、預貯金、不動産、動産、車、借金などをいいます。これ以外にも退職金や株式等の有価証券、生命保険の解約返戻金や子どものために加入していた学資保険なども財産分与の対象となる共有財産にあたります。
    退職金や生命保険の解約返戻金については、その額について、退職しないとわからない、解約しないとわからないと思われるかもしれません。この点、離婚に伴う財産分与の計算に当たっては、離婚時や別居時を基準に、その時点で退職した場合、または解約した場合に支払われる退職金の額、または生命保険解約返戻金の額を共有財産の価格として評価されます。

    共有財産では、たとえ名義がどちらのものであっても、個人名義であれば財産分与の対象となる点に注意が必要です。生活費の借金や住宅ローンも原則として財産分与の対象となります。ただし、借金や住宅ローンは借金額が折半になることはありません。借金や住宅ローンの場合、債権者との関係も考慮しなければならないからです。

  2. (2)財産分与の対象とならない資産「特有財産」

    財産分与の対象とならない資産を「特有財産」と呼びます。

    特有財産とは、夫婦が婚姻期間中に共同で蓄積した財産とはみなされない財産をいいます。たとえば、結婚前にすでに保有していた資産(預金や株式など)や、結婚中に取得した資産でも夫婦で協力して得た財産とはみなされないもの(親からの特別の贈与や遺産等)は特有財産です。特有財産は財産分与の対象となりません。

    では、夫婦の共同生活のためでなく、個人の趣味嗜好のために、共有財産を浪費したり、借金した場合はどうなるのでしょうか。この場合は、夫婦共同生活のために蓄積した財産を一方的に費消したことになるので、浪費分を持戻して財産分与額を計算することになります。

    たとえば、100万円の共有財産があって、夫が30万円を競馬で浪費したとします。この場合、70万円を夫と妻で各35万円ずつ財産分与するのでは妻に不合理な結果となります。あくまでも、共有財産は100万円あったものとし、夫と妻で各50万円ずつ財産分与することとなります。そして、夫はすでに30万円を競馬で浪費していますので、70万円からの夫の取り分は20万円ということになります。

    見落としがちなのが「別居後に築いた資産」は財産分与の対象とならないということです。別居している期間は、夫婦で協力して資産を築いたとはいえないので、別居後に得た給料は財産分与の対象とならず、給料を得た者の固有の財産となります。

3、財産分与はいつどうやって決めればよいの?

相手方に対して財産の分与を請求する権利は、離婚から2年で消滅します(除斥期間)。ですので、相手方に対して財産分与を請求するには必ず離婚から2年以内にする必要があります。離婚を急いでいないのであれば、財産分与を請求する側としては離婚の交渉と共に財産分与の交渉をすることが非常に多いです。他方で、財産分与の請求を受ける側(相手方に対して財産を渡す側)であれば、離婚を成立させてから財産分与の交渉をしたいという気持ちになるでしょう。

財産分与を決める手順は、「共有財産の把握」、「財産分与割合の決定」、「財産分与方法の決定」の順になります。財産分与の割合は、たとえ妻が専業主婦でも2分の1ずつになるのが一般的です。

問題となるのは、どの資産が共有財産になるのかという点と、分与方法です。たとえば、土地と家を財産分与する場合、夫婦それぞれ持ち分2分の1ずつ不動産登記することはできても、実際に土地建物を分割することはできません。したがって、家や土地を取得したほうから、相手方に現金を支払うなどを行い、財産分与する必要があります。

4、財産分与でもめた場合の決着方法とは

  1. (1)離婚が成立していない場合

    財産分与は離婚の際に話し合うべき重要な事項のひとつです。

    会社財産の分与が問題の場合は、当事者同士の話し合いでは解決できないケースが多いです。すでに経営者側は弁護士を依頼していることが多いため、弁護士同士で交渉をしたほうがよいでしょう。

    弁護士同士で交渉しても、決着がつかない場合は「調停」を申し立てます。離婚が成立していない場合は離婚調停で調停員を通じてそれぞれが主張します。離婚調停が成立しなければ、訴訟に移行します。

  2. (2)離婚が成立している場合

    すでに離婚が成立している場合は「財産分与請求調停」を行います。離婚から2年以内に家庭裁判所に申し立てることで、誰でも調停を行うことができます。

    しかし、相手方が出席しなかったり、あなたの主張が認められづらかったりするケースは少なくありません。調停がまとまらなかった場合は、自動的に審判手続が開始されて、財産分与の割合などを決定します。

5、財産分与を弁護士に相談するメリットやベストなタイミング

配偶者が会社経営者であれば離婚に伴う財産分与は弁護士に相談することをおすすめします。個人で判断してしまうと対象財産を見落としてしまう可能性があります。

また、対象となる財産が大きいケースは少なくありません。また、繰り返しになりますが、事業を営んでいる側は、すでに弁護士を依頼している可能性が高いものです。受け取る権利があるものをしっかり受け取るためにも、きちんと交渉する必要があるでしょう。

法律や財産分与などに関する知識が求められます。ご自身で交渉すると交渉力と経験の差により不利益が生じる可能性を考えられます。財産分与を進める際は、離婚問題の豊富な実績を持つ弁護士に交渉を一任したほうがよいでしょう。

弁護士に相談するベストなタイミングは、相手と離婚について話し合う前、離婚を思い立ったときです。相手が財産を隠匿する前に、早く弁護士に依頼して必要な対策をアドバイスしてもらいましょう。

6、まとめ

法人化した会社の資産は原則として、財産分与の対象にはなりません。しかし、場合によっては財産分与の対象となることもあります。個別の事情に応じた判断が求められます。もし、離婚を考えている際、当事者のどちらかが会社経営者である場合は、早めに弁護士に相談することをおすすめします。

ベリーベスト法律事務所 堺オフィスでは離婚に伴う財産分与問題に対応した経験が豊富な弁護士が、親身になって最適な対応方法をアドバイスします。まずはご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています